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中国「日本にかまっていられない?」 参院選報道、南シナ海にかすむ

ZUU online 7月16日(土)7時40分配信

中国では、日本の参議院選挙結果の報道は遅々として進まなかった。結果が明らかになった11日の午後3時にネットニュースを検索しても、まだ前日10日掲載の観測記事だけだった。そのうちの1つは日本人の書いたもので「日本民衆は長期的“安倍王朝”構築を支持」というリードだった。

あとは微信から「自民党など右翼政党大勝」という書き込みを転載するなど、どれも中国人記者が責任を持って書いた記事とは言い難い。新華社の見解待ちに違いない。

■7月11日CCTV(中央電視台)夜7時の全国ニュース

この日はトップ指導者の登場は一切なく、各プロジェクトの宣伝特集だった。トップニュースは重慶市の両岸新区調査研究に関する話題で、盛んに資金不足を強調していた。他に放映時間が長かったのは、宇宙ロケット長征7号が、天津の工場で製造され、海南島へ運ばれ、打ち上げられるまでのミニドキュメント。他に南沙諸島への航海活動や、チベット自治区における緑化運動の進展などだ。

7時24分、残り6分からやっと海外へ移行、ニュースは以下の順に5項目放映された。

(1)南スーダンの平和維持活動で、中国人兵士が2人死亡、5人重軽傷。
(2)英国の元副首相が、イラク戦争は誤りだったとし179人の死亡した兵士家族に謝罪。
(3)日本の参議院選挙結果、改憲勢力が3分の2の議席を獲得。
(4)アメリカの黒人殺害と、黒人による白人警察官殺害、アメリカ社会混乱の様子。
(5)サッカーユーロ杯、ポルトガル初優勝。

(3)の放映時間は最も短く、わずか30秒ほどだった。コメントらしいコメントはなく、CCTVも踏み込みは避けていた。

■7月12日の新聞報道はいつものトーン

地方紙12日の海外面は、2面のうち1面は南シナ海の仲裁問題に当てられていた。裁定の出る直前の新華社電で国際社会を「拙劣な表演者」「国際法の濫用」と主張。残り1面のうち上4分の3は、南スーダンでの平和維持活動で中国人犠牲者が出た件を、写真付きで詳細に報道した。下4分の1のさらに5分の4が参院選のニュース。残り5分の1はイギリス保守党新党首決定の件。海外ニュースはこの3つだけである。

参議院選挙のニュースの見出しは「誰が安倍に改憲の扉を跨がせた?」となっている。内容を要約すると、

(1)安倍首相は参議院で3分の2を獲得、改憲への「通路」を得た。しかし少なくない人士がアベノミクス破たんを主張、改憲は経済問題の影に隠れた感があり、改憲勢力もそれぞれ主要テーマはバラバラである。
(2)改憲勢力大勝の原因は、安倍首相による、「民意の慣用政治」の技量が優れていたことが原因である。
(3)日本社会の独立性脆弱にも原因がある。野党勢力は反自民の民意を形成する力がなく、野党では経済が悪化する、という半ば脅しが効果を挙げた。改憲を否定すると、アベノミクスまで否定することになり、選択の余地が少なかった。民進党は将来を見据えた豊富な政策主張を欠いていた。
(4)連立与党の公明党は憲法9条に手を付ける考えはなく、日本の世論もこれに関しては大きく割れている。これこそ安倍首相の改憲作戦における最大の障碍となっている。

といったトーンの内容で、特別、力の入った反日宣伝はなかった。

ただし南シナ海記事では、日米が中国に圧力だの、南スーダン記事でも悪いのはアメリカだの、ちくちく批判は加えている。これから新華社は南シナ海問題で宣伝機関(報道機関ではない)として正念場を迎える。これ以上日本にかまっていられないのだろう。

■中国は世界秩序の中心ではない。

このところ中国の近隣外交にろくなことはない。5月に就任した台湾の蔡英文総統は、中国の警告や圧力に馬耳東風を貫き、国民の支持を伸ばしている。香港には反中運動がうごめき、ベトナム、フィリピンとは南沙諸島で対立。インドネシアの女傑、スシ海洋・水産相は、違法操業の中国漁船を爆破したことで、国内外でスターになった。

さらに忠実だった韓国の朴槿恵まで意向に逆らい、アメリカの最新鋭迎撃ミサイルシステム「THAAD」の韓国配備を決定した。北朝鮮はとっくにコントロールが効かない。それらに比べれば、今回の安倍改憲勢力大勝は些細なニュースだろう。もはやインテリの間では、中国の近隣外交政策は失敗、と語られ、政府の足元はぐらつき出している。

国際司法裁判所の判断が出た直後、12日夜7時のCCTVニュースは、7時12分から27分まで15分かけて中国政府の立場を表明した。最初の8分間は文字放送だった。外相はフィリピンと交渉すると発言し、あくまで2国間問題を強調した。

中国と中国人は、一対一で対峙している限り、簡単に負けるようなことはない。あきらめて投げ出してしまうことはないし、あらゆる手段を駆使することにためらわない。しかし今回の国際法に対してはどうだろう。相変わらず利益誘導による各個撃破しか戦法がないのなら、もはや展望は開けない。

古代・中世の王朝時代、中国皇帝は東アジア秩序の中心にあった。今中国は世界秩序の中心ではない。国民はとうにわかっていて、欧米にあこがれすら抱いている。しかし指導部は今でもそうだ、と国民の遺伝子を呼び起こしたい。これが時代錯誤でなくてなんだろう。とにかく2016年夏、中国外交は重大な岐路に立った。日本にも必ず何らかのアプローチをしてくるだろう。(高野悠介、現地在住の貿易コンサルタント)

最終更新:7月16日(土)7時40分

ZUU online

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