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『ファインディング・ドリー』は同時上映も見逃せない!短編『ひな鳥の冒険』が描き出す“成長”の物語

cinemacafe.net 7月17日(日)13時0分配信

作品を重ねるごとにそのクオリティを更新し続けているディズニー/ピクサーによる映画作品。毎年のように公開される最新長編に、全世界からの注目が集まるのはもちろんだが、忘れてはいけないのが同時上映される短編アニメーションだ。

【画像】『ひな鳥の冒険』フォトギャラリー

10分も満たない僅かな時間で、長編にも負けずと劣らない奥行きと世界観を表現するディズニー/ピクサーの短編作品。『トイ・ストーリー』などお馴染みのシリーズ番外編といった位置付けのものもあれば、完全オリジナルのキャラクターとストーリーで描かれる作品など、その表現の幅は多岐にわたるが、どれもが一瞬にして観客の心を掴む魅力に溢れた作品ばかりであり、そこにはディズニー/ピクサーの底知れぬクリエイティビティが感じられる。

世界屈指の才能あるクリエイターたちを擁する同スタジオ、もちろんそこにはジョン・ラセターといった“天才”が強烈な存在感を発揮しているが、若手クリエイターたちも日々研鑽を重ね、作品の中で様々なかたちでその才能を開花させている。短編アニメーションは、そんな今後の活躍が期待される逸材たちにとって、監督としてデビューを果たす貴重な機会でもあるのだ。

シネマカフェが実施したピクサー現地取材第2弾では、『ファインディング・ドリー』の同時上映作品『ひな鳥の冒険』で監督デビューを飾ったアラン・バリラーロと、プロデューサーのマーク・ソンドハイマーのインタビューをお届けする。

まばゆい光に照らされた海岸線で、餌を探すシギの親子の姿が描かれる本作。主人公は、まだ親鳥に甘えている一羽の小さなひな鳥だ。そんなひな鳥に、なんとか自分で餌を探すように背中を押す親鳥と、突然やってくる波におびえながらも、自分で餌を探すことを覚え始めるひな鳥の成長が、美しい映像で描かれている。

本作で初めて監督を手掛けるのは、『ファインディング・ニモ』を始め、『バグズ・ライフ』『トイ・ストーリー2』『モンスターズ・インク』『Mr.インクレディブル』『ウォーリー』『メリダとおそろしの森』と、ほぼ全てのピクサー映画にアニメーターとして参加しているアラン・バリラーロだ。なんと宮崎駿のファンだという彼だが、初めての監督インタビューということもあってか、熱い情熱をほとばしらせてインタビューに答えてくれた。

濡れた砂浜がシギによって掘り起こされる質感に至るまで、とにかくリアルに表現された映像への感動をまず伝えると、「ありがとう。とても難しかったんだよ(笑)」とアランは頬を緩ませる。なんと本作は取材陣が訪れるつい数日前に完成したばかりであり、スタジオのスタッフですらほとんど観ていない状態だったという。

「RIZ」と呼ばれる、新しいテクノロジーが用いられたという本作だが、ディズニー/ピクサーは近作『アーロと少年』においても“フォトリアル”と呼ばれるような、実写と見紛うほどのリアルな映像表現を実現させている。表現の中でのテクノロジーの重要性についての質問をすると、「まずはストーリーが最初にあるんだ」とアランは説明する。「もちろん、新しいテクノロジーはエキサイティングだよ。いまでは、アーティストがどんなフォームでも、自分たち自身を表現できるようになってきているからね。でも、僕にとって表現は、キャラクターやデザインにかなり基づいている。だから、この作品での波なんかは、ただ水をフィジカル・シミュレーションしたものじゃない。アニメーターたちの手によってかたち作られたものなんだ。だから、本物の水よりももっと水らしく感じるんだ」と、テクノロジーだけでなく、アーティスティックな感性が生かされたピクサー流の表現について語る。


若手クリエイターの育成を積極的に行うピクサーだが、今回晴れて監督に抜擢されたアランにその経緯を尋ねると、「アンドリュー・スタントン(『ファインディング・ドリー』監督)が僕の机のところにやってきて、僕がやっていたテストを見たんだ。そして、僕のことを励ましてくれた。ジョン・ラセターもね」と興奮気味に話す。「あまり知られていないピクサーの大きな特徴は、こういったアーティストとのメンターシップなんだ。監督たちやアーティストたちからアートフォームとビジネスの関係について学ぶことで、とても鼓舞されたよ。ここでのメンターシップを通して、アーティストとして成長していると感じられるのは素晴らしいことだよ」。

さらに、アランに続きプロデューサーのマークも、「短編を作るにはコストもかかるが、それでもピクサーとジョン・ラセターは、短編を作ることを推奨している。なぜなら、それはアランのような人々に、ストーリーを語り、学ぶ機会を与えるからだ。短編を制作することは、普段彼らがやっていることとは違うことをトライしてみる新しい機会を与えられる。そしてそれは、まさしくピクサーそのもののためなんだ」と熱く語る。アーティストにとって、才能を伸ばす上でここまで恵まれた環境はないだろう。

これまでのアニメーターの仕事と、今回の監督との違いについて尋ねると、本作で表現したかったことについてアランは語った。「間違いなく、監督することはチャレンジだったよ。僕がアンドリューからストーリーについて最も学んだことは、表現しようとしていることに正直に、自分をさらすべきだということなんだ。僕はこの作品で、正直なことを表現したかった。それは、子どものときに感じた“恐れ”と、僕には3人子どもがいるんだけど、親として、どのように子どもたちがそういう状況を乗り越える手助けができるだろうか? と言うことだった」。

アランが語るように、『ひな鳥の冒険』で描かれるのは『ファインディング・ドリー』においても表現される“家族”であり、“成長”の物語だ。アンドリュー・スタントンとのメンターシップを通して生まれた本作は、まさしく同時上映される作品としてはぴったりの作品だと言えるだろう。そのクオリティの高さと魅力は、本作を目当てに劇場に足を運んでもいいと言っても過言ではないほど。ピクサースタジオが送り出す新たな才能を、ぜひ目撃して欲しい。

『ファインディング・ドリー』と同時上映短編『ひな鳥の冒険』は、7月16日(土)より全国にて公開。

協力:ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン

最終更新:7月17日(日)13時0分

cinemacafe.net