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『チェーザレ~破壊の創造者~』『チーズスイートホーム』を手がけた編集者がみるフランス漫画市場【Japan Expo 2016レポート】

SENSORS 7/19(火) 16:30配信

フランスはマンガ市場の大きさが日本に次いで世界第2位の国だ。その国で一番大きなマンガ・アニメに関連したイベントがジャパンエキスポである。クール・ジャパンの象徴として日本でもしばしば取り上げられてきた。フランスで、そしてヨーロッパで最大のイベントであるがゆえに、ジャパンエキスポを見ればその年のヨーロッパにおける日本のコンテンツの動向が浮かび上がってくる。今年の漫画市場はどんな特徴があるのか、『チェーザレ~破壊の創造者~』『チーズスイートホーム』などを手がけた講談社の北本かおり氏が現地で取材した様子をお届けする。

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2016年はフランス漫画界の転換点!?

2016年7月7日。折しも七夕のこの日、ヨーロッパ中のマンガとアニメのファンは約1年ぶりの再会の日を迎えた。彼らが集う逢瀬の場所は、パリの玄関口シャルル・ド・ゴール空港からわずか1駅、市内に近づいた通称ヴィルパント、Parc des expositionsの会場だ。夏休みを迎える若者たちは、駅から長い行列をなして会場へと足を運ぶ。その週の始めまで肌寒いと感じる初夏のような気温だったのが嘘みたいに、会場は開始直後から熱気に包まれた。それはいつもと変わらない、もはや見慣れたジャパンエキスポの景色のように見えた。だが、一歩中に踏み入れて感じたのは、2016年という年は後に振り返った時に、フランスのマンガ界の歴史にとって大きな転換点を意味することになるかもしれない、ということだった。

渡仏前に聞いていたのは、今年、フランスのマンガ市場に久しぶりのメガヒットが出たことだった。KUROKAWA社が出版する『ワンパンマン』初版6万5000部が発売直後に完売し重版がかかった。そのことは今年前半最大のニュースとしてすでに日本にも伝わっていた。2013年に『進撃の巨人』がヨーロッパ中に旋風を巻き起こして以来のメガヒットの誕生である。
だが、『ワンパンマン』のヒットそのものは私にとってはあまり大きな驚きはなかった。なぜなら、それは確かに大きなビジネス的成功だが、フランスの漫画市場を根本的に変える出来事ではなかったからだ。例えば、フランス読者たちが日本のギャグをそのまま受け入れるほどに成熟し、日本独特の笑いのコンテクストを理解することは、過去に『聖☆おにいさん』などの極めて日本的笑いのセンスを持った作品のヒットですでに証明されていた。つまり今回のヒットは、かつて『NANA』がフランスに少女マンガを認知させ、『神の雫』や『チェーザレ~破壊の創造者~』が一般の大人向けの漫画の存在を周知し、『チーズスイートホーム』が小学生以下のこどもたちとその親にマンガを楽しむ機会を与えたような、フランスにおける新しいジャンルの確立ではなかった。

若い才能が切磋琢磨するフランス出版業界はいつも新しい挑戦に満ちている。果たして彼らがこのまま大人しく確立したジャンルに留まり、新作の売り上げ争いだけに終始するだろうか。今年のフランス市場の本当のトレンドは何なのか。その問いへの答えは、やはりジャパンエキスポの会場にあった。

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最終更新:7/19(火) 16:30

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