ここから本文です

南シナ海判決、中国の次の一手は?

ニュースソクラ 7月15日(金)12時0分配信

硬軟交えて包囲網崩し 日本もターゲット

 国連海洋法条約に基づく仲裁裁判所が、南シナ海を巡る中国の主張をことごとく退ける判決を出したことを受け、中国政府は政府、メディアが一体となって大反論を行っている。

 危機感の現れとみられるが、予想以上に「中国完敗」の内容だっただけに、次に中国が出してくる手は強硬一辺倒だけではなさそうだ。経済力を使って、南シナ海に関係する東南アジア諸国連合(ASEAN)各国の分断を図るなど、硬軟織り交ぜ、中国包囲網を崩しにかかるだろう。

 13日付中国各紙は、仲裁裁判判決について1面トップで報道した。当然反発する内容だ。
 「判決は1枚のゴミくず」「仲裁裁判所は政治操作された」といった一般紙とは思えない激しい内容だった。リベラルとされるタブロイド紙の新京報も「南シナ海は昔から中国領」と政府の言い分をそのまま伝えた。
 
 国営中央テレビは12日夜、習近平国家主席と李克強首相の「受け入れない」との発言を相次いで流した。
 対外宣伝を担う国務院新聞弁公室は13日、中国は歴史的にみて、南シナ海に主権と領土を保有すると強調する白書を発表し、外国メディアに配る周到さだった。

 中国は、この強硬な宣伝戦をしばらく続けるだろうが、「次ぎの1手」は意外にソフトなものになるかもしれない。
 というのは、今回の判決が南シナ海での中国の主権を全て否定するものであり、「一方的に自己主張しているだけでは、国際社会の理解は得られない」(中国内政に詳しい中国人学者)との判断があるためだ。

 批判をかわすのに最も有効なのは、裁判を起こしたフィリピンに接近することだ。同国の新大統領ドゥテルテ氏は、この問題で中国との対話を求めている。中国政府は、対話の条件として「判決の棚上げ」という無理な条件を出しているが、フィリピン側も全面的な対立は望んでおらず、意外と早く話し合いに応じるかもしれない。

 さらに中国は、自国の主張を理解する国を増やす努力をするだろう。ASEAN各国は、判決を受けて対応を協議する方針だが、姿勢はバラバラなのが実状だ。

 経済的つながりの深いカンボジア、ラオスは完全な中国寄り。タイやインドネシア、シンガポールなどは姿勢を時々に変えている。経済支援をからめ、中国側に付くよう各国に働きかけを強めるとみられる。

 日本もターゲットになりそうだ。安倍政権は国際会議の場で、中国に対して一方的な海洋進出を自制するよう繰り返し求めている。
 中国政府は、「日本は、米国の意向を汲んで中国批判を行っている」(前出の中国人学者)と見ており、日本に圧力をかけることで、最も中国に厳しい姿勢で臨んでいる米国を牽制できる、と判断しているようだ。

 すでに中国の一部メディアは、安倍晋三首相に近い国際海洋裁判所の柳井俊二所長(当時)が、今回の判決を出した仲裁人(判事に相当)を選んでいることから、「仲裁裁判所は、日本の右翼が独断で組織したものだ」と、日本に批判の矛先を向けた。
 判決にコメントを出した岸田文雄外相について中国外務省は、「問題に介入しないよう望む」とわざわざ反論コメントを発表している。

 日本の外務省幹部は12日、「おかしなことはおかしいと何回でもいわなくてはならないが、中国側は、日中首脳会談に応じないなど対抗措置を取ってくる可能性もある」とし、日中関係の冷え込みを予想している。

■五味洋治 ジャーナリスト
1958年7月26日生まれ。長野県茅野市出身。実家は、標高700メートルの場所にある。現在は埼玉県さいたま市在住。早大卒業後、新聞社から韓国と中国に派遣され、万年情報不足の北朝鮮情勢の取材にのめりこんだ。2012年には、北朝鮮の故金正日総書記の長男正男氏とのインタビューやメールをまとめて本にしたが、現在は連絡が途絶えている。最近は、中国、台湾、香港と関心を広げ、現地にたびたび足を運んでいる。

最終更新:7月15日(金)12時0分

ニュースソクラ

TEDカンファレンスのプレゼンテーション動画

斬首動画が何百万回も再生されてしまう理由
昔は街の広場で、現代はYouTubeで。歴史を通じ、公開処刑には必ず人だかりがつきものでした。人が処刑というものを、恐ろしく不快に感じながらも、つい気になって見てしまうのはなぜか。フランシス・ラーソンが人間と公開処刑の歴史、中でも斬首刑に焦点を当てて解説したこのトークは、気分の良い内容ばかりではありませんが、同時に興味をそそること間違いないでしょう。