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中国「二人っ子政策」の現実 第二子をもうけるのはアラフォーばかり?

ZUU online 7月20日(水)11時10分配信

中国経済、景気の現状はどうなのだろうか。工業は在庫過多、ゾンビ企業の延命など問題ばかりだ。ただし街中では、あまり不況風は感じない。

先ごろ発表された夏季(第二四半期)全国34大中都市の「雇用需給および人材供給調査」レポートによると、第一四半期に比べ、おしなべて賃金は上昇している。一部業種は需給がひっ迫してきた。小売り総額は堅調、不動産市場は好調、人民元安により輸出にも追い風が吹いてきた。内需化、第三次産業化への構造調整は、それなりに進展している印象だ。

ただし今後の雇用情勢には、新しい視点から注意を払う必要がある。それは「ニ人っ子政策」の影響だ。

■二孩政策(ニ人っ子政策)とは

中国の代名詞だった一人っ子政策は2011年から徐々に緩和され、2015年10月の共産党全体会議で正式に廃止された。ただし子供の数は自由、となったわけではなく、二人までとされた。この点、国民生活への国家介入の状況は変わっていない。

13年3月には、衛生部と計画人口計画生育員会の一部が合併し、国家衛生計画生育委員会に衣替えした。悪名高い部署を分割し生存させることで、新政策の体制内準備を整えた。

施行後は各地方が独自の政策を打ち出している。例えば中国における産前産後休暇規定は98日間となっているが、上海市や福建省など多くの地方政府が、これに30日~80日間の延長を加えている。安心して第二子を育ててもらおうという意図である。

■日系企業人気、その本当の理由

日系企業は就職先として、ホワイトカラー、ブルーカラーの両方から高い人気を誇っている。その大きな理由は「法令遵守」にある。特に女性求職者には、理想的な就職先だ。法律に則った権利の主張ならほぼ通る。地方政府規定も例外ではない。

例えば某市では、一人っ子政策時代、望まぬ妊娠をしてしまった女性従業員は1週間の有給休暇を与えるという規定があった。日系企業はそれもしっかり守った。人情にも厚く、日系企業ほど安心して出産できる会社はない。こうして日系企業は、優秀な女性従業員を囲い込んでいたとも言える。

その日系企業も、このところ第二子妊娠のラッシュに見舞われている。30代後半から40代前半の安全出産リミットが迫っている年代が多く、社会全体の傾向と同じである。

■「もう少し男を採用し、粘り強く鍛えておくべきだった」

山東省・臨沂市にあるほとんど女性という50人規模の日系バッグ工場では、現在従業員の4分の1が妊娠している。工場長も自らその仲間入りした。ここ1~2年の大幅な戦力ダウンは避けられない。

また同省の青島市は、貿易港をかかえる食料品、衣料品の輸出基地だ。そのため海外から検査機関がいくつも進出し、中国の検査機関と提携し、各製品の品質検査を行っている。世界最大手のSGS(スイス)の研究所は、800人規模という大がかりなものだ。

例えば洗濯テストの場合、洗濯機25台と世界中の洗剤を備え、世界各国の検査基準に対応できる。日系の公的検査機関は、大部分日本向けと一部中国国内向けで、SGSほど大きくはない。それでも各機関50人から150人くらいの陣容を保持している。

そしてそのほとんどは白衣をまとう技術系検査員である。日系検査機関の日本人幹部に聞くと、90%以上女性で、理科系大卒のいわゆる「リケジョ」ばかりだ。理科系大卒男子は働きが悪く、ほとんど使えなかったため、ここ数年採用していない。そしてこれらの機関でも世間一般と同様、アラフォー従業員の第二子妊娠が目立ってきた。彼女らは班長クラスで組織の中核を担っている。長期離脱は大きなマイナスだ。第一子で産休した若い頃とは影響力がまったく違う。

某幹部からは、「こんなことならもう少し男を採用し、粘り強く鍛えておくべきだった」という嘆き節も聞こえた。昨年の一人っ子政策廃止時には、想定していなかった事態である。

■当局との決別宣言か?

その山東省は2013年6月、省の人民代表大会の会議において、「二胎間隔規定」を取り消している。これは第二子の申請が許可される場合でも、第一子を25歳までに生んだ場合、30歳以降になるまで最低5年以上間隔を空けないとだめという規定だ。

1988年に制定されている。政策目標としては、当時の認識では出産最適齢期は23~30歳であり、こういう規定を作っておけば大方はあきらめ、一人っ子政策の補強となるに違いないということだったのではないか。江蘇省などは2003年に廃止したが、四川省や北京ではまだ形を変えて残っているという。

山東省政府は、こうした規定の解除、二人っ子政策の発動により、2020年までの5年間で127万人の第二子が出生すると見積もっている。2016年~2018年、第二子ブームの到来も想定内だ。

ただし第二子をもうけようとしたのは、かつて当局から「もはや出産の心配なし」と位置付けられた30歳以上、それもアラフォーが多かった。「自分の人生は自分で決める、当局はもう引っ込んでくれ」という独立宣言のようにもとれる。

こうした状況下、各社どう人員のやり繰りをつけるか苦闘中である。男たちにとっては、思いがけないチャンスが巡ってきたと言えないこともない。また女たちにとって産休延長はプラスだけとも限らない。ともかく当面の間、アラフォー女性の引き起こしつつある労働市場の混乱から目を離せない。(高野悠介、現地在住の貿易コンサルタント)

最終更新:7月20日(水)11時10分

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