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シャープ相次ぐ人材流出、「競合他社」の執行役員就任も…法的な制限はないのか?

弁護士ドットコム 7月18日(月)10時30分配信

台湾の鴻海精密工業の傘下に入ったシャープで、経営幹部クラスも含めた人材流出が相次いでいる。その中でも象徴的なのが、競合する液晶パネル大手のジャパンディスプレイの副社長執行役員に就任した方志教和氏だ。

報道によると、方志氏は、シャープの液晶部門のトップで、代表取締役専務をつとめていたが、2015年6月に顧問に退き、2016年5月に退社していた。7月1日にジャパンディスプレイの副社長執行役員に就任して、話題となった。

ほかにも、日本電産には、片山幹雄元社長や、財務部門を担当していた大西徹夫元副社長が移籍している。

産経新聞の報道によると、6月に開かれたシャープの株主総会では、「シャープは草刈り場だ。日本電産やアイリスオーヤマ、サムスン電子は優秀な人材を獲得できて喜んでいる」などの批判が株主からあがったそうだ。

今後も流出が続く可能性があるが、競合会社などへの人材流出は法的に制限されていないのだろうか。神内伸浩弁護士に聞いた。

●競合というだけでは転職は制限されない

「原則として、憲法22条1項が職業選択の自由を保障していることから、競合会社でない場合はもちろんのこと、競合会社であっても、競合というだけで転職が制限されることにはなりません。従業員と取締役とでは、雇用か委任か、労働基準法が適用されるか否かといった違いはありますが、職業選択の自由という観点からみれば大きな違いはありません」

退職した会社に対して、競合会社に一定期間、就職しないという趣旨の誓約書を提出していた場合はどうなるのか。

「退職後の競業禁止条項は、憲法が保障する職業選択の自由を制限するものとなるため、単に競争者の排除、抑制を目的とする場合には、誓約書があっても公序良俗に反し無効とされてしまう可能性があります。つまり、在職中に身に着けた一般的な知識や技能は、他社で大いに活用して構わないということです。

ただし、その知識が、前に在籍していた企業のみが保有するもので、他人に譲渡することのできる客観的価値を有する特殊なものである場合には、『営業秘密』として保護に値する法益となり、合理的な制約は許されると考えられています。

そして、この制約が合理的内容であるかどうかは、(1)競業禁止条項制定の目的、(2)労働者のこれまでの地位、(3)競業禁止の期間、地域、職種、(4)競業禁止に対する代償措置等を総合的に考慮し、職業選択の自由を不当に制約する結果となっているかという観点から判断されることとなります」

取締役と従業員で違いはあるのか。

「一般論として、従業員よりも経営の担い手であり営業秘密にも触れる機会のある取締役の方が制約の合理性は高いと考えられますが、それでも無制限に認められるわけではないということです。

いずれにしても他社への人材流出を法的に抑制することはできません。ですから、企業が採り得る自衛手段は、優秀な人材が社内に留まりたいと思える人事制度や就業環境を日々醸成していくことに尽きると言えます。そして、やむを得ず辞めてもらわざるを得ないような場合であっても、退職に応じてもらえるのであれば競合会社へ転職しても構わない、といった寛容さも必要なのではないでしょうか」



【取材協力弁護士】
神内 伸浩(かみうち・のぶひろ)弁護士
事業会社の人事部勤務を8年間弱経て、2007年弁護士登録。社会保険労務士の実績も併せ持つ。2014年7月神内法律事務所開設。第一東京弁護士会労働法制員会委員。著書として、『課長は労働法をこう使え!―――問題部下を管理し、理不尽な上司から身を守る 60の事例と対応法』(ダイヤモンド社)、『管理職トラブル対策の実務と法【労働専門弁護士が教示する実践ノウハウ】』(民事法研究会 共著)、『65歳雇用時代の中・高年齢層処遇の実務』(労務行政研究所 共著)ほか多数。

事務所名:神内法律事務所
事務所URL:http://kamiuchi-law.com/

弁護士ドットコムニュース編集部

最終更新:7月18日(月)10時32分

弁護士ドットコム

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