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東芝、3次元フラッシュメモリー量産へ。AI技術でサムスン追撃に自信

ニュースイッチ 7月17日(日)8時51分配信

ビッグデータ活用し歩留まり改善。懸念は資金力「今のところは自力で」

 東芝は不適切会計問題に端を発した構造改革を経て、2016年度を成長に向けた第一歩と位置づける。成長戦略の中核を担うのは半導体事業。主役となるのが、3次元(3D)構造のNAND型フラッシュメモリーだ。15日には四日市工場(三重県四日市市)の3D専用の新製造棟が完成し、本格量産を始める。一方、先行する競合の韓国サムスン電子は、巨額の増産投資を相次ぎ仕掛ける。東芝の新製造棟の稼働は量産競争の幕開けとなる。

 「NANDメモリーが成長のドライバーだ」。6日に開かれた東芝初の投資家向け説明会の冒頭、綱川智社長はこう力を込めた。期待を裏付けるのが、3D構造NANDの量産開始だ。

 NANDの18年度までの設備投資額は、計8600億円。NANDにおける3D製品の生産比率を17年度に50%まで引き上げるほか、量産を始める48層品に加え、17年に64層品の量産も視野に入れる。17年度は新たな製造棟の着工も予定。集中投資で一気呵成(かせい)に競争優位性を高める。

 遅れは半年程度、うまくいけば立ち上げ相当短縮

 15日に竣工する新・第2製造棟は、東芝で初となる3D構造NANDの量産拠点だ。一方、先行するサムスンは14年に量産を開始。市場で現状9割以上のシェアを握る。メモリーの最大の武器となるコスト競争力でも、一段優位な立場だ。しかし東芝で半導体事業を統括する成毛康雄副社長は「遅れは半年程度ではないか」と、追い上げに自信をみせる。

 その根拠の一つが、積み上げてきた生産技術力。「どうすれば歩留まりが上がるのかがつかめてきている」(成毛副社長)。15年からは人工知能(AI)技術を四日市工場に導入し、ビッグデータを活用した歩留まり改善を実施。一定の成果が見えてきた。調査会社IHSテクノロジーの南川明主席アナリストは「大規模工場では世界でもほぼ初めての取り組み。うまくいけば立ち上げ期間を相当短縮できる」と評価する。

 サムスンは同時に増産投資も積極化する。17年までに2兆円超を投じ、京畿道華城工場や京畿道平沢工場で3D構造NANDの生産ライン新設を計画。矢継ぎ早に手を打つ。

<分社化で外部資金の活用はあるか>

 一方、東芝の最大の懸念が資金問題だ。サムスンが増産投資を仕掛ける状況で競争するには、東芝にも継続的な設備投資が必要となる。市場は当面安定しているとの見方が強いが、変動性の高さが常の半導体ビジネスでは、機動的に資金投入していく必要がある。成毛副社長も「毎年決まった額を投資すればいいのであれば問題ないが、そうではない」と難しさを明かす。

 しかし不適切会計問題とそれに伴う構造改革で、財務基盤は弱体化。タイミングをとらえた投資ができなければ、成長シナリオは崩れてしまう。外部から資金調達する分社化は一つの可能性だが「手元資金はまだ残っており、今のところは自力でやれる」(成毛副社長)。懸念を払拭(ふっしょく)するにはまずは3D構造NANDを軌道に乗せて、稼ぐ力を高めることが不可欠となる。

 3D構造NAND市場のけん引役は、中国スマホとデータセンター(DC)だ。IHSテクノロジーの南川明主席アナリストは「大容量化ニーズが高く、特にDC用サーバー向けが急激に立ち上がっている」と説明。来年以降も安定成長が見込まれる。また「現状はサムスンしか供給者がおらず、製品の不足感は強い」(南川主席アナリスト)。価格下落のリスクも低いとみる。

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最終更新:7月17日(日)8時51分

ニュースイッチ