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石巻市「1億2600万円」誤って送金…受取人が勝手に引き出したら犯罪?

弁護士ドットコム 7月15日(金)10時15分配信

宮城県石巻市が6月下旬、設計委託費や消耗品購入費など計約1億2600万円を、131の企業や個人に、誤って二重に送金していた問題で、その大部分が返金されたことがわかった。

石巻市の会計課の職員が6月14日、金融機関の振り込みサービスを担う関連会社に、口座振り込みのデータを送信した。その際、プリンターから自動的に出てくるはずの送信結果が印刷されなかった。職員は、データが送信されていないと勘違いし、データを再送信した。

その結果、金融機関から企業・個人に二重に現金が振り込まれた。6月16日に発覚し、市は電話や訪問で返金を求めていた。石巻市の会計課によると、7月11日現在、二重送金された約1億2600万円のうち、1億2530万円が返金された。返金を拒まれたケースはなかったという。

一般的に、誤振込されたお金を、法的にはどう考えればいいのか。今回のケースでは無事に返金されているが、もし、「私の口座に入っているお金だから私のモノだ」と主張されたら、返してもらえないのだろうか。桑原義浩弁護士に聞いた。

●「誤った振り込みであることを知っていながら、引き出すことはできない」

そもそも誤って振り込まれたお金でも、受取人は引き出すことができるのか。

「誤って普通預金口座に振り込まれた場合であっても、受取人(口座の名義人のことです)と銀行との間には、振込金額に相当する普通預金契約が成立するというのが判例の考え方です(最高裁平成8年4月26日判決など)。

銀行は、預金の払い戻しのルールなどを定めた『普通預金規定』を定めていますが、この規定に預金契約が成立するかどうかを、原因関係の有無(どういった理由で振り込まれたのか)で決めるというような定めをおいていないことなどが理由です。

そのため、原則として、銀行は『預金者がお金を引き出しに来たら応じる』という対応をとることになります。

ただし、『誤った振り込みをした』と振り込み人が連絡してきたら、銀行は、受取人に確認して、組み戻しとしてお金を戻す対応をとってくれます」

●誤って振り込まれたことを知ったら、銀行に告知する義務がある

では、振り込み人が誤振込に気がつく前に、振り込まれた口座の持ち主がお金を引き出してしまった場合には、どうすればいいのか。

「誤った振り込みでれば、受取人には振り込まれたお金を受け取る法律上の原因(権原)がありません。

そのため、誤って振り込んだ者は受取人に対して、振り込んだお金を不当利得として返還するように請求することができます。『受け取る権原がないのだから、当然返す』ということですね。

誤って振り込まれたのを知りながら、受取人が払い戻しを請求することについては、詐欺罪が成立するという判例もあります(最高裁平成15年3月12日判決)。

誤った振り込みであることを知っていれば、信義則上、銀行に告知する義務があるからです。

今回は二重に振り込まれており、誤って振り込まれているのは明らかですから、これが分かっていながら引き出して使ってしまうようなことはやめた方がいいですね」

桑原弁護士はこのように述べていた。



【取材協力弁護士】
桑原 義浩(くわはら・よしひろ)弁護士
日本弁護士連合会消費者問題対策委員会副委員長(金融サービス部会、違法収益吐き出し部会)、九州弁護士連合会消費者問題連絡協議会副委員長、福岡県弁護士会消費者委員会、民事手続委員会等。全国証券問題研究会、全国先物取引被害研究会などに多数参加している。
事務所名:弁護士法人しらぬひ柳川事務所
事務所URL:http://www.shiranuhi-law.com/

弁護士ドットコムニュース編集部

最終更新:7月15日(金)10時15分

弁護士ドットコム

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