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『Overwatch』台湾Blizzard社の公式イベントに招待されたプロチーム・DeToNatorにインタビュー。国を背負ったときの強さとは?

ファミ通.com 7月19日(火)17時2分配信

インタビュアー:編集部 ミス・ユースケ

●世界に挑戦するDeToNator『Overwatch』部門
 Blizzard Entertainmentの3Dオンラインシューティング『Overwatch』がすごいことになっている。

 2016年5月24日の発売後、約20日後には全世界のプレイヤー数が1000万人を突破したことを発表。対戦ゲームとしての完成度の高さはもちろん、魅力的なキャラクターが多数登場することもあり、FPSファン層以外からも支持を得た結果だろう。

 『Overwatch』はeスポーツ界にも衝撃を与えた。世界中の有力なeスポーツチームがつぎつぎと部門を設立し、すでに小~中規模の大会は世界各地で開催されている。このまま成長すれば、『League of Legends』や『World of Tanks』の規模に肩を並べるのも時間の問題だ。

 さて。まだ「eスポーツは自分とは関係ない」と感じる人は多いと思う。そういう人でも、日本のチームが世界に挑むなら応援したくなるかもしれない。サッカーや野球の国際試合と似たような感覚で。

 あるのだ。そういうチームが。その名もDeToNator。2016年5月28日に台湾Blizzard Entertainment社主催の公式イベントが開催され、台湾選抜チームとのエキシビションマッチ出場チームとしてDeToNatorが招待されたのである。

 結果は敗北だったものの、海外メーカー主催の公式大会に招待されたのは、日本のeスポーツ界にとって大きな一歩と言えるだろう。

 本稿ではDeToNatorマネージャーの江尻勝氏と『Overwatch』部門リーダーのYamatoN選手に、台湾で感じたことを中心に話を伺っている。eスポーツが盛んな台湾は、日本とは何もかもが違う。そこで彼らは何を得たのだろうか。

●DeToNatorの積極性が台湾Blizzard Entertainment社を動かした
――最初に、台湾Blizzard Entertainment公式イベントのエキシビションマッチに出ることになったきっかけを教えてください。

江尻 最初はこちらからアクションを起こしました。Blizzardさんは日本に支社がありませんので(※1)、本格的にやるには直接つながりを作る必要があります。アジア圏であれば、韓国か台湾。僕たちはもともと台湾に活動拠点があるので(※2)、台湾Blizzard社に連絡し、「DeToNaotorとしては台湾の活動を強化していきます。もし、僕らにもできることがあるのなら、ぜひいっしょにやらせてほしい」という話をしに行きました。

(※1:日本ではスクウェア・エニックスがプレイステーション4版『オーバーウォッチ』を販売しているが、サーバーの運営はBlizzard Entertainment側が行っている)

(※2:DeToNatorの『Alliance of Valiant Arms』(以下、AVA)部門は活動の拠点を台湾に置いている)

――それはいつ頃の話ですか。

江尻 今年の5月に入ったばかりの頃ですね。たまたま先方の担当者さんが『AVA』の事情も知っていて、話が早かったんです。うちには『Hearthstone』の選手もいますし、『Overwatch』部門も作りました。たくさん国際交流をしていきたいので、何かあったら情報をいただけないですか、と。それが実を結んで、日台戦に呼んでいただきました。

――動きがめちゃくちゃ早いですね。イベント開催が5月下旬ですから、実質的に1ヵ月弱。

江尻 さすがにびっくりしましたけど、感謝もしています。Blizzardさんとこういった話をするのは初めてだったので、どういう反応が返ってくるか、まったくわかりませんでした。とはいえ、指をくわえて待っていても先には進めませんから、自分たちの存在とグローバルで活動する意義をしっかり伝えました。

YamatoN けっこうな急展開でした。

江尻 すでに台湾に活動拠点があったのがよかったんでしょうね。航空券だけ用意すれば、ホテルもいらないし、スケジュール管理に気を使う必要もほとんどない。僕としては、完全に実費でも構わないと思っていました。それだけ素晴らしい舞台を用意していただいたわけですから。未来への投資みたいなものですね。

――わざわざ日本チームを招待するということは、台湾Blizzard Entertainment社側も国際的な動きをやっていきたいのかもしれませんね。

江尻 そうだとすると、うれしいですね。前のインタビュー(※3)でも話したと思いますが、僕たちは最初から世界を見ている、世界しか見ていないので、これくらいのスピード感も当然だと思います。僕たちが本格的に『Overwatch』をプレイし始めたのは2016年2月のクローズドβテスト(第2フェーズ)。そのときにはすでに、世界で戦う画を思い描いていました。

(※3:関連記事 台湾に住んで『AVA』プロリーグに参戦、『Overwatch』部門に実力派プレイヤーが集結──DeToNatorが見ている未来をマネージャーに訊いた)

――DeToNatorが『Overwatch』部門の設立を発表したのは2016年1月ですよね。周囲の反応はいかがでしたか?

江尻 「まだ日本で大会ないじゃん」という反応が多かったですね。たしかにそうですけど、それって部門を作らない理由にはならないと思うんですよ。最初から世界で戦うことを考えているわけですから。

YamatoN 「日本の大会で優勝して日本一になって、それから世界に挑戦する」という図式がありますからね。『Overwatch』は世界同時にサービスしているので、そういう固定観念にとらわれなくていいのも魅力的です。

――何となく“現地のパブリッシャーがステップを用意しないと世界には挑戦できない”みたいなイメージがありますもんね。

江尻 受け身の姿勢が続くと、なかなか先に進めなくなっちゃんですよ。世界で展開するタイトルはパブリッシャーどうしの連携で進んでいますから、そこに自分たちから入らないと取り残されてしまいます。
 『Overwatch』部門はスタートから世界の動きに合わせて、メインストリームの輪に加わるための準備をしていました。クローズドβテストから参加できれば世界と同時にスタートを切れる。日本で話題になる前から海外の情報を調べて、長く計画を練ってきました。いざというときのために、戦えるだけの技術を蓄えておこうと。世界で結果を出せるチーム作りを目標にしてきたからこその、今回の出来事といった感じですね。

――オンラインゲームはデベロッパーとパブリッシャーが分かれていることも多いですけど、PC版『Overwatch』は基本的にはBlizzard Entertainmentの一社体制。だから、その輪に入りやすかったというのもありそうですね。

江尻 そういう面も、少なからず影響しているでしょうね。その国のパブリッシャーや大元であるデベロッパーと直接対話ができるのは大きいと思います。
 今回のBlizzardさんのほかに、GarenaさんやValveさん(※4)ともやり取りすることがありますが、やっぱり動きが早いです。「自分たちは○○ができる。あなたたちは○○ができて、○○を求める。では、やりましょう」みたいな。それで本当に実行に移しちゃうんですよ。日本だといろいろな思惑の渦に巻き込まれて、ビジネスになるかどうか、GOサインを出すかどうかの判断がどうしても遅くなってしまう。もちろん尽力してくださる方も多いんですけどね。

(※4:Garena、Valveともに海外の大手企業。DeToNatorは6部門で活動しており、海外のメーカーと直接やり取りすることも多い)

――儲かるかどうかの判断で慎重になるのは分かりますが、それで時期を逸したらもったいないですよね。企業体質の違いに大きく影響される感じでしょうか。

江尻 そうですね。日本がいいとか悪いとかの話ではなくて、僕たちの理想を実現するには、海外でやるのがベストだと思った。そして、それがうまくハマった。それだけだと思います。
 日本は運営側とのやり取りが目につくと癒着だとかズルいだとか文句を言う人がいますけど、僕たちはきちんとコストをかけてビジネスをして、よりいい舞台に立てるように自分たちを売り込みに行ってるわけです。パブリッシャーにお金をくれって言ってるわけじゃないんです。DeToNatorという存在があって、こういう実績を積んできていて、こういうことができます。ですから、いっしょにやらせてもらえませんか、と営業をかけているんです。

――相手としても、メリットがあると判断したらDeToNatorにオファーをする。一般的な企業間の付き合いということですね。

江尻 ふつうに働いている人からしたら、それほど特殊な感覚じゃないと思いますよ。ただ、業界内の様子を見ていると、パブリッシャーや関連企業からお金を取ろう取ろうとし過ぎる傾向もあるように感じます。僕たちとしては、きちんと自分たちのことを理解してもらったうえで参加させてほしい。必要であれば身銭も切りますしね。そういう考えは大切にしていきたいです。

●台湾チームは試合で150%の力を出してきた
――選手側の感想や意見も聞かせてください。実際に日台戦に参加してみて、率直な感想をお願いします。

YamatoN 熱がすごかったですね。ファンの歓声や試合中の盛り上がりから、1段高いものを直に感じることができて、『Overwatch』部門のモチベーションにもつながりました。僕らは負けはしたんですけど、試合後にサインを求められたり、アクションをいっぱい起こしてもらえて。

――正直な話、勝てると思いましたか?

YamatoN 純粋な実力だけを見れば、勝率は高いと思っていました。ただ、エキシビションマッチとはいえ、台湾代表・日本代表という国を背負った戦いじゃないですか。そうなったときに、彼らはより強くなって出てきたんです。僕らはいつもの練習で蓄えた力を100%出し切るつもりで試合に臨んだんですけど、彼らは150%の力を発揮してきた。それが大きな違いだと思います。

――そういう状況(国や地域の代表というプレッシャー)への慣れみたいなものがあったのでしょうか?

YamatoN オフライン大会への出場経験がないメンバーもいました。試合中に修正していきましたけど、向こうはさらに強くなっていたというのもあって。

江尻 独特の空気や熱狂ってあると思います。メンバーにSPYGEAという『スペシャルフォース』の元プロプレイヤーがいるんですけど、大舞台の経験が豊富な彼でさえ「頭が真っ白になった。歓声がすごすぎてテンパった」と言ってましたから。

YamatoN SPYGEAだけじゃなくて、ほかのメンバーも少なからずそうなっていたと思います。これまでの大会では感じたことのないレベルの盛り上がりでしたね。

――それを受けて、自分たちの中で変わったことはありますか?

YamatoN 日台戦のときはまだ煮詰まってない部分もありましたが、本番で十全な力を出すことを、前よりも深く考えるようになりました。もっと細かく、ひとつひとつ丁寧に準備をする。
 それと、精神力。国を背負って戦うことになったとき、150%の力を出せるように、ふだんから声掛けを多くしてモチベーションを高めることを意識するようになりました。本番でさらに力を出すための心の準備は大切なのかもな、と。それは練習の成果にも表れていて、前は勝てなかった海外トップレベルのプレイヤーにも徐々に勝てるようになってきています。

――精神的な負荷や緊張が、技術面にもいい影響を及ぼしているわけですね。

YamatoN あらゆる面でプラスにつながりました。

――台湾のチームと戦ってみて、日本との差や違いは感じましたか?

YamatoN 大きな違いがありました。欧米は『Overwatch』の研究が進んでいて、それを先導する形でプロリーグも行われています。僕らは日台戦の前まで、欧米のシーンを参考に練習していたんです。台湾チームは外の研究よりも自分たちで考えて動いている部分があって、そこが戦いにくかった点ですね。意表をつかれたというか、予想もつかない動きに翻弄されてゲームが長引いて負けてしまいました。
 日台戦後は欧米のトップシーンを見ながらも、自分たちで意味を理解しながら丁寧にやることを心がけました。そこから勝率は上がってきています。いいフィードバックを得られたので、台湾チームには感謝していますね。

――正式にリリースされて間もないですし、戦いかたも固まっていません。強いものを学べば強くなれるという単純な話ではないわけですね。違う強さもある。

YamatoN 主流を追っていたら大きな落とし穴があった感じです。

――少し軽い話をしましょうか。台湾で女の子のファンはできましたか?

YamatoN 急に変えてきましたね。えーっと、女性のお客さんも多かったのは間違いないです。

江尻 いや、もう、ほんとに(なぜか小声で)女の子多いんです。いちばん最初に女の子から単独で写真を撮ってくださいって言われたのはSPYGEAなんですよ。「なんだよ、単品で指名きたぞ」ってみんなで詰め寄りました。それなのに試合でテンパりやがって(笑)。

一同 笑

――『スペシャルフォース』のプロプレイヤー時代から人気があったみたいですし。

YamatoN いまでもSPYGEAという名前は台湾で轟いてますよ。

江尻 だからこそ、彼にゲームを続けてもらった甲斐があります。過去の経験がほかのタイトルでも活きるって、すごくいいなと思います。ゲームに真剣に取り組む気持ちは財産なんですよ。

――台湾で「あのSPYGEAが『Overwatch』やってるらしいぜ」って話が広がったらうれしいですよね。SPYGEA選手とは知り合ってから長いので、そんなことになったら泣いちゃうと思います。

●オーディエンスの純粋な熱狂
――江尻さんは現地で見て何を感じ取りましたか?

江尻 人口は日本のほうが多いのに、台湾のほうが大きく見えました。市場も、何もかもが。初めての『Overwatch』公式イベントなので、ふつうは「どうやって盛り上がればいいの? どこで歓声を上げればいいの?」ってなると思うじゃないですか。でもね、違うんですよ。
 選手の誰かがULT(ULTIMATE ABILITY。いわゆる必殺技)を使う準備ができると、観客がざわざわするんです。「来るぞ来るぞ来るぞ来るぞ~!」と。技が決まるとドッカーン! 「うおおおおお~!」ですから。失敗すると「あー、惜しいー!」みたいな雰囲気で。

――野球で言うと、「満塁で4番バッターに回った」みたいな状況ですよね。それでホームランが飛び出したらテンションが一気に爆発する。

江尻 試合の観戦の仕方を感覚で理解しているんだと感じます。

――それと、素直なんですかね。日本人は周囲に同調しようとして、人が声を出しているかどうかを気にしちゃいますから。

江尻 しかも、どちらの選手がULTを使っても歓声が上がるんですよ。多少は声の大きさに差はありますけど。そういう空気を体験して、コミュニティーを広げるだけじゃくて、試合を観戦する側もレベルが上がらないと、ショービジネスとしては厳しいんだろうなと感じます。作られた盛り上がりじゃなくて、自然に発生しないと。これは僕たち1チームが何とかできる問題ではありません。日本の競技制ゲームシーンは、いろいろなセクションにおいてまだまだ発展途上。海外の様子を見るたびに、危機を感じます。

――野球やサッカーみたいに、観客が自然な反応をすると「根付いたんだな」と思えますね。僕は業界内にはいい試合やショー的な演出があれば観客はついてくる、盛り上がると考えている人が多すぎると感じています。それは少し見立てが甘い。そこで満足してしまったら、別の手を打たなくなってしまいます。

江尻 お客さんがいいプレイを見て歓声を上げるのは、ゲームというものを自分のなかで別のものに昇華しているから、だと思うんです。あらゆるスポーツやショーと同じですね。わざわざ会場に足を運んで、応援や観戦自体を楽しむ。昔に比べたらそうとう進歩したと思いますが、「○○したら拍手!」みたいに説明しているうちは、まだまだですよね。自然に拍手や声援が出てきてほしい。
 「入場無料だから見に行こう」じゃなくて、チケット代を払って見に行く感覚も大事ですね。日本はゲームにしてもネットにしても基本無料の考えかたが多いからなのか、「僕たちをどうやって楽しませてくれるの?」みたいな調子でイベントに臨むんですよね。そうじゃなくて、自分たちでお金を払ったんだったら、自分たちでどう楽しむかなんですよ、本来は。
 お客様感覚の上から目線で、少しでも自分の好みから外れたら「何だよつまんねーな」ではなく、「せっかくお金を払ったんだから積極的に楽しむ! このチームを応援する! 盛り上がるぜ!」のほうがおもしろいと思うんですよ。こういう文化の違いはイベント運営の大きな足かせになり得ますね。

――なるほど、たしかに。

江尻 オーディエンスに気持ちよく応援してもらうのは、あらゆる業界の課題ですよね。音楽もそうだしスポーツもそう。そういう業界と比べても、まだまだゲームシーンは発展途上。お客さんがお金を払って、主催者側に透明な収益構造があって、そのうえでイベントを行う。ひとつのエンターテイメントして成り立つには、スポンサーを付けましたとか、大会で勝ちましたとか、そんなところで調子に乗っていてはいけない。
 僕たちは海外でお客さんの熱気に触れました。自発的にファン活動をしてくれる人が日本でも増えてきたら、僕たちも海外の経験をみなさんに還元していきたい。いまはとにかく、選手はストレートな熱気や熱狂に触れるべきです。

――そのために現時点でやれること、やりたいことはありますか?

江尻 いまは大きなビジネスとして考えるよりも、楽しみながら草の根的に広げていく段階なのかなと思います。大きな花火を打ち上げようとしても、まだ日本ではバックを得るのが難しいのではないでしょうか。結局、自滅しちゃうというか。無理やり盛り上がっているように見せたって、人は付いてきません。ゲームを愛している人に愛されないようでは、興行として成り立たないじゃないですか。
 ですので、まずは日本の市場とコミュニティーにマッチした人材育成が大切。まずは自分で楽しめる大会を開いたりして、有志で集まったスタッフにもノウハウを伝えつつ、いろんな方に協力していただいて。

――江尻さんが大会を主催するということですか?

江尻 そうですね。まずは僕自身でスタートしたほうがいいのかなとも思っています。東京ゲームショウ2015のなかで『Dota2』と『Counter-Strike: Global Offensive』のイベントをやったんですけど、それの『Dota2』の大会が最初の規模的にはちょうどいいかな。もうね、すごく楽しかったんですよ。規模は小さいんですけど、楽しくて楽しくてしょうがなくて。

――じゃあ、僕も個人で協賛しますよ。

江尻 あ、いいですか。ぜひぜひ。選手たちは真剣にプレイして、実況と解説もすばらしかった。決して大規模なイベントではありませんでしたが、あの空間は僕のなかで大きく感じました。参加者も観客も一体感があって、うまく盛り上がれるイベントにできたんじゃないかと思います。
 大会やイベントは“いろいろな目線で物事を見られて、ゲームに理解があって、ゲームが好きな人”が主催するべきだと思いますが、そんなに多くはないですよね、きっと。僕としては、まずは利益抜きにして、あのシーンを選手に経験させて、しっかり継続する必要があると感じました。
 まずはもう一度『Dota2』でやりたいですね。規模はミニマムなんですけど、賛同してくれる人と協力して、ちゃんと情報も出して、メディアの皆さんもお呼びして、試合をきちんと見せて、主催者側もゲームと空気感を楽しむ。そして、選手には自分のプレイで人をドカンと沸かせる雰囲気にふれてほしい。

――主催者側がゲームを楽しむ、ゲームを愛する。ユーザーはそういうところに敏感だと思います。少なくとも僕は愛情のない人に適当にやられると腹が立ちます。きれいごとかもしれませんが、主催者にはゲーム好きであってほしいですよ、やっぱり。ここ最近だと、任天堂さんの『スプラトゥーン』のイベントとか、みんな楽しそうでよかったですよね。

江尻 車で全国各地を回ったりとかですよね。競技性ゲームのプレイヤー層の多くは10代後半から20代ですけど、低年齢へのアプローチも大事です。仮に20代のプレイヤーが増えたとしても、その下が減ったら意味がありません。そこはどのパブリッシャーも気にかけているでしょうけどね。タイトルによっては難しいにしても、若い世代にきちんとしたゲームシーンを見せたいですよ。

――個人的には『スプラトゥーン』で対戦ゲームの楽しさに触れた若い子が『Overwatch』あたりに興味を示してくれるとうれしい。キャラクターゲームとしても魅力的なので。

江尻 その子たちがもう少し大きくなったときの準備をしていきましょうよ。何度も言いますけど、まずは主催者が楽しめる大会を開いて、有志の皆さんにイベント運営のノウハウと興奮を伝えていく。種まきは積極的にやるべきです。
 台湾に行って海外のシーンに直接触れて、日本との違いが鮮明に見えてきたんですよ。自分の中では答えが出始めています。いまのままではどうしようもないな、と。

――「これからはeスポーツだ!」という感じで、少し前から声が大きくなってきた人たちは、海外の真似をしたがる印象があります。日本と海外は土壌が違うし、市場も競技人口も育ちきっていない。大きな大会を開催したい気持ちはわかりますが、草の根的にファンを増やす活動にも着目してほしい気持ちはあります。

江尻 たしかに、いまの空気をビジネスにつなげたい人たちっていますよね。ちょっと生々しい話になっちゃいますけど、僕たちの名前を使われることが増えているんですよ。

――どういうことでしょう?

江尻 僕たちが大会に出ると注目してもらえるから出てほしい、と頼まれるんです。知名度や実力を評価していただけるのはうれしいんですけど、僕たちへのメリットも考えていただかないと、う~ん・・・と。
 僕たちが参加する→世間に注目される→だからうちの大会は優良イベントです→(大会スポンサー企業に対して)もっと支援をお願いします、ってことだと思うんですよ。営業の材料になってるのに、僕らには何も降りてこない。さすがにそれは協力しにくいです。すべてに「出ます!」とは言えないですから。

――選手や周囲のファンの意識にも影響しそうな話ですね。

江尻 DeToNatorはタレント集団ではありません。ゲームをやるだけでちやほやされる状況は当たり前ではないし、大会に出て賞金を得るのがプロプレイヤーの本分です。これこそが絶対的な王道。いまはスポンサーのみなさまのサポートのおかげで何とか食べていけていますが、あくまで投資していただいているだけ。腕を磨いて大会に挑んで、ちゃんと回収する必要があります。こういった事情を選手も理解しなければいけません。

――第三者の立場から見ても、もやもやする状況だなと感じます。

江尻 初めてこういう話に出くわしたとき、ちょっとよくない流れだなと感じました。多少は協力したい気持ちはありますけど、これが続くとお付き合いは厳しいなぁと思っちゃいますよ。
 僕はどこにも属したくないんです。何らかの集団や枠組みって日本国内ではいいかもしれないけど、一歩世界に出たら何の効力も持ちません。DeToNatorは純粋に広く活動できるチームでありたいんです。いまの日本でeスポーツを活用しようと大人たちが動いているビジネススタイルと、僕らがやろうとしているスタイルはちょっと違うんですよ。理解していただいている方からは「サポートするからどんどん海外に行きなさい」とうれしいお言葉をいただいています。一方では、全然ゲームを知らない人が僕たちをただの道具として使い、何の見返りも用意せずに協力を求めてくる。それは悲しいですね。

――やっぱりゲームシーンの成熟度は台湾と比べちゃいますか?

江尻 いま思い返しても負けたのは残念ですけど、得たものも大きかったと思います。台湾では選手がサインを求められたり声援も大きかったりで、すごくシーンが進んでいるように感じます。
 でも、台湾でも親御さんからするとゲームはあまりよろしくないらしいんですよ。ゲーム会社に勤めるのは賛成だけど、プロゲーマーを目指すのは親からすると少し疑問があるというか。この感覚は日本とそれほど変わらないという話も聞きます。ゲームのイメージをよくしようと、台湾でも多くの人が苦心している最中なんです。

――ということは、「ゲームは子どもが遊ぶものというイメージが根強いから、日本ではeスポーツは流行らない」というのは理由にならないのかもしれませんね。

江尻 そうですよね。事実、同じような状況にあって、しかも日本より人口が少ない台湾であれだけ流行っているんですから。政府に関わりのある方からそれを聞いて、さすがに僕もびっくりしました。じつは台湾でもまだ国としてeスポーツを認めるかどうか議論中だと。一方が推進しようとしても、もう一方が待ったをかける。まだそれくらいの状況なんですよ。だからこそ実績が必要です。たとえば日本のチームが来て国際交流をして、お互いに盛り上がって、さらに人材育成もする。これらは間違いなくプラスの面ですよね。そういうところも含めて、僕たちはやっていくべきなんですよ、いま。

――本当に日本と大差ない状況なんですね。おもしろい。

江尻 向こうの方も、日本の苦労を理解しているみたいでしたよ。「日本もたいへんですよね。こっちでもそうなんですよ」みたいに。

――台湾は世界的なPCハード系企業が多いですし、政府としてもPC関連を強化したいんだろうな、と考えられますね。

江尻 そう言えば昨年12月頃に、台湾や中華圏ですっごい有名なジェイ・チョウというアーティストが『LoL』のチーム(Taipei Assassins)を買収したんですよ。これが強烈なインパクトを与えたみたいで。彼がアピールすることによって、イメージが少しずつ好転している。
 日本で言えば「キムタクがeスポーツに参入した」みたいな感じですかね。アメリカではスポーツ選手のシャキール・オニールやアレックス・ロドリゲスがeスポーツに投資しています。人気が確立できてきた中でこういう話題が出てくると、2段ロケット的に盛り上がるからいいんですよね。いまの日本だと「eスポーツ普及のアイデアがない。じゃあ、つぎは芸能人を使おう」みたいな感じになるような気がします。一時的にはバズるでしょうけど、その熱が持続するかと言うと、ちょっと違う。

――eスポーツとかゲームの普及って、きっと見えないところで大人がたくさん動いているじゃないですか。有名芸能人を使った施策もあるんでしょうけど、タイミングを間違えず、丁寧にやってほしいです。

江尻 無難にまとめましたね。この辺は怖い部分もあるので、別の話をしましょうか(笑)。

●日本のコミュニティーを強くするためにやるべきこと
江尻 いま全体的な話をすると、どうしても台湾がよかったという話になってしまいますね。このままでは日本のeスポーツシーンはまずい。
 僕としては、大きな花火を打ち上げるより、コミュニティーベースで発達させるのが早いように感じています。企業さんが先導するするよりも、ユーザーが自分たちで盛り上がれるような支援をするほうが大切なんじゃないかなと。たとえばユーザーが「イベントをやりたい」と言ったら機材を貸し出したりとか。これをやってるのが松井さん(※5)なんですよね。僕はあれが大事だと思っていて。

(※5:Red Bull 5Gのプロジェクトアドバイザーなどを務める株式会社グルーブシンク代表取締役 松井悠氏のこと)

――企業側は中~長期的に見てほしいですよね。先々のことを見通して投資するのが難しいのは分かりますけど。単純に、そういう活動をしていたらイメージアップにもつながると思うのですが。

江尻 熱意のある若者にスキルアップの機会を与えることにもつながりますよ。大学のサークルで大会を運営するとか。ゲームが好きで行動力のあるスタッフの人材育成もやらないと。強い選手を育てることだけに意識を向けるのは危険です。選手を支えるコミュニティーも同時に育てるという観点でやっていかないと、この先が怖いと思います。

――自分たちでイベントやりたいと考える子たちって、2~3年前は多かった気がしませんか? 僕は少なくとも関東圏の学生とはけっこう接してましたよ。

江尻 多かったですねー。

――あの頃はオープンスースとハイスペックPCがあってイベントを開催しやすいネットカフェがいまより多くて。彼らが学校を卒業した後も、次代の若者には育ってほしいものですが。

江尻 いい意味で泥臭く、コミュニティーのイベントをやりたいという人は増えてほしいですね。まだまだ日本はこれから。育成が必要なポジションは多いですよ。支える立場の人たちがきちんとやっていけば、つぎの世代が出てくる可能性はゼロではない。
 いまの僕たちのポジションは、育成も含めてやることをやっていかないと続かないんです。「スポンサーをつけてチームを運営します」だけでは先がない。すでにビジネスとして成立している海外だったら通用するのかもしれませんけどね。十分な資金とチームを用意して、その輪に入ればいいだけですから。日本はやるべきことがまだまだ多いんですよ。選手にしっかり自覚させなきゃいけないし、コミュニティーも強くしたいし、人材育成も必要だし。
 正直に言いますと、ゲームにそれほど興味がない、理解がないのにeスポーツに関わろうとしている人は圧倒的に多いと見ています。そういう人がチームやイベントの運営側に回ると非常にまずい。

――極論を言えば、ゲームに愛がなくても資金さえあれば参入可能ですもんね。

江尻 ものの良し悪しは別として、そっちの声が大きくなってしまったら、僕たちが地道にやってきたことは意味がなかったと言われてしまうわけです。

――その怖さもわかります。そういう人たちはゲームを知らないからこそお金を使って強引に事を進めるでしょうから。そして、もともとゲームに注目しているわけではない大衆ほど、目立っている部分を正義だと考えるでしょう。「悪貨は良貨を駆逐する」みたいな状況ですね。

江尻 それは怖いですよ。ゲームを知らない人たちが、僕たちが大好きな場所を利用して、失敗したら「やっぱりゲームはダメだったな」って勝手にゲームのせいにする。僕たちがどれだけ「やりかたが間違ってますよ」と横から助言しても、ゲームを知らない人たちの声が大きくなったら、真剣に取り組んでいる人の声が黙殺されかねません。世間は「あの人(ゲームをよく知らない著名な実業家など)があれだけやったのに、やっぱりダメなのか」と思ってしまう。

――勝手に参入して、勝手に失敗して、勝手に評判を下げる。真剣にやっている人からしたら、もらい事故みたいなものですよね。

江尻 失敗をタイトルのせいにしちゃうんですよ。「あのゲームは盛り上がってないから」とか。

――「自分たちが盛り上げてやるぜ」くらいの気概を見せてほしいところです。

江尻 本当にそうですよ。やりかたをちゃんと考えないとダメなんだよと。ゲームを本当に愛している人の声を、少しずつ大きくしていきたいですよね。
 基本的な考えかたがしっかりしていないのに大企業をスポンサーにつけたところで、それは張子の虎といっしょです。プロになった瞬間に、責任は大きくなり、取るべき行動すべてが変わるので、それを理解している選手も増やさないといけません。2015年、2016年はeスポーツ元年だと言われてワーッと盛り上がってますけど、まだ危機感のほうが大きいです。日々、布団に隠れて震えてますよ。「どうしよう、YamatoN」って(笑)。

――たしかに、今後のキーマンは(『Overwatch』部門をまとめる)YamatoN選手かもしれません。下手したら江尻さんより重要な立場かも。

江尻 彼も人生をゲームにコミットした数少ないひとりですから。やっぱり覚悟を決められる人間は少ないですよ。こういうプレイヤーを、何とかしてつぎのステージに連れて行きたい。まだまだ世界規模は難しいですけどね。
「日本のビジネスは難しい」ってよく言われるじゃないですか。冗談抜きで本当にそうなんです。反応がわかりにくい、気難しい、変なところで炎上する。よくも悪くも奥ゆかしい文化があるからなのか、何を考えているのかをつかみにくい。

――ゲームに限らず、あらゆる業界で聞く話です。

江尻 どんな仕事をされている方でも、たいてい「海外に目を向けなきゃね」と言いますよね。DeToNatorが海外に目を向けたのも、生き残っていくためです。グローバルのスキルを持って戦わないと。日本だけでeスポーツなんて無理でしょうから。

――あらゆるスポーツがそうですね。

江尻 日本でお山の大将になってしまうのも怖いですしね。それよりも大きなマーケットに飛び込むほうがいい。日本で少しばかり有名だからって、海外では誰も振り向いてくれない。そこは実力主義。ちゃんと成績を残して、認められた瞬間にステージが変わります。ふつうにやっていたら、そのステージには到達できません。
 そこまで行ったら、今度は“国を背負ったら強くなる”という感覚を身に着けてほしい。韓国も台湾も、ハンパないんです。正直、いまの日本のチームは、ナショナリズムを背負ったときの強さが足りないんだろうな感じます。期待を緊張や不安要素ではなくプラスに変える力が備わらないと、世界一には届かないんだろうな、と。それは経験ともまた違うんですよね。メンタルのいちばん根底にある部分なんだと思います。

――あらゆるスポーツや対戦競技は全部そこに行き着くような気がします。「ゲームはスポーツだ」と世間にアピールしたい人は、そういう部分も見ておかないと。江尻さんから見て、プロやトップを目指す人は何に気をつけたらいいと思いますか?

江尻 すぐに実践できるものとしては、チャットやTwitterなどで騒がないこと。Twitterでストレスに感じていることやマイナスの発言する人って、自分で精神面をコントロールできていないんですよ。誰かにかまってほしくて、同情やRT、いいねを見て、心を落ち着かせている。それはプロとしてかっこ悪いし、みっともない。メンタルが弱い証拠です。
 どういう状況であろうと、自分がやるべきことを、黙々と粛々とやる。プロはそういうメンタルを持つべきだと思います。
 いまはいろいろな事情で選手を引退しましたけど、DeToNatorの『AVA』護衛部門に在籍していたRauru.(らうる)なんてすごかったですね。彼は1ミリとしてブレなかったんですよ。オフライン大会では悟空タイプです。「こんなに強いやつと戦えるなんて、おらワクワクすっぞ」みたいな。あれこそが世界で戦えるメンタルだと思います。

――実際、すごかったですよね。あまりにも強くて“らうる神”なんて言われてましたし。

江尻 彼のメンタリティーは、いままで見てきた選手の中でいちばんですね。ゲームが大好きで、コミュニケーションもきちんと取れるし、集中力もすごい。余計なことも言わない。
 Twitterで問題発言をしたり、チャットで暴言を吐くようなプロプレイヤーがいたとしたら、どんなに強くても、プロとしての第一歩すら歩めてないと思いますよ。

――プロだったら騒ぐな、どっしり構えていろ、と。応援する側としても、プロはかっこよくあってほしいものです。

江尻 いろいろな期待を背負い、背負ったぶんだけ強くなる。そして、プレイで証明する。それこそがプロの在るべき姿ですよ。

●スポーツ系ゲームとしての『Overwatch』の可能性
――最後は『Overwatch』の話で締めましょう。いろいろなFPSの強豪も『Overwatch』をプレイしているようですが、日本のほかのプレイヤーで、強いと感じることはありますか?

YamatoN 正直なところ、まだもの足りないです(インタビューは2016年6月上旬に実施)。そもそも日本にスポーツ系FPSが根付いていないからなんだと思います。『AVA』に『サドンアタック』、『クロスファイア』といろいろありますけど、これらは“リアル系FPS”に分類されるゲームです。『Overwatch』をリアル系FPSの延長として考えている人が多いのではないでしょうか。

――ゲームのタイプが違うわけですね。

YamatoN 極論を言うと『Overwatch』ってFPSじゃないんですよ。FPSの皮をかぶった新ジャンルのゲームだと、僕は思っています。だから、練習方法もだいぶ違いますし、その違いに気づいている人がまだ少ない。日本にはスポーツ系ゲームの文化から来たチームもあったりして、そういうところは強いんです。スポーツ系FPSの経験者は順応が早いと思います。

――リアル系とスポーツ系、どういう部分が違うのでしょうか?

YamatoN ゲーム性はかなり違いますね。たとえば、リアル系FPSは銃を撃つと一瞬で着弾するので偏差射撃を意識することは少ないですけど、スポーツ系は相手が移動する先を狙ったりします。ほかにも、縦軸の動きが多かったり。ゲームで言うと『Quake』や『Team Fortress 2』あたりが有名です。
『Overwatch』は役割によって必要な素養が大きく異なります。アタッカーはスポーツ系ゲームのプレイヤーなら順応が早いでしょうし、サポートやゲームメイカーはMOBAのように全体を見通す素養が重要です。ここで味方を強化すればゲームが有利に運ぶとか、そういう感覚ですね。
 キャラクターを切り替えるタイミングや地形の特性を理解するのも大事です。敵を撃っているだけではうまくなれないゲームですから、撃ち合いが苦手でFPSを敬遠していた人にもオススメしたいですね。

――たとえば、これまでFPSをガチでやったことがなくて、『Overwatch』から本気でやりたいと思った人がいたとします。『Overwatch』のプレイ感覚に順応したら、大会上位に食い込む可能性はあると思いますか?

YamatoN ありえると思います。もしかしたら、リアル系FPSの感覚が残っている人よりも伸び代があるかもしれません。海外のプロチームを見てみると、『モータルコンバット』出身のプロもいますから。

――格闘ゲーム出身って、あまり聞かない話ですね。

YamatoN 珍しいですよね。ほかにも『LoL』、『Dota2』、『Heroes of the Storm』でEUトップレベルだったプレイヤーがいて、FPSのプロとして活動した経験はないみたいですが、その人もすごいんですよ。

江尻 『Overwatch』の懐の深さを感じますよね。いろんなジャンルの人が集まっていて、おもしろい状況です。FPSの枠に収まらないゲームなんだろうなぁ、と。

――では、本気でトップを狙うわけじゃなく、楽しく遊びたい人はどういう部分に気をつけたらいいと思いますか?

YamatoN 楽しく遊びたいのなら、まずはなるべく味方といっしょに行動することを意識すれば苦労なく戦えると思います。
 対戦ゲームなので、とにかく敵を倒そうとする人が多いですけど、それだけが『Overwatch』の楽しみではありません。サポート系のキャラクターを選んで味方を回復させたときなんかも楽しく感じられるように作られています。自分が回復させている味方が敵を倒すと、音でそれが分かるとか。細かい演出が工夫されていて、また回復させようという気にさせてくれるんです。
 マーシーというサポートキャラはULTで味方を蘇生させられるんですけど、キメたときの演出も気持ちいいですし。食わず嫌いをせずに、ひとまずサポートも遊んでみてほしいです。

――まさにMMORPGにおけるヒーラーですね。重要だけど、なかなか人気が出ないという。

YamatoN ある程度はキャラクターごとの定石もあります。それはうちのStylishNoobの動画を見てもらえれば、だいたい分かると思います。僕もニコニコ動画に上げたりしているので、そちらもよろしくお願いします(笑)。


※StylishNoob選手のYouTubeチャンネルはこちら


江尻 サポート推しは僕も賛成です。年齢的なものなのかな、サポートが楽しいんですよ。あんまり派手なのはちょっと目が疲れちゃって(笑)。サポートで味方を回復してるのがちょうどいい。

YamatoN 落ち着いて遊びたいんだったらタンクもオススメです。

江尻 ラインハルトでシールドを張って味方を守るのは達成感ありますね。

YamatoN そう言えば『Overwatch』はチャットが荒れない印象があります。マナーがいい人が多い。暴言を吐かれたことがないような気がします。

江尻 自分以外の成績(キル数など)が見られないからじゃない?

YamatoN そうかもしれません。“Play of the Game”、いわゆるMVPだけ試合後の発表があります。賞賛の部分だけが目立つ作りですからね。

――悪い部分が目立たないのはいいですよね。味方から怒られることを気にする人は多いですから。

江尻 他社さんの配信番組にお邪魔したとき、YamatoNがずっとマーシーで回復役やってたんですよ。4戦中3回Play of the Gameに選ばれて、全部蘇生シーンだったんです。メーカー的にもうれしかったんじゃないでしょうか。対戦ゲームで、味方を守るほうがスポットライトを浴びるって、いいことだと思います。YamatoNは最初からサポート一筋でしたね。

YamatoN 自分の適正はサポート向きだろうなと思って。あと、サポートは敬遠されると思ったので、いちばん流行らせてやりたいという気持ちもありました。

江尻 うわー、かっこいい。いまのはカットですかね。

――江尻さんが言ったことにしましょうか。

YamatoN えぇっ!(笑)

江尻 YamatoNに持っていかれるのは悔しいので僕もいい話をしますね。これからは海外での活動も増えていきますので、公に出せるようになったら順次みなさんにご報告します。
 いまの目標は“BlizzCon”です。まだ『Overwatch』の大会がBlizzConで開催されると発表があったわけではありませんが、今後はその可能性も高いと見ています。BlizzConは多くのゲーマーが注目する大型イベントですから、日本チームが出場するとなれば「日本はすげえぞ」と世界にアピールできるでしょう。
 BlizzConで公式大会が開かれたとして、そこに日本代表として参加するにはどういうルートを辿ればいいのか、まだわかりません。予選に参加するのか、強いチームに招待枠があるのか。どちらにしても結果を残さないといけません。一目置かれる立場にステップアップできるように、強さは絶対的に必要です。そこはひたすら突き詰めていきます。

――ありがとうございました。書けない話もたくさんありましたが!

江尻 尺が足りなかったら、『Overwatch』のキャラ紹介を入れるのはどうでしょうか? 僕らとしては『Overwatch』の魅力を広くアピールできたら嬉しいので(笑)。

 インタビューを終えてから記事を公開するまでのあいだにも、DeToNatorには大きな動きが相次いだ。

 6月12日開催のファン交流イベントに出席し、6月20日と7月10日にJCG主催の国内大会で優勝。7月11日には『Alliance of Valiant Arms』を牽引してきた4選手の『Overwatch』参戦でファンを沸かせた後は、7月14日にアフリカTV主催の日韓エキシビションマッチに出場(会場は韓国)。世界で戦うためには、このスピード感に慣れるのも重要だ。

 日韓エキシビションマッチではeスポーツ先進国の韓国でも最強クラスのチーム・MiGと対戦し、残念ながら敗北。世界の壁の高さを痛感する結果に終わったものの、試合後にYamatoN選手は前向きなコメントをTweetしている。

 インタビューの中で、江尻氏はしきりに“コミュニティーイベントの重要さ”を強調していた。まずはみんなでゲームを楽しみ、「自然に応援したくなる気持ちを持ってもらうこと」が大切だという。仲間意識やナショナリズムは観る者の感情を刺激する。その感情の波に乗ることこそが、YamatoN選手が言う「150%の力を発揮」につながるのだろう。

 エモーショナルなつながりが選手を強くするのだとしたら、精神性を大切にする日本人らしくておもしろい話だ。150%の力を出したDeToNatorが世界に名を轟かせるのを期待したい。

(一部写真提供:DeToNator)

最終更新:7月19日(火)17時2分

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TEDカンファレンスのプレゼンテーション動画

斬首動画が何百万回も再生されてしまう理由
昔は街の広場で、現代はYouTubeで。歴史を通じ、公開処刑には必ず人だかりがつきものでした。人が処刑というものを、恐ろしく不快に感じながらも、つい気になって見てしまうのはなぜか。フランシス・ラーソンが人間と公開処刑の歴史、中でも斬首刑に焦点を当てて解説したこのトークは、気分の良い内容ばかりではありませんが、同時に興味をそそること間違いないでしょう。