ここから本文です

アンモニア水素ステーション実現へ、アンモニアからFCV用水素製造に成功

スマートジャパン 7月20日(水)7時10分配信

 今回の共同開発は、内閣府総合科学技術・イノベーション会議の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)「エネルギーキャリア」の委託研究課題「アンモニア水素ステーション基盤技術」において、共同開発を進めたものである。

【水素利活用に関して必要になる技術】

 水素は、燃焼時に水しかでないクリーンなエネルギー源である他、燃焼によるエネルギー量も大きく、エネルギーの貯蓄源として期待を集めている。しかし、常温では気体である水素を、効率的に貯蔵・輸送するには技術的な革新が必要となる。そのため、SIPエネルギーキャリアでは、水素の有効な活用手法の開発を目指し、「再生可能エネルギー由来水素製造技術」「アンモニア水素ステーション技術」「有機ハイドライド水素ステーション技術」「アンモニア直接利用燃料電池技術開発」「アンモニア直接利用タービン発電技術」の5つの技術開発と事業化に向けた実証を推進している。

●水素エネルギーキャリアとして期待を集めるアンモニア

 今回新たにアンモニアから燃料電池自動車(FCV)用水素の生成技術を開発したのはこの「アンモニア水素ステーション技術」を研究開発する研究チームである。広島大学 先進機能物質研究センター教授の小島由継氏を研究責任者とし、昭和電工、産業技術総合研究所、豊田自動織機、大陽日酸などが参加する。

 アンモニアは、NH3の化学式で示されるように、1分子中に多くの水素を含むため水素エネルギーキャリアとして期待を集めている物質である。しかし、アンモニア水素ステーション実現のためには、「高活性高耐久性アンモニア分解触媒」「残存アンモニア濃度を0.1ppm以下にでき、再生が容易なアンモニア除去材料」「水素純度99.97%を達成できる精製技術」の3つの技術的な課題を抱えていた。

 今回の研究開発では、世界トップクラスのアンモニア分解用ルテニウム系触媒、新たなアンモニア除去材料、効率的な水素精製に関する技術を確立。これらの技術を用いたアンモニア分解装置、残存アンモニア除去装置、水素精製装置を実証システムの10分の1スケールで開発した。これらの装置を組み合わせることで、世界で初めてアンモニアを原料としたFCV用水素燃料製造が可能となったという。

●具体的な研究開発の内容

 具体的な開発の内容は以下の通りである。

 産業技術総合研究所 触媒化学融合研究センターでは、汎用のステンレス材料の使用が期待される550度以下において、アンモニアを化学平衡濃度(理論値)まで分解する世界トップレベルの高性能ルテニウム系触媒(Ru/MgO)を開発した。550度の環境において、従来のルテニウム系触媒では残存アンモニア濃度が約7万ppmだったが、今回開発したルテニウム系触媒では1000ppm以下までアンモニアを分解できることを発見した。

 昭和電工と豊田自動織機では、この触媒を用いたアンモニア分解装置を実証システムの10分の1スケールで開発した(図)。アンモニアガスを1Nm3/hの流量でアンモニア分解装置に供給し、550度でアンモニア濃度1000ppm以下の分解ガス(水素75%、窒素25%)が2Nm3/hの流量で得られることを証明した。

 広島大学 先進機能物質研究センターでは、加熱再生が容易で、0.1ppm以下の濃度までアンモニアを除去できる無機系除去材料を世界に先駆けて見つけた。従来の硫酸水素アンモニウム(NH4HSO4)系除去材料を用いた場合、体積当たりのアンモニア除去量が少なく、可熱再生が困難であったものが、今回開発した無機系除去材料を利用することにより、除去量を3倍に増加。加熱再生も可能になった。これにより、無機系除去材料は繰り返し利用できることも分かった。

 大陽日酸では、窒素などの不純物を除去する水素精製装置を開発した。アンモニアを除去した水素、窒素の混合ガスには高濃度の窒素や微量不純物が含まれる。このガスを2Nm3/hの流量で水素精製装置に送り、窒素を1ppm以下まで、その他不純物もppm(100万分の1単位)からppb(10億分の1単位)まで同時に一段で除去する技術を確立。世界で初めてアンモニア由来水素からFCV用水素燃料の国際規格をクリアする水素が製造できる事を明らかにした。

 現在、アンモニア水素ステーションチームでは、昭和電工 川崎事業所において10Nm3/hスケールのシステム実証を行うべく、プロセス検討を行っている。今回の成功は、アンモニアをFCV用水素燃料へ利用するための技術の大きな進展であり、将来アンモニアを利用するFCV用水素ステーションの実現につながることが期待されている。

最終更新:7月20日(水)7時10分

スマートジャパン