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瀬戸が萩野を追い越すか…世界王者も日本では“2番手” 同い年2人の五輪金候補

デイリースポーツ 7月20日(水)6時59分配信

 8月5日に開幕するリオデジャネイロ五輪で、日本競泳界を引っ張る2人の金メダル候補が激突する。男子400メートル個人メドレーで13、15年世界選手権2連覇の瀬戸大也(22)=JSS毛呂山=は、同学年のライバルで12年ロンドン五輪銅メダリストの萩野公介(21)=東洋大=の背中を追って成長を遂げてきた。大舞台に強い瀬戸が、初の五輪で日本のエースから“金星”を奪い、同種目では初の日本勢による金、銀獲得を目指す。

 同い年のライバルによる“名勝負数え唄”は、世界最高峰のステージに舞台を移していた。バタフライ、背泳ぎ、平泳ぎ、自由形の順で4泳法を泳ぐ個人メドレー。過去に五輪の金メダルを獲得した日本選手はいない。たまたま同じ1994年に生まれた2人がこの夏、最高級の戦いを繰り広げる-。

 今季の世界ランク1位でリオでの金メダルが本命視される萩野に対し、瀬戸はニヤリと笑いながら話す。「(萩野)公介は完全に金メダル間違いなしの存在だと思うので、自分と公介との距離が(自身の)金メダルへの距離じゃないですかね」

 その背中は、はるか遠くにあった。小学3年時の2003年。瀬戸は全国大会で初めて萩野と対戦し、グングン差をつけられた。「年上の選手にも勝ってて、単純にすごいな」と思うと同時に、「いつか絶対勝ってやる」と心に誓った。以降も得意なバタフライではなく、同じ個人メドレーで出場を続けた。

 学童記録を次々と塗り替える“怪童”萩野に対し、瀬戸は同学年の選手の一人。そんな立ち位置が大きく変わったのが中学2年の夏だ。全国大会の400メートル個人メドレーで、瀬戸が中学新記録で初優勝。それは同時に、萩野が初めて同学年に敗れた瞬間だった。

 「すごく悔しかったけど、競い合える相手ができたのがうれしかった」。萩野はそう振り返る。初めて“ライバル”と呼べる存在ができた怪童は、それを契機にさらに自己記録を塗り替えていく。

 五輪という大舞台で先を行ったのもやはり萩野だった。瀬戸が代表権を逃した12年ロンドン五輪の400メートル個人メドレーで銅メダルを獲得。日本の男子高校生としては56年ぶりの表彰台で世間の注目を浴びた。

 瀬戸も負けてはいない。ロンドン五輪直後の国体で萩野を抑えて優勝。さらに翌年の世界選手権では、下馬評を覆して金メダルを獲得した。15年世界選手権でも右肘骨折で萩野が不在の中、連覇を達成。早々にリオ切符を獲得し、世界王者として初の五輪に臨むことになった。

 ただ、世界選手権2連覇という看板をもってしても「日本のエース」「金メダルの本命」は萩野だ。ベストタイムを見れば、萩野の4分7秒61に対して、瀬戸は4分8秒50。1秒近くの差がある。

 それでも“2番手”扱いの瀬戸が今年の夏を制する可能性は十分にある。日本代表の平井伯昌監督は「五輪は何が起こるかわからない舞台。タイムではなく、競泳は人間対人間の戦いなんですよ。何が何でもライバルに勝つという気持ちじゃないと金メダルは獲れない」と力を込める。

 想定外の結果を生むのは瀬戸の規格外の勝負強さだ。ここ一番の場面で爆発的な力を発揮するメンタルの強さは、五輪2大会連続平泳ぎ2冠の北島康介を育て上げた名伯楽の平井監督をして「瀬戸は北島に似ている部分がある」と言わしめる。

 自身の言葉で自らを鼓舞する有言実行タイプ。「(欠場の)公介の分まで絶対金メダルを取る」と公言した昨夏の世界選手権では、実は大会前に両かかとを痛めていた。200メートルバタフライで6位と絶不調だったが、最後の400メートル個人メドレーでは前半からスパートをかけて優勝。レース後に初めて足の状態(その後、昨年9月に手術)を告白し、「言い訳にしたくなかったので勝てて良かった」と言ってのけた。

 瀬戸の強さのもう一つの特徴が“夏男”だ。代表選考会を兼ねた4月の日本選手権では毎年のように低調。それでも、夏の大きな世界大会では結果を出す。「春はダメで夏にドカンっていくのが結構ある。ウエーブ(波)があるのがスタイルなのかな」と笑う。

 今年4月の日本選手権も200メートル個人メドレーで代表権を逃すなど散々な結果に終わった。しかし、これは“吉兆”なのかもしれない。「ダメな時があって、そこからヤバイと思って『よっしゃ頑張ろう』という跳ね返りが得意」と瀬戸。小学生時代から指導する梅原孝之コーチも「スイッチが入ると、ものすごい集中力を発揮する」と認める。

 勝負どころを逃さないのは、幼少期から折り紙付きだ。母・一美さんは「大也が集中したときはすごい」と振り返る。小学4年の時、投球のコントロールを競う「ストラックアウト」で小さな的を参加者の中で唯一ぶち抜き、大人たちの度肝を抜いた。ゴルフのパターでも「これを入れたらお小遣いを上げる」と言うと、その一回で見事に入れた。「一本にかける気持ちの持っていき方がすごいんです」と一美さんは笑う。

 今夏も大爆発の予兆はある。6月の記録会では、車の渋滞でレース10分前に会場に到着しながら100メートル平泳ぎで自己ベストを更新。その勢いで同バタフライ、背泳ぎ、自由形すべてで自己新記録をたたき出し、「自分が思う以上にきてる」と自信をみなぎらせた。

 現在は米フラッグスタッフの高地合宿で最終調整に入った。頂上決戦は8月6日。小学3年のあの日、あんなに遠かった萩野の背中をリオの地で抜き去る時が来た。

最終更新:7月20日(水)8時38分

デイリースポーツ