ここから本文です

フランス代表へ「ありがとう」、国民がこれほどまでに代表を愛したいくつかの理由

SOCCER KING 7月15日(金)18時35分配信

 月曜日の朝、フランス人の多くが、改めて悲しい現実をつきつけられた。前夜の出来事は、決して悪夢ではなかった。テレビでは、フランス代表の決勝敗退が、繰り返し語られていた。全国のあらゆる新聞は、一面に、悲鳴のような大見出しをつけた。

「打ちのめされた者たち」(全国スポーツ日刊紙『レキップ』)
「あまりに残酷な」(南部地方紙『デペッシュ・デュ・ミディ紙)
「夢破れて」(北部地方紙『ヴォワ・デュ・ノール』)
「心が砕け散った」(南西部地方紙『シュド・ウェスト』)
「青い夢は飛び去った」(東部地方紙『クリエ・ド・ルェスト』)
「なんという失望か」(北中部地方紙『クリエ・ピカール』)
「まるで青あざのように」(全国日刊紙『リベラシオン』)

 ただ、ひとつだけ、こんな見出しも。
「このひと時を、ありがとう」(全国日刊紙『リュマニテ』)

 そしてこれが、フランス国民の、ほぼ総意に違いなかった。決勝の翌日、フランス代表の選手・スタッフ全員を官邸に招待した際に、共和国大統領フランソワ・オランドは国民を代表してこんな言葉を告げた。

「君たちは賜杯を持ち帰ることはできなかったが、我々の心を勝ち取った。これは値段がつけられないほど、価値あることである。本当にありがとう」

 官邸裏口で出待ちをしていた何百人もの熱心なファンたちも、ひっそりと走り去るミニバンに向かって、惜しみない拍手とともに、こんな声援を飛ばした。

「ありがとう、レ・ブルー!」

 誰もが悲しみに打ちひしがれていたけれど、そこに怒りの感情はなかった。2006年ワールドカップ決勝敗戦後は、フランス国内に批判の嵐が吹き荒れたものだ。2010年W杯では、練習「ストライキ」のいざこざの果てにグループリーグ敗退となり、国民は怒りを通り越して選手たちに憎しみを抱いた。ただし、今回のフランスは、むしろ感謝の気持ちでいっぱいだ。

 フランスがこれほど代表を愛したのには、複数の理由が考えられている。やはり一番は、複数のテロで痛めつけられた国民の心に、明るい話題を振りまいてくれたこと。また1998年・2000年の栄光の時代を築いたフランス代表が、「ブラック・ブラン・ブール(黒・白・茶)」と呼ばれ、なんとなく政治的に利用されてしまったのに対して、今回の代表は純粋なスポーツチームとして扱われてきたこと。2010年大会以降失った信頼を取り戻すため、代表が「全国巡業」を熱心に行ってきたこと。パリや大都市だけでなく、小さな都市でも試合を行うことで、フランスの隅々まで「われらの代表」という意識が根付いたと言われている。

 なにより、2年後のワールドカップに向けても明るい希望が見えた。アントワーヌ・グリーズマンが現在25歳、ポール・ポグバは23歳と、2人のリーダーが非常に若い。2018年はさらに経験を積み、成熟したリーダーになっているはずだから。

「あとたったの17試合で、フランス代表は世界チャンピオンになるのだ」(日曜新聞『ジュルナル・ド・ディマンシュ』)

 さらに日刊紙『ル・モンド』も、バルセロナの新聞『ラ・バングアルディア』から、こんな一節を抜き出した。

「このフランス代表は、将来、トロフィーを掲げ上げる機会を幾度となく持つことだろう」

 サッカーメディアの大家『フランス・フットボール』紙は、さっそく読者アンケートを開始した。「フランス代表は2018年ワールドカップを勝てる?」、そんな問いかけに、53%がOui(YES)と前向きに答えた(7月12日現在、回答者数7594人)。

 ロシアまでの旅を指揮する、監督のディディエ・デシャンも、確かな口調で述べている。

「今回のユーロをスタッフと共にしっかり分析して、2年後に待つ大会に向けて再スタートを切る。なによりこの大会は、将来に向けて、素晴らしい見通しをいくつも感じさせてくれた。そのことを僕は忘れない」

SOCCER KING

最終更新:7月15日(金)18時59分

SOCCER KING