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“娘役”一手に担う杉咲花、優等生から感情爆発の反抗期まで

オリコン 7月19日(火)8時40分配信

 女優・杉咲花――。その名に聞き覚えがなくとも「回鍋肉をおいしそうに食べる少女」と聞けば「あのCMの子ね!」と膝を打つ人も多いだろう。ドラマ『夜行観覧車』(TBS系)では学校でいじめを受け、家庭内で母親に暴力をふるう少女を演じその演技力が話題に。また『妖怪人間ベム』(日本テレビ系)、『家族のうた』(フジテレビ系)での娘役のほか、現在放送中の朝ドラ『とと姉ちゃん』(NHK総合)での愛らしい三女役など軒並み好評だ。だがそんな杉咲も今年19歳を迎える。オトナの階段を上る彼女は、今後どうやって、自身の“娘役”のイメージを払拭していくのだろうか?

【写真】モノトーンな衣装で“オトナっぽい”杉咲花

◆“回鍋肉好き美少女”が定着、ドラマでは暴力少女役で圧倒

 山口智充の娘役で美味しそうに中華料理を食べる姿から、すっかり“クックドゥのCMの女の子”としてのイメージが定着している杉咲花。そんな彼女が、“回鍋肉”だけではない高い演技力を世に知らしめたのが2013年放送のドラマ『夜行観覧車』だ。

 同ドラマで杉咲が演じたのは、鈴木京香演じるヒロイン・遠藤真弓の娘・彩花。遠藤一家が高級住宅地・ひばりヶ丘に引っ越してきたことをきっかけにさまざまな事件が起こり、家庭が崩壊していくさまが描かれた。母親に強く反抗し、暴力をふるう彩花を演じた杉咲には、視聴者からは「演技うますぎ!」「かわいいのに反抗期的な暴力が半端なくてすごい」などの声がSNSに寄せられた。

 また『なぞの転校生』(テレビ東京系)では異世界から来た姫を、『執着~捜査一課・澤村慶司2』(フジテレビ系)では、声が出せなくなった少女など、演じる役柄もさまざま。「日経トレンディ」主催“ネクストブレイク2015年の顔”にも選出されたほか、同年放送の『しゃべり007』(日本テレビ系)ではバラエティ番組に初出演。「学校ではすれ違うと“あっ回鍋肉だ”と言われます」と明かすなど、彼女の見せた素の一面にネットでは「この子おもしれーわ(笑)」などの大量の声がSNSにアップされた。

◆純真無垢 “娘役”に隠された無条件の好感度フィルター

 「優等生ばかりを演じるわけではないのに、好感度が抜群に高いのが杉咲花の特長。『夜行~』プロデューサーの新井順子氏は“感情が爆発する、その切り替えが素晴らしい”と証言しています。つまり、可愛らしい顔立ちと子役のイメージのギャップから感じられる迫力が魅力なのですが、好感度の裏には“娘役”を観る視聴者のフィルターも大きく影響しています。純真・無垢・思春期などというイメージを抱えたまま観ることで、多少視聴者が寛大になっている部分もあるでしょう。“子役”“少女”として愛されている分、今後が大変かもしれません」(某芸能ライター)

 杉咲は2015年の映画『トイレのピエタ』で、RADWIMPSの野田洋次郎が演じる病気の主人公に恋をする少女を演じた。これは恋愛映画だが、杉咲演じるヒロイン・真衣は主人公に全身でぶつかっていく、寂しさの中にも思春期ならではの憤りを抱えた少女。そういった意味で真衣は『夜行~』の彩花の延長線上にあり、“娘役”ではないものの“女性”ではなかった。今年公開された映画『スキャナー 記憶のカケラを読む男』でも、主演の野村萬斎や宮迫博之にヒケを取らない、驚くべき高い演技力を見せたがこの点では同様だ。

◆良質な“娘役”だからこそ険しい“大人の杉咲花”への道

 だが最近、とある変化が見られた。今年6月に放送された二夜連続ドラマ『モンタージュ 三億円事件奇譚』(フジテレビ系)で、塾の講師に恋をする学生・夏美を演じたのだが、この夏美は、男性を魅了する小悪魔的な面を持っていたのである。

 「そもそも杉咲は勘の鋭い没入系の女優。彼女自身“段取りだけではない芝居をしたい”と語ったことがありましたが、例えば『夜行~』での好演は、共演の鈴木京香や夏木マリなどベテラン勢と息を合わせることで引き出された上手さなのかもしれません。数多くの現場を経験することで、彼女は新たな自身の魅力を発掘しているはず。そこから“娘役”のイメージとは対極にある“女を武器にした小悪魔役”などへとシフトチェンジしていくことで、“少女”からの華麗なる脱却があるかもしれません」(同)

 今“娘役”を一手に担う杉咲が、この先避けては通れないのが“娘役”からの脱却だ。“純真無垢”なイメージとは対極にある役を演じることが女優としての新たな道が切り開く大きなカギとなるだろう。その際に不安なのは、杉咲本人のイメージが崩れてしまうこと。これまでの人気子役たちがぶつかった壁と同様、周囲から求められるものやイメージに足を引っ張られてしまうことだ。

 だが杉咲も来年には20歳を迎える。室町時代に“能”を大成した世阿弥は、今も役者論として高く評価されている著書『風姿花伝』の中で「新人の珍しさによる人気を真の人気と思い込むうちは“真実の花“にほど遠い。今が人気の“時分の花”が咲き誇っているうちに“初心”を忘れず励んでいくことで“真実の花”になり得る」というようなことを記した。初心を忘れず、もがき、励んでいった先に“大人の杉咲花”という“真実の花”が咲き誇る可能性は高い。杉咲がまことの“花”を咲かせられるよう、彼女の成長を温かく見守りたい。

(文/衣輪晋一)

最終更新:7月27日(水)9時54分

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