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松本カルビー会長、「既得権を無くさないと、会社はよくならない」

ニュースソクラ 7/19(火) 18:00配信

「わが経営」を語る 松本晃カルビー会長兼CEO(3)

――無駄を生む「悪しき文化」を無くそうとしていますね。(聞き手は森一夫)

 日本の会社全体に共通する問題です。働き方をみても、意味の無い仕事を朝から晩までやっている。それを一つひとつ改めています。例えば会議が多いので、会議なんて止めてしまえとね。会議をしなければ、余計な書類も作らなくて済む。それより「外に出て仕事をして来い」です。

 悪しき文化は今日言って、明日治るものではありません。今でも会議が多い。みんなで集まって、がたがたやっているのが一番楽だからです。社内の会議は何のプレッシャーもない。特に上の人間は楽ができる。最近、部下の時間を奪っているのは上司だぞと言っています。

 私が明日9時に集まれと声をかけたら、みんな仕方なく来ますよ。いつまでにこの書類を出せと言えば、そちらを優先してやるでしょう。結局、私が社員の時間を奪うことになる。それで無駄な残業をするわけです。

――女性の活用も進めていますね。女性管理職を増やしたくても適任者がいないという企業が多いですが。

 既得権者がみな抵抗するんですよ。日本人の男性で、いい大学を出たシニアの連中が、自分たちの地位を手放すわけがないでしょう。かつ男だけの世界は、互いに気心が知れていて楽ですからね。

 そんな既得権は無くさないと、会社はよくなりません。女性を使わなかったら損じゃないですか。女性はみな優秀です。男と同じです。女性に適任者がいないと言うのは、ベンチにとどめてバットを振らせもしないで、あいつはできないと言っているようなものです。打席に立たせれば打ちますよ。

――難しい理由はいくらでも言えますね。

 日本では、総論賛成でも、各論はいろいろ屁理屈を付けてやらないでしょう。最初、私は能力が同じならば女性を登用すると言っていたのですが、これだと誰もやらない。今は、このポジションは女性にしろで、おしまい。あとは君たちで誰が一番ふさわしいか決めろと言うだけで、誰にしろと私は言いません。

 やらせてみて駄目なら代えればいいんです。会社の組織はピラミッドですから、人事はトーナメントです。上に行くほどポジションが減るので、起用されてできなければ一つ落ちるしかない。頑張れば、また上がれます。

 大相撲では、大関も2場所負け越したら下に落ちるでしょ。幕下までいっても奮起して上がってくればいいのです。横綱は落ちないけど引退です。ほかはみんな上がったり下がったりです。カルビーでは、社長と会長は駄目なら辞めるだけです。

 大相撲には年功序列も終身雇用もない。勝ったやつが上がり、負けたやつが落ちる。単純明快です。大相撲が300年も前からやっていることを、なぜ会社はできないのか。こう考えれば、女性など多様な人材の生かし方なんて、実に簡単でしょう。

――外国人も積極的に採用しますか。

 進めますが、私はローカライゼーションの方が基本的には好きですけどね。中国に行ったら中国人が、米国では米国人が、日本は日本人が、という具合にそれぞれ、その国の人がやればいいと思っています。

 海外の現地法人の社長を、日本人にさせるのは好きではありません。しかし取締役の方々は、育てるために人を出せと言いますので、割合、従っています。一理ありますからね。

 ただし私は今の日本人をあまり認めていないんです。勉強しないから、優秀じゃないし、昔ほど一生懸命、努力しない。なおかつコストが高い。休んでばかりいるからです。ところが長時間労働をする。しかもだらだらやっている。

 そこでカルビーでは在宅勤務を始めました。家から往復3時間もかけて会社に来て、パソコンを開けて、朝から晩まで何かやっている。それなら家でやった方がいい。格好はパジャマ姿でも何でも構わない。私は結果しか求めません。

 在宅勤務をさせたらさぼると言うのなら、君ら会社に来てさぼっているじゃないかと言いたいですね。家でさぼるのと一緒でしょ。最終的に結果が出ますから、さぼれば、そのうちばれますよ。

 成果はおおかた数値化してデジタルに評価するようにしています。数字は正直です。屁理屈より数字の方がよくわかる。仕事の質も工夫次第で計れます。相対的かもしれないし感覚的な要素も入るかもしれないが、とにかく数値化してみることです。

――松本さんは、企業は世のため人のために事業を営み、かつ儲けるためにあるという考え方ですね。伊藤忠商事とジョンソン・エンド・ジョンソンで仕事をされてきた結果ですか。

 世のため人のためというのはベースであって、必要条件なのです。これが無いということはあり得ません。一方の儲けることと、2つは並んでいるのではなくて、2段重ねになっています。世のため人のためがベースにあって、儲けられるのです。

 儲け方は伊藤忠で学びました。今は違いますが、私がいたころは倫理観を脇に置いても儲けて来いという時代でした。当時、商社は口銭商売が中心で、メーカーと買い手の間に入って、メーカーから口銭をもらうわけです。それが2%、3%、ひどい場合は0.何%です。

 このため運賃や金利に少し利益を上乗せするなど、あの手この手でわずかでも儲けないと食えませんでした。私もずいぶん稼ぎましたが、口銭商売はあかんなとなって、商社のビジネスは変わりました。口先だけの世のため人のためでは結局、利益が出ない。
 ジョンソン・エンド・ジョンソンでは、お客のためにやれば必ず儲かるということを学びました。
(次号に続く)

■森 一夫(経済ジャーナリスト、元日経新聞論説副主幹)
1950年東京都生まれ。72年早稲田大学政経学部卒。日本経済新聞社入社、産業部、日経BP社日経ビジネス副編集長、編集委員兼論説委員、コロンビア大学東アジア研究所、日本経済経営研究所客員研究員、特別編集委員兼論説委員を歴任。著書に「日本の経営」(日経文庫)、「中村邦夫『幸之助神話』を壊した男」(日経ビジネス人文庫)など。

最終更新:7/19(火) 18:00

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