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東芝、3D NANDで世界獲るには「量産が課題」

EE Times Japan 7月20日(水)14時6分配信

■2018年度に売上高9500億円を

 東芝とウエスタンデジタルコーポ―レーション(以下、ウエスタンデジタル)は2016年7月、3次元構造のNAND型フラッシュメモリ(3D NAND)を製造する新製造棟「東芝四日市工場新第2製造棟(N-Y2)」(三重県四日市市)の完成イベントを開催した。

【写真:東芝の3D NAND生産計画はこちら】

 完成イベントの開催に伴い、四日市工場で記者会見を実施。東芝社長の綱川智氏や、ウエスタンデジタルCEOのSteve Milligan氏、東芝ストレージ&デバイスソリューション社長の成毛康雄氏らが登壇し、3D NANDに関する事業計画を説明した。

 綱川氏は冒頭で、「2016年度の事業計画説明会で発表した通り、注力事業への集中を徹底するとともに、財務基盤の改善を進めていく。その中で、エネルギー、社会インフラ、ストレージの3つの分野を強化する。ストレージ分野における最重要事項が、四日市工場で製造しているフラッシュメモリだ」と語る。

 東芝の2015年度のメモリ事業全体の売上高は8456億円(営業利益率13%)。2016年度は売上高7466億円に減少すると見込んでいるが、スマートフォンやSSDを中心に市場拡大により、2018年度に売上高9500億円(営業利益率10%以上)を目標に掲げる。

 300mmウエハーによるNANDフラッシュ製造を開始した2003年度から2015年度までの業績でみると、2008年度に起こったリーマンショックを除き、約10~30%の営業利益率で推移しているという。

■ビッグデータ・AIは、需要拡大の起爆剤

 新設したN-Y2は、3D NAND固有の製造工程を行う製造棟との位置付けで、2015年10月の一部建屋の完成を受けて、成膜、エッチングなどの装置を導入し、2016年3月から一部生産を始めている。既存の製造棟である第3、第4製造棟(Y3、Y4)でウエハー加工を行い、N-Y2で積層するといった連携生産を行うことで、投資額を削減している。

 また、2005年から開始しているクリーンルームの搬送システムの自動化を強化した。東芝の説明員は、「製品の運搬を行う搬送車は、3.5m/秒と高速化しているため生産の効率を高められるとともに、クリーン度を保つことができるメリットがある」と語る。

 300mmウエハー対応の製造棟では、4棟を統合した生産システムを採用。製造装置と検査装置を合わせて、1日当たり16億件のビッグデータが発生しているが、2016年からディープラーニングを活用したツールを導入し、生産性、歩留まり、信頼性向上に向けた分析、制御を進めている。

 例えば、検査画像を1日当たり数十万枚解析したことで得られる欠陥種類の分類や、製品歩留まりの分布から原因となった設備の特定自動化などが挙げられる。東芝は、「ビッグデータ・AI技術は、ストレージ需要拡大の起爆剤」としている。

■2018年度には生産量を約3倍へ

 成毛氏は、「グローバル市場で勝つには、技術開発と設備投資が必要だ」と強調する。経済の不透明感はあるが、財務基盤を重視しつつ、2018年まで8600億円をメモリ事業に投資予定とする。ウエスタンデジタルも2018年までに約50億米ドルを投資予定。つまり、2018年までに約1.4兆円を3D NANDに投じる。

 東芝は2016年2月に3D NAND製造用に四日市工場の敷地拡張、同年3月には総額3600億円を投資して新製造棟を建設すると発表している。新棟は土地造成を2016年度、2017年度に建設を開始予定。2018年度に稼働する予定だ。Y3、Y4、N-Y2と同様に、第5製造棟(Y5)と新棟で3D NANDの連携生産を行い、2018年度以降の需要拡大に対応する。

 新棟の建設に伴い、2018年度のフラッシュメモリ生産量(メモリ容量ベース)は、2015年度と比較して約3倍になると計画しているという。

■世界で勝つには「量産化に課題」

 両社は、3Dの技術開発にも注力する。2016年春には48層の3D NANDを発表しているが、同年上期中には64層まで積層数を増やした製品のサンプル出荷を始める予定。ナノインプリント技術による微細化や、成膜・エッチング加工などの高生産性設備の導入も進め、高集積度化とコスト競争力の強化を図る。成毛氏は「3D構造で、セル密度を向上した先には、1つの候補としてReRAM(抵抗変化メモリ)の開発を考えている」と語る。

 また、東芝の3D NANDが持つ強みとして「当社は技術開発の点で他社に負けていない。チャージトラップ方式の特性評価や、積層技術がどのように応力緩和すればいいかなど、開発レベルの要素技術は知見を積んでいる」(成毛氏)とする。一方で、3D NAND分野ではSamsung Electronicsが巨額な投資を行い、他社を先行している状況だ。

 成毛氏は、「当社は競合と比較して、量産化までの経験値が足りていない。他社には既に32層の経験があるが、当社にはない。そのため、48層を量産化する上で、思ってもいない装置のバラつきや、装置の組み合わせによる歩留まりロスが発生している。それらをどう対策するか学びながら、量産化を現在体感している状況だ。しかし、ベースとなる力は、2Dでサンディスクと多くの実績を積んできた。量産化までに時間はかかるかもしれないが、他社に追い付くことができると考えている」と語った。

■WD「パートナーを続けるべき企業」

 ウエスタンデジタルCEOのSteve Milligan氏は、SanDisk買収後の東芝との関係性について言及した。「両社は、半導体業界で最も成功したパートナーシップである。四日市工場の高い生産能力は、世界に誇るべきことである。今後も、共同開発によるイノベーションを続けることで、フラッシュメモリ市場の拡大、発展に貢献する」とした。

 また、東芝の不正会計問題については、「東芝が持つ技術力は非常に高いと考えている。多くの精査をした上で、パートナーを続けるべき企業と判断した」と語った。

【取材協力:ウエスタンデジタル】

最終更新:7月20日(水)14時6分

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