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食物アレルギーの症例や診断 薬剤内服では治癒せず

山陽新聞デジタル 7月18日(月)11時23分配信

 岡山済生会総合病院(岡山市北区国体町)の小倉和郎小児科医長に、食物アレルギーの症例や診断、治療などについて寄稿してもらった。

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 食物アレルギーとは、「食物によって引き起こされ、抗原特異的な免疫学的機序を介して、生体に不利益な症状が惹起(じゃっき)される現象」を意味します。症状により、(1)即時型反応(アナフィラキシーを含む)、(2)新生児・乳児消化管アレルギー、(3)食物依存性運動誘発アナフィラキシー、(4)口腔(こうくう)アレルギー症候群、(5)食物アレルギーの関与するアトピー性皮膚炎に分類されています。

 (1)即時型反応とは、原因食物摂取後、短時間(概(おおむ)ね2時間以内)に誘発症状が認められる症例。(2)新生児・乳児消化管アレルギーとは、新生児期に粉ミルク摂取後に嘔吐(おうと)や血便等が認められる症例。(3)食物依存性運動誘発アナフィラキシーとは、原因食物の摂取のみでは症状が誘発されず、摂取後に運動を伴う事で症状が認められる症例。(4)口腔アレルギー症候群とは、花粉症に合併する事が多く、果物や野菜等を摂取する事で口腔内に掻痒(そうよう)感あるいは粘膜の腫脹(しゅちょう)といった症状が認められる症例。(5)食物アレルギーの関与する乳児アトピー性皮膚炎とは、湿疹の増悪に食物摂取が関与している、または原因食物の摂取に伴い(1)即時型反応を合併する症例となります。(アトピー性皮膚炎と食物アレルギーが必ず関係しているとは限りません)。

 誘発される症状としては、皮膚症状(蕁麻疹(じんましん)、発赤他)、粘膜症状(目の充血、口腔内・口唇の腫脹や違和感他)、消化器症状(腹痛、嘔吐他)、呼吸器症状(咳(せき)、喘鳴(ぜんめい)、声のかすれ、息苦しさ他)、アナフィラキシー(症状が複数の臓器に認められる状態、また血圧低下が伴う状態であればアナフィラキシーショックと呼ばれる)があります。

 原因となる食物としては、小児では鶏卵、牛乳、小麦が多く、それ以外でも症状が誘発される可能性はあります。

 診断において最も大切なのは、特定の食物摂取で症状が誘発される事を確認、あるいは症状が誘発された時点以前に摂取した疑わしい食物をリストアップし、摂取からの時間経過、誘発症状の内容、それまでの摂取歴等を確認する事になります。血液検査(特異的IgE抗体検査)、皮膚検査(スキンプリックテスト他)を実施する事で疑わしい食物を絞り込む事は可能ですが、血液検査等で反応があったとしても(感作があると表現します)、必ず症状が誘発されるとは限らず、また反応が無かったとしても必ず安全に摂取が可能であるとは限りません。そのため、最終的な診断には「経口負荷試験」(実際に疑わしい食物を摂取してみる検査)が必要になります。

 そして診断された食物アレルギーに対して行う治療・管理は、原則として「正しい診断に基づいた必要最小限の原因食物除去」となります。必要最小限の食物除去とは、(1)摂取すると症状が誘発される食物のみを除去する、(2)原因食物として症状が誘発される食物でも、摂取しても症状が誘発されない量については摂取をする事になります。現状では、残念ながら特定の薬剤内服で食物アレルギー自体が治癒する事はありません(誘発された症状の治療目的では薬剤投与が有効です)。しかし、小児で多く認められる、鶏卵、牛乳、小麦については、成長に伴い自然に摂取可能となる事が多いため、適宜、経口負荷試験を実施し摂取が可能になっているか確認し、食物除去を速やかに解除する事が大切になります。ただし小学校に入学しても、アナフィラキシーを誘発する症例では、自然に摂取が可能になる可能性は低くなるため、一部医療機関では、研究目的にて「経口免疫療法」(食べて食物アレルギーを治す治療)が実施されています。必ず原因食物の摂取が可能になるわけではなく、また治療経過中にアナフィラキシー発症のリスクもあるため、一般診療として誰にでも勧められる治療方法ではありません。

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 岡山済生会総合病院(086―252―2211)

最終更新:7月18日(月)11時23分

山陽新聞デジタル