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なぜコンビニは、「ミスドの客」をたくさん奪うことができないのか

ITmedia ビジネスオンライン 7月19日(火)10時20分配信

 2016年1月、セブン-イレブンがドーナツのリニューアルを発表した。ところが、最近はどうもコンビニドーナツ全体の雲行きが怪しくなってきたようだ。

【ダスキンの直近業績】

 発売時はコンビニ各社がこぞって専用の什器(じゅうき)まで用意し大々的に売り出し、あわよくば「専門店のミスタードーナツを食ってやる!」という勢いだったが、今はそれが感じられない。あくまでもコンビニにとってのドーナツはカウンターフーズの1カテゴリーにすぎず、年中売り込んでいられないということだろうか。

 そこで今回は、ミスタードーナツ側(運営:ダスキン)の視点からコンビニドーナツについて考察してみよう。

●ダスキンは奪われた市場を盛り返せるのか

 ダスキンの直近のデータを確認してみよう。以下の表をご覧いただきたい。2016年3月期のミスタードーナツ(国内)の売り上げは、前期比で10.3%の減少となっている。

 次に、時系列で確認してみよう。ただし、決算短信資料にミスド単体の詳細データはなかったので、ダスキンのフードグループの数値を参照する。フードグループと言っても、95%はミスドの数値なので大きなズレはないだろう。

 コンビニ各社のドーナツアピールが影響したのか、2016年度前半は大きく売り上げを落としている。マイナス全体の95%はこの時期に偏っているのだ。第3四半期で多少持ち直したものの、第4四半期は再びマイナスに。

結果、2016年度の売上高は前期比マイナス42億8200万円と大幅に落ち込んだ。

 大きなダメージを負った前半の原因がコンビニ各社の攻勢によるものだとすると、後半は専門店のミスドが本気を出して盛り返してきたのでは――という見方もできる。

 以前の記事「コンビニのドーナツはミスドに勝てるのか」で、コンビニにフライドチキン市場を奪われたケンタッキーフライドチキンが、最終的には盛り返した事例を紹介した。記事の中で、ケンタの業績が回復した最大の理由は、消費者がコンビニの味に飽きてきたからではないか――などと指摘した。

 ケンタとコンビニ各社が導入している設備は「別物」と言ってもよくて、それが原因で味もかなり違う。コンビニのチキンを食べた人の多くは「やっぱチキンはケンタだなあ」と感じたのではないだろうか。結果、“コンビニのチキン離れ”が進んだのかもしれない。今回のドーナツにおいても、同じことが言えるのではないだろうか。

●「菓子パン」の域を出ないコンビニドーナツ

 コンビニの参入により、日本のドーナツ市場は大きく様変わりした。メディアは「ドーナツ戦争勃発 コンビニ VS. ミスド」といった形で対立構造をつくり出していたが、いまのところどちらにも軍配は上がっていないようだ。

 事実、ミスド全1269店(2016年3月末現在)に、大手コンビニ3社の計4万2991店(2016年5月末現在)が束になってかかっても、10%しか売り上げを奪えなかった。この数字から何を読み取ればいいのか。ターゲットが完全に住み分けられていて、生半可な攻勢では専門店にはかなわないということだ。ケンタッキーフライドチキンの事例を鑑みても、店内製造ではないコンビニドーナツは、ドーナツというよりは「菓子パン」の域を出ていないのだ。

 一方、「本格」をウリにしたコンビニコーヒーは大きく躍進した。セブンは、2016年2月末に累計20億杯を突破したと発表。その時点で、セブンの店舗数は1万8572店。単純計算すると、1店舗当たり1日100杯は売っていることになる。伸び率から見て、現在では100杯を超えているだろう。

 残念なことに、コンビニドーナツにはこの「本格」がない。ミスドとコンビニの「本格」と「本格じゃない」の住み分けが進むと、コンビニにとっては分が悪くなってくる。

 分が悪くなるとはどういうことか。次のページで詳しく説明しよう。

●コンビニのファストフードの多くは「ついで買い」

 専門店には「コレを買うならあの店に行かなくちゃ」というように、遠くからでもお客を呼ぶ力がある。専門店が少ないアイテムで商売できる理由の1つに、「商圏が広がる」というのがある。

 ところが、どこでも買える量販商品にはその力がない。ミスドの店舗数はコンビニよりは少ないものの、「おいしいドーナツが食べたいなあ」と思ったときに、消費者が近くにあるコンビニではなく、遠くにあるミスドを選択する可能性が高い。

 これに対して、コンビニドーナツ買う人の多くは「カウンターで目についたとき」だ。もちろん、ドーナツに限らずコンビニのファストフードの多くは「ついで買い」を意識して販売しているが、この売り方だとファストフードの1カテゴリーにすぎない。あるいは、デザートか菓子パンのカテゴリーの1つとなる。

 ミスドとの住み分けが加速すると、コンビニドーナツの売り上げは厳しくなるだろう。売れなければ売り場は縮小となり、縮小されればさらに売れなくなるという、悪循環に陥ってしまうのだ。

 現在、コンビニにとってのドーナツは、コンビニコーヒーのついで買い商品と位置付けられているが、販売用の什器まで用意したドーナツをついで買いの1カテゴリーに収めてしまうと、他の商品に埋もれてしまう可能性は高い。

 少し先の話になるが、秋というのは、甘いモノの売り上げを伸ばす季節だ。過去には、チョコレートの新商品だけでその季節を乗り切ったことがあるほど。この秋に、コンビニ各社はドーナツの展開をどう進めてくるのか――見どころの1つである。その結果、コンビニ各社のドーナツの位置付けがハッキリするだろう。

(川乃もりや)

最終更新:7月19日(火)23時10分

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