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米国での「参院選報道」に見る日本の特殊性

ZUU online 7月20日(水)7時10分配信

与党が大勝した参院選、米国をはじめとした海外メディアの報道は2つの視点に分かれている。

1つ目は、改憲勢力が3分の2超となったことで、改憲についての是非やアジアの地政学に及ぼすリスクについて。

もう1つは、アベノミクスが必ずしもうまくいっていない状況で、なぜ日本は安定与党への圧倒的支持が続いているのかという疑問についてだ。

■新華社が「改憲が地域の安定に危険をもたらす」と警告

改憲について各国メディアは、改憲への環境が整ったこと、今後国民投票による憲法改正の可能性があることを大きく報じている。

特に中国やアジアのメディアは、安倍首相は日本を「戦争できる国」にしようとしている、といった論調で不快感をあらわにしており、米国もかねてから改憲についてネガティブな意見が多い。

ロイター通信によると、中国・新華社は改憲が地域の安定に危険をもたらすと警告する論説記事を掲載したということで、「軍国主義の記憶を色濃く残している中国との緊張が増すだろう」としている。

■NYTは安倍首相を批判

たとえば米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)は参院選よりさかのぼる5月26日、「日本のリーダーは広島の平和主義の教訓をほとんど活かしていない」(Japan's Leader Has Little Use for Hiroshima's Lessons of Pacifism)と報じた。約2年前の2014年5月8日の同紙社説では、国民投票を経ずして解釈によって平和主義憲法を曲解するのであれば、民主主義をないがしろにする行為であると断罪しており、日本の平和主義と憲法改正の矛盾について指摘している。

米国大統領選では、共和党のトランプ候補が「米国には巨額の資金を日本の防衛に費やす余裕はない。日韓の核兵器の保有はあり得る」と、アジアの安全保障は各国で責任を取るべきとの自論を展開している。メディアはこれをまともにとらえてはいないものの、仮にトランプ氏が大統領になれば、憲法改正が日本の安全保障体制、ひいてはアジアの地政学的バランス、見方を大きく変える可能性をはらんでいる。

■WSJが日本で政治への不満が高まらない理由を分析

次に海外メディアが注目しているのは、日本において与党への圧倒的支持が続いている理由である。

米国の大統領選におけるトランプ氏の躍進、英国のEU離脱の国民投票に見るように、世界的には格差への不満やポピュリズムが台頭している一方で、日本の参院選では逆の現象が起きたのである。海外メディアは、アベノミクスがまともに成果を出しているとはいえないのに、国民は不満でなく現状維持への圧倒的支持を示した点を、興味深く報じている。

米ウォール・ストリート・ジャーナル紙は政治の現状への不満が日本では高まらない理由を分析している。

労働市場が閉鎖的で外国人が少ないことや企業トップの報酬水準が欧米ほど高くないことを挙げた。単一民族で外国人労働者をほぼ受け入れない鎖国的政策、平和と秩序、同質を好む国民性は、グローバル競争にさらされて国を強くするよりは、内向きで当面は平和であることを志向しているのかもしれない。

さかのぼる2015年3月には、NYタイムズ東京支局長のマーティン・ファクラー氏は週刊現代に掲載された記事で、世論に反対意見が少ない理由について「国の根幹が変わるのに、メディアが報じない異常」とメディアが政権批判をしない危険性について警鐘を鳴らしている。

昨今、自民党がメディアに対して反論・抗議するという例が増えてきており、政府に批判的な意見を言ったキャスターの降板など、「言論統制では?」との声も聞かれる。

こうした海外メディアの報道を見ると、日本の特殊性が浮彫りになる。

しかし果たして、この特殊性は経済的には吉と出るのか、凶と出るのであろうか。参院選後の株式市場では、政権の安定性や経済対策への期待から、参院選後に株価は上昇しているが、この状況には危機感を禁じ得ない。

金融と財政で経済を支えるのは限界に来ており、痛みを伴う構造改革をしなければ日本が生き残る道がないことを、国民は気づくべきではないであろうか。(成井りゆ、米国在住のライター)

最終更新:7月20日(水)7時10分

ZUU online