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ロボットメーカーはIoTと人工知能をどう活用するの?

ニュースイッチ 7月15日(金)14時45分配信

ファナック、三菱電機、エプソンのキーマンに聞く

●ファナック・稲葉清典専務
 ファナックがロボット事業を着々と拡大させている。事業別売上高が前期比20・3%増の1882億円を記録した2016年3月期に続き、足元の受注も好調。国内、欧州の競合とシェアを争いつつ、どこまで勢力を広げるかが注目されている。また、次世代に向けては、IoT(モノのインターネット)、人工知能(AI)といった技術との融合も重要なテーマだ。稲葉清典専務に戦略を聞いた。

 ―16年3月期は絶好調でした。
 「今期も良い状態が続いている。売上比率が高いのは米国向けだが、それだけでなく国内、欧州、アジアとあらゆる地域の販売が好調だ。10%台後半から20%台前半の成長が期待できる」

 ―中国向けの減速はありませんか。
 「確かに多少懸念していたが、実際は自動化の需要は減速しなかった。受注が多すぎて出荷が大変なくらいだ。自動車関連の受注はおおむね計画通りに推移し、電気・電子関連で急に注文が増える時もある。現地の電子機器製造受託サービス(EMS)工場などが、本格的な自動化のステージに入りつつあるようだ」

 ―為替変動の逆風が吹いています。
 「当社は円建てで取引しており、円高に振れれば海外子会社が若干売りにくくなるのは事実。バランスを考えながら対応を決めるが、大きく売り方を変えることはない。ロボットの需要が拡大する流れは変わらないので、為替で一喜一憂すべきではないと思う」

 ―IoT、AIを次世代戦略の核に据える理由は。
 「製造業のグローバル化が加速し、複数の生産国で品質を均一化することが求められている。一方で、作業者の技能や現地で調達できるものは地域によって異なるため、工場ごとのカスタマイズも必要だ。通常、片方を追求すればもう片方が犠牲になるが、IoTなどでこうしたギャップを吸収できる。当社のIoT基盤『フィールド・システム』は、そのための仕組みだ」

【記者の目・企業間連携の動きが見どころ】
 コンピューター数値制御(CNC)装置など他事業が不調なだけに、ロボットの好調ぶりが際立つ。会社の収益を支える稼ぎ頭として、首脳陣がかける期待は大きい。地域別では強力なライバルが存在する欧州でシェアを拡大させ、勢いに乗りたいところだ。4月に発表したフィールド・システムは今期中の提供開始を目標に準備が進む。他社技術を積極活用する方針を打ち出しているため、企業間連携の動きが見どころとなる。

●三菱電機・小平紀生FAシステム事業本部機器事業部主席技監

 工場自動化(FA)機器の一種として、多関節ロボットを手がける三菱電機のFAシステム事業。国内外の自動化需要に押され、順調にロボットの販売数を増やしている。昨今はロボットと周辺機器などを組み合わせた応用技術の強化がテーマ。また、将来に向けては人工知能(AI)技術などの活用も視野に入れる。小平紀生FAシステム事業本部機器事業部主席技監に展望を聞いた。


 ―ロボットの販売は着実に伸びています。
 「2015年度は過去最高の売り上げを記録した。16年度も前年度比で25%以上の成長を目標にしている。特に中国、欧州向けが引き続き好調だ。為替変動、英国の欧州連合(EU)離脱による影響など不透明な要素はあるが、実需ベースでは今後も良い状態が続くだろう」

 ―国内の市場動向はどうですか。
 「日本でも少しずつ伸びている。高度な自動化に挑戦する企業が増えていることは、我々にとって追い風だ。例えば、ワイヤハーネスの組み立て作業。長年ロボットには困難な作業とされてきたが、工程全体を見直すことで自動化できる可能性が出てきた。ユーザーやシステム構築(SI)企業とうまく連携して実現していきたい」

 ―当面の課題を挙げてください。
 「自動化を目指す企業は国内外で増え続けている。ニーズが多様化する中、顧客の悩みに対し、さまざまな解答を用意できるようになるべきだ。その中から最適な解決策を選び出す形が望ましい。昔のように“ロボットを売れば良い”という姿勢ではいけない。このため技術部門の中でも応用技術の担当者を増やし、システムとして提案する機能を強化している」

 ―今後、産業用ロボットはどう進化すると見ていますか。
 「AIなどによる学習機能を、チョコ停(小さなトラブル)の防止や自動復旧に活用できるかもしれない。また、ロボットの個体差を吸収するための調整作業も、学習機能で簡略化できる可能性がある」

【記者の目・蓄積したノウハウ社外へ展開】
 元々、三菱電機は高度なロボット応用技術を追求してきた。電磁開閉器工場にロボット組み立てセルを構築するなど、社内での実践も進む。蓄積したノウハウを社外にどれだけ展開できるかが見どころだ。戦略製品の一つが周辺機器などを一括提供する「アプリケーションパッケージ」。パッケージ化によりSI業務の手間が省けるという。どれだけ有用なパッケージを用意しユーザーやSI企業を支援できるかがポイントだ。

●セイコーエプソン・福島米春常務

 セイコーエプソンがロボット関連のラインアップ拡充を急いでいる。5月に新構造の垂直多関節ロボット「Nシリーズ」、6月にロボット用力覚センサーと相次いで新製品を投入。また、2017年度には次世代型の双腕ロボットも発売する。他にない製品で攻勢をかけ、10年以内にロボット事業の売上高を現状比6倍超の1000億円に引き上げたい考え。福島米春常務に現状と戦略を聞いた。


 ―新製品の力覚センサーは、水晶素子入りの他にない方式です。
 「一般的な力覚センサーが感知できない微妙な力にも反応する。壊れやすい製品の組み立てなど、これまでロボットが苦手だった作業の自動化が可能になる。また、スペース生産性が売りのNシリーズと組み合わせることで、製品検査用などでも魅力的なシステムが生まれるだろうと期待している」

 ―ラインアップの拡充が目立ちます。
 「今春、可搬質量20キログラムの水平多関節(スカラ)ロボットを発売した。来年度には双腕ロボットも出す。世界中でロボットを売っているが、地域ごとに自動化のレベルも異なる。今後も各地のレベル感に合わせ、戦略的に新製品を出していく」

 ―販売状況はどうですか。
 「今期、ロボット関連の売上高は昨期の実績値から16%近く伸びる。スマートフォンメーカーによる新機種投入に伴う受注も予定通りだ。(スマホ向けが大幅に伸びた)一昨年ほどではないが、ボリュームは大きい。昨年あたりから中国で家電業界向けの販売が伸びるなど、ユーザーの裾野も広がっている」

 ―IoT(モノのインターネット)技術をどうビジネスに取り込みますか。
 「クラウドの分野には専門の企業が存在する。我々はエッジ(現場)の領域を進化させることに力を注ぎたい。クラウドにデータを上げて価値を生み出すにしても、利用できる“きれいなデータ”がエッジから出ないと話にならない。当社のセンサー技術などが強みになると思う」

【記者の目・来年度投入、多機能なロボに注目】
 17年度には戦略機の双腕ロボットが登場する。ハンドやビジョンセンサーなども搭載した多機能なロボットになるもよう。現在、エプソングループ内の工場などでテストを進めており、今後どのような用途が生まれるかが注目される。今春にロボット用の故障診断システムを提供開始するなど、IoT化の流れにも着実に対応している。今後はロボット本体だけでなく、強みとするセンサー類の機種拡充も進みそうだ。
(聞き手=藤崎竜介)

最終更新:7月15日(金)14時45分

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