ここから本文です

新構造のグラフェン、優れた導電性・耐食性示す

EE Times Japan 7月20日(水)10時49分配信

■電気二重層キャパシター、エネルギー密度を2倍に

 東北大学多元物質科学研究所の西原洋知准教授及び京谷隆教授と、アリカンテ大学(スペイン)のベレンガー・ラウル博士らの研究グループは2016年7月、導電性と耐食性に優れた大表面積スポンジ状グラフェンの開発に成功したと発表した。微小な穴(細孔)を持つスポンジ状の材料である。この材料を電気二重層キャパシターの電極に適用したところ、従来に比べて最低2倍のエネルギー密度を達成することができたという。

【写真:従来材料との比較】

 研究グループが開発したのは、直径が数ナノメートル以下の微小な孔(穴)を取り囲む細孔壁が、主に単層グラフェンから成るメソ多孔体「グラフェンメソスポンジ(GMS)」である。開発に当たっては、市販されているアルミナナノ粒子を鋳型として、比較的結晶性の高い炭素多孔体(CMS)を合成し、熱処理を行った。

 CMSは、1800℃という高い温度でも多孔体構造の収縮はなく、高い品質の単層グラフェンを主成分とする炭素多孔体に転換できることが分かった。研究グループがGMSと名付けたこの材料は、細孔の大きさが約5.8nmで、メソ孔と呼ばれる微小な細孔をもつ発泡体のような構造だという。

 合成したGMSは、腐食の原因となるグラフェンの端がほとんど無い構造である。比表面積は1940m2/gを実現した。活性炭(1000~2600m2/g)と同様な比表面積を保ちつつ、カーボンブラックを上回る導電性と耐食性を達成した。このため、新材料は吸着剤や触媒担体、電極材料、導電助剤といった用途で期待されている。

 これまでの代表的な炭素材料は、黒鉛やカーボンブラック、活性炭などである。黒鉛は導電性と耐食性に優れているものの、比表面積はほぼゼロである。活性炭は比表面積が大きいものの、グラフェンの端が大量に存在するため、導電性と耐食性は低い。カーボンブラックは導電性や耐食性、比表面積が、いずれも黒鉛と活性炭の中間的な値を示す。これ以外にも多くの炭素材料が開発されてきたが、導電性、耐食性、比表面積などの材料特性はトレードオフの関係にあり、全ての項目で優れた特性を得ることが難しかったという。

■電気二重層キャパシターの電極材料として応用

 研究グループは、開発したGMSを電気二重層キャパシター(EDLC)の電極材料として応用した。EDLCのエネルギー密度(E)は、「E=(1/2)CV2」で求めることができる。Cは静電容量で、VはEDLCの作動電圧である。一般的に、EDLCの電極には活性炭が用いられている。比表面積が大きく、静電容量を大きくできるためだ。ところが、グラフェンの端を大量に含んでいるため、劣化しやすいという短所がある。このため、作動電圧は最大2.8Vにとどまっていた。

 これに対してGMSは、高い比表面積を有しながら、グラフェンの端がないため、大きな静電容量で作動電圧を約4Vまで高めることができるという。この結果、従来に比べて約2倍のエネルギー密度を達成した。また、固体高分子形燃料電池のPt(プラチナ)担体として、従来材料のカーボンブラックより長寿命化が可能になる。このため、燃料電池自動車への応用が期待できるとみている。

 GMSは、グラフェンと同様に柔軟性と強靭な引張強度を兼ね備えている。外力によってスポンジのように弾性変形する。その細孔サイズは、可逆的で0.7nm以下まで変形させることができるという。スポンジのように、外力によってナノサイズの細孔内部に取り入れる物質の量を調節することが可能である。このため、新たなエネルギー変換材料デバイスとしての応用が期待されている。

 なお、研究成果は2016年7月14日(ドイツ時間)に、「Advanced Functional Materials」誌でオンライン公開された。

最終更新:7月20日(水)10時49分

EE Times Japan