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「統合報告書」は企業の将来性を知る新しいツールになるか

ニュースイッチ 7月17日(日)9時55分配信

財務諸表とCSRリポートを合体させただけじゃない価値はどこに

 株主総会を終えた企業が次々に「統合報告書」を発行している。2016年の発行は200社を超えそうだ。決算や経営計画などの財務報告書、環境報告書、企業の社会的責任(CSR)リポートなど各報告書をまとめた冊子が統合報告書だ。

 ただし、単純な合本ではない。環境問題の解決に貢献することがどのように事業成長に結び付くのか、新興国での貧困者支援がどう経営に役立つのかなど、環境・CSRと経営が一体化した姿を描く。そして、価値を提供しながら成長する戦略を社会に伝える。

 企業にとっては財務情報だけでは伝えきれない、将来に向けた取り組みを伝えるツールだ。投資家も投資判断の材料として統合報告書を活用している。



 アサヒグループホールディングスは15年、アニュアルリポートとCSRリポートを融合した「統合報告書2014」を初めて発行した。従来の2冊だと「ビールから飲料へ、さらに海外へと事業が広がり、企業価値を伝えきれなくなった」(松香容子CSR部門マネジャー)という。

 編集はCSRとIR部門が担当した。「コーポレートガバナンスコードの導入もあり、投資家との対話を充実させたいIR側の課題とも一致した」(同)と振り返る。

 参考にしたのが国際統合報告評議会(IIRC)のフレームワークだ。特に財務、製造、知的、人的など「六つ資本」に企業価値を当てはめることに苦心したが、「アサヒらしさが出せなかった」(同)と反省する。伝えたかったのは「アサヒの強みは何か。なぜ、それが強みなのか。そして強みは何を生み出しているのか」という価値創造のストーリーだった。

 2年目の「統合報告書2015」は「強みが生み出した結果を数値で表すことにこだわった」(同)。

 売上高や利益といった財務情報以外に、社会貢献支出額、グリーン電力の活用、栄養相談活動の参加数、サプライヤーアンケートの回数など社会への価値も数値化した。

 各事業の紹介も一貫して「強み」を軸に展開し、機会とリスクも示した。事業成長を阻害するリスクにも言及した理由を「投資家にリスクを認識して事業に取り組んでいることを伝えるため」と明かす。人材育成のページにもこだわり、育成方針が分かるロジックツリーを作成した。将来の経営を担う人材育成に取り組んでいると理解できれば、投資家も安心して株式を保有できる。

 苦労のかいがあり、海外の投資家から「まとまっている」と評価を得ているという。

<解説>
 決算短信では読めとけない、企業の将来性を知るツールが統合報告書。コスト削減のために環境、CSRの報告書を1冊にしたという統合報告書もあったが、最近は読み応えがあるものが増えている。13年にIIRCのフレームワーク(編集の参考となる枠組み)ができたため、それを各社が真似して個性のない統合報告書ばかりになるのでは心配した。

 紹介したアサヒグループにとって強みの一つがブランド力。そのブランド力が収益や社会価値提供にどうつながっているのか、そして将来も価値創造していく姿を描いている。また社外取締役の取締役会出席回数の掲載もあり、充実していると感じた。

最終更新:7月17日(日)9時55分

ニュースイッチ

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