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失速アベノミクス、本当の「第三の矢」とは

ニュースイッチ 7月17日(日)11時16分配信

経済を支える中小企業へのリスクマネーがカギを握る

 参院選挙が終わり、安倍内閣の新たな経済刺激策に関心が高まっている。特に「第三の矢」が中堅中小企業の成長戦略という的に当たるかどうかがキーである。

 日本には優れた技術、人材、資金がある。しかし、経済を動かすこの基本的3要素が有機的につながっていない。だぶついた資金が成長の芽に有効に注がれていない。特に成長局面にある企業には一定の投資が継続して必要である。投資には当然リスクが伴うが、市場に資金量だけ増やしてもリスクマネーが効率的に回らない限り、成長は絵に描いた餅である。

 かつて日本の中小企業を支えたのが「短ころ」こと「短期ころがし=短期継続融資」であった。銀行の支店長には決済権限があり、地元の中小企業のオーナー経営者は、銀行から1年以内の運転資金を継続的に借り入れることができた。「短ころ」があったから頑張れたと当時を懐かしむ経営者もいるが、高度成長期には内需が高まり、経済も右肩上がりだったから増産拡販で企業も銀行も成長できた。

 しかし、80年代のバブル破たんとともに成長は鈍化し、2002年以降、担保の無い短ころは金融庁の検査マニュアルで不良資産に分類されることになった。銀行は担保主義となり、短ころは半減した。長期融資に切り替えた銀行は、成長に必要なリスクマネーの供給先でなくなるばかりか、景気が悪化すれば貸し剥がしや貸し渋りに走り、中小企業にとっては「死神」となっていった。

 筆者は今、米国のプライベート・エクイティへの投資に取り組んでいる。特にミドル・マーケットといわれる売上高10億円から1000億円までの非上場の中堅中小企業に投資するファンドは300近くある。米国のミドル・マーケットには20万社の中堅中小企業がひしめき、総合的な売り上げは1000兆円にものぼる。

 ミドル・マーケットに特化したファンドでは、3億から50億円の投資を実施している。そうしたファンドのスポンサーとなる機関投資家にとって、プライベート・エクイティは中長期の投資であり、短期的な相場動向との相関性が比較的低いことから、分散投資の一環としてポートフォリオ運用には欠かせないアセットとなっている。

 筆者が米国経済を底堅いとみているのは、実はこうしたプライベート・エクイティファンドの層の厚さ、そして、潤沢なリスクマネーの動きを見ているからである。さらに重要なのは、成長資金の出し手であるファンドマネジャーの目利き力である。彼らは常に競争にさらされ、淘汰されるので、結果、目利き力の高いマネジャーが収益を上げ、成功報酬を得ることなる。

大井幸子(国際金融アナリスト兼SAIL社長)

最終更新:7月17日(日)11時16分

ニュースイッチ