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「独企業は移民雇用に消極的」大手30社の雇用は1年で54人のみ

ZUU online 7月19日(火)8時10分配信

「手放しで移民を歓迎する国」のイメージが強いドイツ。しかし独企業が移民の雇用に消極的な姿勢を示し始めたことが、フランクフルト総合新聞の調査で分かった。

ドイツには過去1年間だけでも110万人の移民が流入しているが、その間に独大手30社が雇用した移民数はわずか54人。雇用市場が低迷しているというわけではなく、6月だけでも6万5000件の求人が出回っている。

多くの移民が雇用検討の基準となる「最低限の教育を受けていない」背景が、雇用の足かせとなっているようだ。

■ガブリエル経済相「利益創出だけではなく、移民の人材育成にも力を入れるべき」

調査によると、雇用された54人のうち、50人は独郵送会社、ドイツポストに採用されている。つまり移民を雇用した大手企業は、最多でもたったの5社ということになる。

こうした過酷な移民雇用環境について、ドイツを代表する製薬会社、バイエル(Bayer AG)は、「教育制度が確立されていない国から、多くの移民が流れてくる。教養は我が社の労働力に欠かせない要素だ」と説明。

社会民主党(SPD)の党首、ジグマール・ガブリエル経済相は、労働に必要な教育や訓練を移民に提供する環境が整っている企業が、ごく少数派である現状を指摘。「大手企業は利益創出だけではなく、移民の受け入れにも積極的であることを証明すべきだ」と、雇用側の協力を呼びかけている。

しかし現実的に見た場合、義務教育、あるいはそれ以下の水準から、大手企業が求める基準に達するまでの教育をほどこすとなると、相当の費用と時間を要する。

昨年難民問題がピークに到達するまでは、受け入れに積極性を示していた大手企業も、「スキルギャップ(技量の差)」という現状を目の当たりにし、尻込みせざるを得なくなったようだ。昨年を境に、移民を雇用する大手企業が激減した。

■「移動の自由」だけにとどまらず、「生活の自由」を

現在30万人弱の移民がドイツ国内で雇用口を探しているが、74%が職業訓練を受けた経験がなく、15%が義務教育すら終了していない。すべてのデータが記録されているわけではないと想定した場合、ほかにも何千万人もの移民が、企業が「必要最低限」と定める教育水準に達していないことになる。

また多くの企業がコスト削減を余技なくされ、人員整理に乗りだしている現状は、ドイツも例外ではない。

そうなれば企業にとっては、すでに求める知識や経験をもっている人材を雇用するのが自然な流れであり、移民に時間とコストをかけ、実践力につながるか判断するといった余裕がないのは当然だろう。

「移動の自由」をEUの基本概念とし、無制限に移民を受け入れるアンゲラ・メルケル首相の政策には、実質的な解決策が欠けているような気がしてならない。

受け入れるだけでは、根本的な問題は解決しない。自国を抱えきれないほどの人間で圧迫し、受け入れる側も受け入れられた側も、成すすべがなく途方に暮れる。

衣服住に困らないという、人間にとって最低限の生活が保障されることは、非常に重要な意味を持つ。しかし人間には、第三者によって永遠に保護されるのではなく、生活を自らの手で築いていくという、生まれながらの本能が備わっているはずだ。

移民の子供たちに、熱心な教育をほどこす受け入れ国は多い。しかしその子供たちの親の世代の多くも、家族を養っていくための教育を必要としている。

「移動の自由」を放棄してEUを離脱する英国に批判的なドイツだが、「生活の自由」というレベルには達していないのではないだろうか。(ZUU online 編集部)

最終更新:7月19日(火)8時10分

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