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社説[きょう「海の日」]豊かな恵み体感しよう

沖縄タイムス 7月18日(月)5時0分配信

 八重山支局長を経験し、だいぶ前に定年退職した先輩記者から、こんな話を聞いたことがある。
 ベテランの漁師が島の銀行を訪ね、融資を申し込んだ。
「担保はありますか」と行員が尋ねると、真っ黒に日焼けした漁師は、表情一つ変えず青い海を指さしたという。
 真偽を確認したわけではないが、この手の話は楽しい。どこか真実が宿っていると感じられる。
 南城市の漁師は、奥武島から久高島の手前まで延びる漁場の海底地形を調べ、詳細な地名を付した「海の地名図」を作製している。
 ベテランの漁師は自分の仕事場である漁場でよく捕れる海産生物や漁法を熟知し、その場所の地形や潮流などを体得しているが、これらの情報が地名の中に盛り込まれているのだという。
 海に囲まれた沖縄は、はるか昔から、海によって外部と隔てられ、海によってつながり、自然の猛威と同時に、さまざまな恵みを海から得てきた。「海神の贈物」である。
 7月の第3月曜日にあたるきょう18日は「海の日」、今月は「海の月間」。本格的な海の季節の到来だ。
 ダイビング、シュノーケリング、パラセーリング、スタンドアップパドル、カイトボーディング-古くからある定番のマリンスポーツだけでなく新しいタイプも増えた。海の爽快感を味わうチャンスだ。
 県内のほとんどの小中高校が21日から夏休みに入る。この機会に、海の生物多様性について知り、海の豊かさを体感しよう。
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 すべての生き物には違いがある。いろいろな性質を持つ生物がいること-それが生物多様性である。
 生物多様性には、いろんな種類の生き物がいる「種の多様性」と、いろんな生き物がいろんなふうにつながっている「生態系の多様性」がある。
 沖縄は陸も海も生物多様性の宝庫だ。
 だが、都市化と開発が進み、人が環境に与えるストレス(環境負荷)も大きくなっている。体験と学習を目的としたエコツーリズムは県内でも盛んだが、環境負荷を低減する工夫が必要だ。
 生物多様性に富むサンゴ礁の生態系は、沿岸開発や海洋汚染、オニヒトデの大量発生、高水温による白化現象などで、世界的に深刻な危機に直面している。地球温暖化が進めば状況はもっと悪くなるかもしれない。
 沖縄もそうだ。サンゴ礁の保全と再生は急務である。
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 沖縄県は2013年3月に「生物多様性おきなわ戦略」をまとめた。生物多様性の保全と持続可能な利用を図るための基本計画である。
 「おきなわ戦略」はめざすべき将来像を、こんなふうに表現している。
 「自然を大切にする真心(ちむぐくる)と、いきものとのゆいまーるを育む島々」
 子どもたちの自然体験型の活動は、「おきなわ戦略」を進める上で重要な位置を占める。自然体験を通して海の豊かさや厳しさを体感し、保全の努力の大切さを学びたい。

最終更新:7月18日(月)5時0分

沖縄タイムス