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いいプロマネになるために、己に正直であれ

ITmedia エンタープライズ 7月15日(金)9時47分配信

 前回まで、数回にわたって「決定した内容をどのように守らせるか」という切り口で、納得感を生み出す手法についてご紹介しました。「決める」というのは、プロマネの大切な仕事です。決定事項が間違っているかどうかは、やってみないと分かりません。走ってみて間違っていたら、軌道修正すればいい話。一番良くないのは「決められない」ことなのです。

【画像:キャリアの作り方を示したトランジション・サイクル】

・関連記事→「決められないプロマネ」になってはいけない

 対人スキルに優れたプロマネが使いこなす7つのスキルを紹介する本連載。今回から最後の「自身の考え方や行動を支える土台を作るスキル」に移ります。

 目の前のプロジェクトやチームだけではなく、自分が今後どう成長していきたいのか、どのようにキャリアパスを描いていきたいのかなど「自分の軸」を考えること――これは一見プロジェクトの成功と関係ないように見えますが、実はとても重要なポイント。自分を大切にしながらビジョンを立てられるプロマネにこそ、人はついてくるものだからです。

●そもそも「キャリア」ってなに?

 自分の軸を考えることは、自身の成長のみならず、今後の働く人生を設計し「キャリアの成功」を実現するために役立ちます。

 皆さんは「キャリア」と聞いたときに何を思い浮かべるでしょうか。簡潔に説明すると「職務経歴であり、仕事に対する自己イメージ」です(『キャリアデザイン入門』より引用、著:大久保幸夫)。そう、この言葉には2つの側面があるのです。

 1つは客観的な視点で、いつ、何をやってきたかという「職務経歴書」的な側面。そして、もう1つは主観的な視点で、その時々でどのように感じ、心が揺らぎ、悩んだかといった「自分は何者かを考える」側面です。ここでいうキャリアの“成功”とは、「自己イメージと照らし合わせた基準で、フィット感や楽しみがあり、高い成果を出せる職業人生」を実現している状態のことを指します。

 しかし、日々忙しく活動しているプロマネは、自分を振り返り、これからを考える時間が取れないこともあるでしょう。特に現代はキャリアを成功させるためのデザインを各自が行う必要があります。会社や社会に過度な期待はできません。自分自身の大切なキャリアだからこそ、定期的に振り返る時間を確保することが重要です。

 振り返りを行うことで、自分の価値観や大切にしたい考えなど「自己概念(Selfconcept)」が明確になります。つまり、自分が本当に望んでいる仕事、充実感を得られる仕事が何かを発見しやすくなるのです。

●なぜ「振り返り」が必要なのか

 本当は〇〇がしたいのに、日々行うのは全く違う仕事……といった乖離があると疲弊してしまいます。しかし、その自らの「本心(欲求)」が分からない状態で、自分探しの状態に陥っている人も案外多いものです。

 本心が分からない理由はさまざまですが、世間的に良しとされている世代的なイメージ(この年齢ならこんな職種で、年収がいくらで、などのレッテル的要素)などに影響を受け、やりたいことが見えなくなるケースも少なくありません。大切なのは外から「勝ち組」と思われるかどうかよりも、「自己一致を感じられるかどうか」。これが働く上での喜びに大きく関わります。

 「本心」が充実し「自己一致」を感じられるとき、自分のキャリアは成功したと実感できるもの。そのためにも、自分が「働く上で何を大切にしたいか」を明確することが必要です。

 これを明確にすると、短絡的な判断や不安感に惑わされずに済むというメリットがあります。仮に今、働くことに迷いがあっても、「自己概念」に従って考えることで不安を解消できます。どうすればいいか、今何をすべきか、場合によっては、つらい現状を受け入れて様子を見るか――自分で現状を選んでいる感覚は「自分の人生を生きている」という充実感につながるのです。

●人はいつキャリアを振り返るべき?

 とはいえ、日々の仕事に集中する必要もあるため、常日頃からずっとキャリアを続けるのは現実的ではありません。どっちつかずになっては、仕事の上でもキャリアを考える上でも、よい結果にはなりません。

 神戸大学大学院の金井壽宏教授が提唱するキャリア理論では、「自分のキャリアについて大きな方向付けさえできていれば、人生の節目(区切り)ごとに次のステップをしっかりとデザインするだけでいい」としています。

 これは異動、転職、結婚、介護、子育て、昇進、大きな悩みや喜びといった節目に、キャリアについてしっかりと考え、その間に起こった偶然の出会いや出来事をチャンスとして柔軟に受け止めて、やりぬくというイメージです。

 この理論の中では、状況を柔軟に受け止めるために、あえて「ドリフト(漂流)」が効果的なこともあると伝えています。現実的な節目のほか、会社が用意している年次研修なども、日常業務と離れて自分のことをしっかり考えられる貴重な機会と言えます。大いに活用してください。

 もう1つ、自身の年齢も振り返るタイミングの参考になります。社会人になって10年~15年はさまざまな出来事をチャンスとして受け止めてドリフトする、いわゆる「筏下り型」のキャリアの築き方が一般的です。しかし15年を過ぎたころから、「山登り型」にシフトしていく必要があります。

 今までの経験値などから「自己概念」を明確にし、自ら決めた山(キャリア)を登り始める働き方へ変化するのです。その決断を節目で行っていきます。もしもあなたが、プロマネになりたて……というのであれば(30歳前後だと仮定すると)、キャリアを考えるのは、まさに“今”なのかもしれません。その具体的な手段については、次回に詳しくご紹介します。

最終更新:7月15日(金)9時47分

ITmedia エンタープライズ