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東京五輪を“VR席”で見る時代がくる? VRが変える新しいテレビのカタチとは

ITmedia ビジネスオンライン 7月20日(水)8時25分配信

 VR(バーチャル・リアリティ)が盛り上がりを見せている――。今年4月にバンダイナムコがVRエンタテイメント研究施設「VR ZONE Project i Can」をお台場シティに開設した。全部で7コンテンツあり、1コンテンツ(プレイ時間は10分程度)で700~1000円ほどするが、体験するには3週間以上も前から予約しなければならないほどの人気ぶりである。他にも、10月にソニーが発売する予定のVRHMD(VRヘッドマウントディスプレイ)「PlayStation VR」の予約殺到し、品切れ状態が続いているなど、いまVRに関する話題が絶えない。

【『チュートの真夜中にやりたい事』】

 それは、ゲームコンテンツだけではない。ECサイトのキュレーションメディアを運営するベンチャー企業KABUKIは、VR上で買い物ができる「VRショッピング」を7月中に立ち上げる。ECサイト上で気になった商品を、VRで実物サイズなどを確かめながら買い物ができるそうだ。また、フジテレビはグリーとVR領域で業務提携し、番組や広告イベントにおけるVRコンテンツ制作を強化していくと発表している。

 そうした中、スマホアプリのゲームコンテンツを制作するコロプラが今年5月、「VRテレビ局」360channelを設立した。

 同社は日本初のVR映像だけに特化したVRテレビ局として、人気タレント出演のバラエティや、各自治体と協力した観光チャンネル、ANAの工場見学ツアーなどを360度視点で視聴(無料)できる動画を配信している。現在は7チャンネル23コンテンツだが、年内にはコンテンツ数が倍になるという。

 近い将来、VRが今よりも普及したとき、映像コンテンツの楽しみ方はどのように変わっていくのだろうか――360channelが展開する「VRテレビ」の可能性について、同社でプロデューサーを務める中島健登氏から話を聞いた。

●VR専門テレビ局の可能性

 コロプラはもともと、日本企業の中でも先駆けてVR事業に取り組んできた。今ほど注目されていなかった2014年から、VR技術を取り入れたゲーム『the 射的!VR』『白猫VRプロジェクト』などをリリースした他、国内外のVR関連企業へ投資するファンドも今年1月に立ち上げている。

 そんな同社がいま熱くなっているのがVRの映像領域である。VRは今後、映像領域を中心に盛り上がっていくとして、ゲーム開発で培ってきたVRに関する知見を映像の方に生かべきと考えたそうだ。

 360channelのメンバーには、既存のテレビ番組を制作している人たちも加わっているそうだが、通常のテレビとどのような点で差別化を図っていくのだろうか。

 VRコンテンツ特有の強みについて中島氏は「VRは、その場にいるかのような臨場感において間違いなく従来のテレビに勝ります。その強みを生かしたコンテンツを追求し、量産していきます」と説明する。

 例えば、同社のコンテンツの1つ、お笑いコンビのチュートリアルが司会を務める『チュートの真夜中にやりたい事』では、トーク(収録)スタジオの中、あるいはVTRの中に自分がいるかのような体験ができる。スタジオでは芸能人(演者)に囲まれ、VTRではアイドルなどが自分に向かって話しかけてくる。他にも、飛行機が好きな人なら『ANAの工場見学体験』で、目の前で機体やエンジン、コックピットを見ることができるなど、“テレビの中にいる”臨場感を得ることができるわけだ。

 こうしたいわゆる体験型の視聴コンテンツはバラエティ番組と相性が良く、実際、『チュートの真夜中にやりたい事』と『ANAの工場見学体験』の視聴回数は、どのコンテンツよりも多い。

 ただ、中島氏は自社のVRコンテンツに自信を見せると同時に、まだまだ発展途上だとも語る。

 「まだまだ改良の余地はあります。クリエイター側が思う臨場感だけで作ってはダメで、ユーザーの体験(意見)を参考に視聴者の視点位置を工夫するなど、ユーザーと一緒に成長していく必要があると思っています。テレビ制作の知見あるスタッフともに研究を続けていきます」(中島)

●VR席で東京五輪を見る時代がくる

 あたかも自分がその場にいるような体験ができるVRにおいて、中島氏が最も期待を寄せているコンテンツが「スポーツ観戦」だ。

 実はいま、360channelにスポーツコンテンツはない。VRカメラの性質上、少し距離があるものを撮影すると画質が荒くなってしまうため、カメラの設置場所などを含めて研究を重ねる必要があるという。

 ただ、VRの強みである臨場感は、スポーツと最も親和性がある。例えば、ベンチにVRカメラを置けば、監督の視点で試合を観戦することも可能になるわけだ。野球など、スポーツの種類によっては審判にVRカメラを取り付けても面白いかもしれない。

 「スポーツコンテンツはポテンシャルが大きい分、研究を重ねて慎重に取り組んでいきたい。VRの生放送も数年で実現できるようになるので、五輪・パラリンピックをVRで見るような未来は十分にあり得る」(中島氏)

 実際、海外ではベンチャー企業が、NBAなどのスポーツ中継をVRで観戦する「VR席」を提供しており、売り上げも好調だという。日本でも、会場に足を運びたくても運べない人などが、東京五輪・パラリンピックをVR席で見るような時代がきてもおかしくはないだろう。

●人気が爆発するタイミングに備える

 一方、ビジネスとしてはまだまだこれからというのが現状。中島氏は「ネットのビジネスと同じで、ユーザーをある程度集めることができれば、課金や広告などの方法で収益を上げられる。ただ、とにかく今はユーザーを集める時期であり、マネタイズはその後の話」と話す。

 「今年は主要なHMDがようやく出そろうVR元年。端末の普及もこれからなので、黒字化は早くても2~3年後になるでしょう」(中島氏)

 VR市場が立ち上がってから、まだまだ日は浅い。しかし、市場は今後間違いなく盛り上がっていく。市場調査会社TrendForceの調査レポートによると、ハードウェア、ソフトウェアの両方を合計した世界のVR市場規模は2020年までに700億ドル規模に到達するという。

 人気が爆発する時期に備え、コンテンツも年内中には倍の量に増やしていくとしている。目指すのはVRテレビのリーディングカンパニー。

 「日本は米国と比べ、VRビジネスを展開する企業もまだまだ少ないです。しかし、日本には技術力があるので、一度盛り上がればすぐに米国を追い越せるでしょう。そのとき、リーディングカンパニーとして日本のVRビジネスを引っ張っていけるように準備していきます」(中島氏)

最終更新:7月20日(水)8時25分

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