ここから本文です

災害公営住宅に「交換と自給」のコミュニティモデルを

東北復興新聞 7月15日(金)14時27分配信

トヨタ財団では、助成プログラムを通じて復興公営住宅におけるコミュニティづくりを支援してきました。3年間にわたる支援から浮かびあがった「重要な点」として、同財団のプログラムオフィサーである本多史朗氏は復興関係者に向けてあるメモを共有しました。本稿はそのメモを転載したものとなります。

契約講-被災地の根っこにある小宇宙

被災地の行政官の方たちと話すと、実に不思議な話を伺います。行政官の方に、復興公営住宅が建築された地域の実情についてお尋ねしても、余りご存じない。そして、「うちの自治体は、地元の行政区のお力を借りないと業務が回りません。ですので、行政区に任せています」といったお答えが返ってきます。

この行政区というのは何かと、お尋ねします。すると、「地縁組織」だという説明は帰ってきます。が、それ以上のことはわかりません。ただはっきりしていたのは、自治体の行政官というのは、行政区の中までには立ち入らないことです。住民の中に入らない行政官というのは、筆者からすると、何とも言えない不思議な感覚です。それは、被災地にくるたびに強まるばかりです。

数か月前の岩手県沿岸部への訪問の際に、この謎が解けるきっかけに出会います。あるNPOのスタッフの方-数世代にわたってその土地に住む家柄の方です-の案内を受けて、リアス式海岸の入り江沿いにある小規模な復興公営住宅を巡ります。すると、入り江の集落ごとに小さな神社があるのです。要は鎮守の氏神です。地形的に、高い崖や丘の上に置かれており、集落全体を見回すことができる。なるほど氏神というものが、地元のまとまりの中心にあることがよくわかりました。

これに続いて、宮城県の沿岸部を訪問すると、土地の古老から、この氏神を核として、その周りに講、講中、契約会、契約講などと呼ばれる集団があることを教えていただきます。以下では、契約講という言い方に統一します。神社の氏子の集まりです。それは人口の流動性が高い大都市圏で長い時間を過ごした筆者から見ると驚くべき性格を持つ集団です。大まかに整理すると、次のような性格をもちます。

●氏神に対する信仰とそれに基づく祭祀・暦を共有する集団です。しかも、この集団の母集団たる家族は、数世代に亘って固定されています。他所から来たものが、参入することはほとんどありません
●共有地である山林のような経済的な資産を保有・管理しています。
●神前で奉納する神事を執り行う芸能集団です。これらの芸能に用いる道具、装束、神輿は、氏神を祀る神社の収蔵庫、宝物庫に収められています

数世代に亘る濃密な人間関係を持つ、強力な宗教―経済-芸能集団です。極めて独立性が高い小宇宙と言えます。なるほど、これは地元自治体の行政官であっても、容易にはその内部に入ることができません。第一、これらの契約講が位置するのは、沿岸部の役所が位置する自治体の中枢部から距離的にも離れた外縁部です。更に地形的にも、リアス式地形の入り江にあるため、アクセスが容易ではありません。一車線の曲がりくねった山道を走り、ようやくたどり着くことができる場所もあります 。役所から見れば完全にアウェーです。場合によっては、言葉の語彙やアクセントも異なります。彼らが「地元の行政区のお力を借りないと業務が回りません」と話し、その中に入り込もうとしないのも、良くわかりました。

この「契約講」的なものが、沿岸部被災地の根っこにある、暮らしの基本的な単位です。筆者が首をひねった「行政区」という枠組みも、実態としては、しばしばこの契約講であることにも気が付きます。自治体側から見ると、行政機構の末端に位置する行政区ですが、契約講の側からすると、末端ではありません。契約講そのものが宇宙です。

1/3ページ

最終更新:7月15日(金)14時34分

東北復興新聞

【生中継】小池百合子都知事の会見