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改憲論議、参議院改革から始まるか

ニュースソクラ 7/20(水) 12:20配信

イタリアは上院改革で10月に国民投票

 「参議院改革」が、憲法改正の突破口になるかもしれない。与党圧勝が見えた参院選挙戦の終盤、BS番組に出演した高村正彦自民党副総裁が、合区を解消するための憲法改正にふれ「各党の合意が得られれば入り口になり得る」と語っている。

 鳥取と島根、徳島と高知の合区は、参院選挙区の1票の格差を最高裁に「違憲状態」とされた国会が、今回選挙から導入した苦肉の策だ。だが、評判が悪くて都道府県代表にせよ、という声が政界に根強い。

 また、2つの合区を経ても1票の最大格差は3倍強、最高裁の合憲基準の2倍未満をクリアできず、今回も弁護士グループが選挙無効訴訟を起こした。

 もし、参院を都道府県代表にするのなら「両議院は、全国民を代表する選挙された議員でこれを組織する」という憲法43条の書き換えが必要になる。

 参院が何を代表する院なのか、は古くて新しい問題だ。現行憲法が審議された70年前の帝国議会でも、憲法学者の佐々木惣一貴族院議員が「全国民を代表するという同じ任務を持つものが2つ必要か。参院には衆院と違う職責がなければならぬ」と指摘をしていた。

 参院改革を論じるなら、選挙制度にとどまらず、参院の職責・権限の見直しも不可避だ。「第2院」の参院だが、権限はほぼ衆院並み。多数派が衆院と同じなら「衆院のコピー」になり、多数派が異なる“ねじれ”だと「政局の府」と化し、国政が機能不全になる。

 主要先進国で議院内閣制の国は、両院の権限や議員の選び方に差をつけている。英国の上院(貴族院)は任命制の一代貴族と世襲貴族から成り、選挙で選ばれる下院の優越が明白だ。ドイツの上院にあたる連邦参議院は各州政府の代表から成り、権限は限られる。

 例外が日本よりも両院が対等のイタリアで、上院にも解散があり、政権は両院の信任を必要とする。G7(主要7カ国)で突出して首脳の交代が多いのが「強すぎる第2院」をもつ日伊両国なのは、偶然ではない。

 そのイタリアで、「強すぎる上院」の改革と県(州と市町村の中間)の廃止がテーマの憲法改正の国民投票が、10月に行われる運びとなっている。

 上院議員の数を3分の1以下に減らし、公選から州議会議員や市町村長の代表にし、議決対象などの権限も大幅に削るという内容で、レンツィ首相は政治生命を賭ける決意を表明している。

 英国のBREXIT国民投票の影響や、イタリアの金融危機の兆候など、予断を許さぬ要因もあるが、仮にイタリアの上院改革が実現すれば、日本の参院改革を入り口にした改憲論議には、追い風になるだろう。

■土谷 英夫(ジャーナリスト、元日経新聞論説副主幹)
1948年和歌山市生まれ。上智大学経済学部卒業。日本経済新聞社で編集委員、論説委員、論説副主幹、コラムニストなどを歴任。
著書に『1971年 市場化とネット化の紀元』(2014年/NTT出版)

最終更新:7/20(水) 12:20

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