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10兆円の資金流入?米国REITは注目投資先

ZUU online 7月20日(水)8時10分配信

「世界的に不安定な経済状況にもかかわらず、米国は力強い成長を見せている。中でも不動産セクターは力強く、注目度は上がっている」――。コーヘン&スティアーズ・キャピタル・マネージメント (COHEN&STEERS )のバイス・プレジデント、トーマス・ボジャリアン氏は7月14日、同社日本支社で開かれた講演会でそう語った。

■堅調な米国経済、注目は不動産

相次ぐテロ、Brexitなど株式市場を揺るがす話題に事欠かなかった2016年上半期。その中で、米国経済は過去と比べて、足元の景気サイクルはしっかりした成長だった。バブルでもなく、そうかと言って鈍化しているわけでもない。雇用統計も順調に伸びているなど堅調だ。

中でも、不動産市場はバランスが取れており、緩やかな成長が続くと見ている。強い需要がある一方、供給は大きく増えず限られているため、成長は急激なものにはならない、と同氏は語る。

不動産市場の全セクターに共通しているのが、不動産所有者にとっての2つのオプションの動向だ。

強い需要の中で、1つは稼働率をあげられること、もう1つは賃料をあげられることだ。どちらも引き上げの圧力をかけやすい状況なので、今後2~3年はキャッシュフローの安定的な成長が見込めるという。もちろん、物件によってリース期間は異なるが、同様の傾向が見られるという。

■稼働率9割……キャッシュフローも分配金も増加?

同氏いわく、稼働率にばらつきはあるが、通常7割ほどのところが9割前後まで上がっている。米国REITは基本的に米国内の物件に投資しているので、海外の影響は受けにくい。海外の影響があるものを挙げるならば、為替によって観光客の増減がある「ホテル」セクターだが、それでも稼働率は9割近い。

最も稼働率が高いのは物流施設だ。次いでアパートや高級モールである。95~97%ほどと高い。対局にあるのが、郊外のオフィスである。こちらも88%ほどと決して低くはないが、全体があまりに高い稼働率なので、低く感じるのである。この背景には、日本と同じく米国でも起こっている、オフィスの中心地一極集中がある。中心地の人気が高いのは、若者の都会への憧れが色濃く反映されているからだ。

同氏は、今後数年で年平均6~8%のキャッシュフローの増加が起こると、強く確信しているという。その理由は賃料と稼働率が上昇している一方で、REIT発行にかかる経費などが増えていないからだ。そのため、キャッシュフローの増加が起こるという。この現象は、投資家への分配に直結するというから見逃せない。REITでは、課税収入の大半を分配しなくてはならないため、キャッシュフローの上昇と同じくらい分配も増えるというわけだ。

■低金利が後押しするバランスシートの健全化

このほか、不動産と切っても切り離せないのが、金利の動向である。雇用統計の結果は良かったが、2016年内の利上げの可能性は低いと同氏は見ている。周辺諸国が低金利だという状況を考えても、早くて2017年前半と見ている。低金利の継続は、バランスシートを健全化する後押しとなるだろう。低金利はローンの借換えを後押しするからである。

金利が低い環境の中で、投資家が高利回りの投資対象を求める動きが、顕著になっている。投資家の間で人気なのがヘルスケアとネットリースだ。ヘルスケアは、高い成長は見込めないものの、高インカムが見込めるところが人気である。ネットリースは、郊外の単独小売店舗などを単体で営業している店に投資をする。日本ではあまり馴染みがないが、米国ではポピュラーなセクターで、リース期間が長いのが特徴だ。

これらのセクターは、資金は投入されているものの、純資産倍率が非常に高い水準にあるので、バリューがあるとは言いづらいと見ているそうだ。同社が注目するのはアパート・集合住宅など、純資産よりもディスカウントされて取引されているセクターだ。標準以上のバリューを持ちながら、標準以下の価格で取引されているという。

■不動産セクター独立で、中長期で10兆円の資金流入?

今後不動産市場に大きな影響をあたえるものとして、グローバル産業分類区分の変更がある。今まで、S&Pの中で2番目に大きな割合を占めていた金融セクターから、不動産が独立し11番目のセクターとして独立するのだ。

この変更によって、時価総額100兆円の米国REITに、10兆円規模の資金流入が起こるのではないかと同社では見ている。資産クラスに特化せずに、株や債券などにも投資するゼネラリスト会社では、総じてREITへの投資比率は低かった。だが、分類区分の変更で、投資比率の引き上げに迫られるため、中長期ながら資金の流入が見込めるのだ。

金融セクターに引っ張られ、不動産もボラティリティが大きいものだとみなされてきたが、認識が変わる可能性がある。不動産セクターの登場によって、上場したいと考える会社は増えるだろうともボジャリアン氏は語った。

注目が集まり、既に高い水準にある米国REIT。だが、中長期で投資をするには面白いセクターと言えるだろう。ポートフォリオを考えつつ、少し加えてみてもいいかもしれない。(ZUU online編集部)

最終更新:7月20日(水)8時10分

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