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MRJ、8月に米国試験へ 三菱航空機・森本社長

Aviation Wire 7月20日(水)0時25分配信

 7月11日からロンドン近郊で開かれたファンボロー航空ショー。2年に一度開かれる世界最大規模の航空ショーで、三菱航空機が開発中のリージョナルジェット機「MRJ」は、スウェーデンのリース会社ロックトンとMRJを最大20機発注する契約締結に向け、基本合意(LOI)に至った。

 受注に至れば、欧州初の契約獲得となるMRJ。メーカー標準座席数が88席のMRJ90と、76席のMRJ70の2機種で構成され、エンジンはいずれも低燃費や低騒音を特長とする、米プラット・アンド・ホイットニー(P&W)製のギヤード・ターボファン・エンジン「PurePower PW1200G」を採用する。全日本空輸(ANA/NH)などを傘下に持つANAホールディングス(9202)への量産初号機の引き渡しは、2018年中頃を目指す。

 MRJはこれまでに6社から確定発注223機、オプション160機、購入権24機の最大407機の受注を獲得。2月には米国の航空機リース会社エアロリースと最大20機(確定発注10機、オプション10機)の契約に向けてLOIを締結したが、現時点で確定発注に至っていない。

 一方、MRJと同じエンジンを搭載するリージョナル機大手エンブラエルの新型機「E190-E2」は、予定を大幅に前倒しして5月23日に初飛行。MRJと同サイズの機体であるE190-E2は、同じく2018年の納入開始を目指す。

 競争が激化する中、三菱航空機はMRJの飛行試験初号機(登録番号JA21MJ)を使い、今夏には米ワシントン州モーゼスレイクで飛行試験を始める計画だ。この「今夏」とはいつを指し、飛行試験機4機はいつまでに米国へ持ち込むのか、なぜロックトンとはLOIにとどまったのか──。今後の課題や現状について、ファンボローで三菱航空機の森本浩通社長に聞いた。

── エンブラエルのE2はMRJと同じGTFエンジンを採用した。MRJの優位性をアピールしてきた中で、どういう部分が相手に評価されたと感じたか。

森本社長:工場に来ていただき、現場や機体を見ていただいたのがすごく大きかったなと思う。お客様も、「これならいいものが出来る」と感じていただいたようだ。

 ものづくり、品質の良さはお褒めの言葉をいただいている。カスタマーサポートなど、我々の未知数のところをカバーして、ここまで来ているのではないか。

── 前回2014年のファンボロー航空ショーでは、米イースタン航空が最大40機発注する覚書(MOU)を締結し、ミャンマーのエア・マンダレイ(LMT/6T)が最大10機確定発注する契約を結んだ。今回はLOIだが、確定発注につなげる上で重要視している点は。

森本社長:今回LOIでの発表となったのは、契約書に落とし込む時に法律的にひっかかることが結構あり、そこに時間を取られているからだ。これは本質的な問題ではなく、時間が解決するとみている。

 エアロリースは契約に時間が掛かっているが、99%は出来上がっている。通常では起こりえないような、可能性がないようなことまで契約書に落とし込んでいるからだ。

 特にリース会社の場合、リースするエアラインが決まっているわけではないので、仮定の条件について想像の中での議論が起こる。リース会社との契約は初めてだったので、あまり考えていなかったことまでも議論になり、時間がかかっているというのが実情だ。

── 飛行試験機を米国のモーゼスレイクへ持っていくが、「今夏」とはいつまでを指すのか。

森本社長:受け取る方の解釈にお任せしているのだが……。8月中に最初の1機は持っていきたい。秋と言っていたのを早めて夏にしたので、また秋になっては意味がない。

 フェリー(回送)で持っていく際、最短距離となる北回りを考えている。それが秋からだんだん気象条件が厳しくなる。そうすると夏が一番良い。

 日本からモーゼスレイクへ持っていく際、途中で寄港しなければならないので、今は手続きを進めている。1回目はどうしても時間が掛かってしまう。(米国での飛行試験に使う)4機とも年内に持っていかなければならない。

── 量産初号機のデリバリー時期はよほどのことがなければ堅持できるか。

森本社長:モーゼスレイクでどれだけ飛ばせるかは、正直やってみないとわからないこともある。全然楽観視はしていない。

 ただ、モーゼスレイクは環境が非常に良いので、順調にいけば飛行回数を稼げると思う。あとは飛行試験の結果が思わしくない時に回数を増やさなければならないので、実際に飛ばし始めないとわからない部分もある。

── MRJ70も開発がスタートしているが、進捗はどうか。

森本社長:部品の製作も始まっている。70席クラスは我々しかいない状況になってきており、間違いなくやる。70席から90席クラスでは世界2強になれると思うし、ならなければならない。

── MRJ100Xの手応えはどうか。

森本社長:まだ具体的な検討までは至ってない。競合のボンバルディアやエンブラエルが100席以上を手掛けているが、お客様のニーズがあるにせよ、開発しても売れなければ意味がない。慎重にやりたい。

── 次に向けて何が大切だと感じているか。

森本社長:通信環境などソフト面の機体価値向上、商品価値向上だ。大型機だけではなく、我々のような小さな近距離の機体でさえ、Wi-Fiが当たり前みたいな世界になってきている。益々この分野は日進月歩で変わってくるだろう。

 操縦系もオートパイロットや、天候条件が悪くてもオートでいける機能がバージョンアップしてきている。その辺もどんどん変えていかないと、競争力が落ちてくるのではと気になっている。

Tadayuki YOSHIKAWA

最終更新:7月20日(水)0時27分

Aviation Wire