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社説[緊迫高江]「暮らしと自然」こそ宝

沖縄タイムス 7/21(木) 5:00配信

 参院選が終わったとたん、手のひらを返したように強硬姿勢に転じるのは、話し合いで解決するという政治本来の役割と責任を放棄したのに等しい。憂慮すべき事態だ。
 東村高江周辺の緑豊かな「ヤンバルの森」が異様な緊張に包まれている。政府が22日にも、米軍北部訓練場でのヘリパッド建設工事を再開する意向を示しているためだ。
 警察庁は全国から500人規模の機動隊員を動員し、防衛省は応援のため本土の防衛局から約50人の職員を投入する計画だという。
 高江周辺の道路では、本土から大挙派遣された警察官が検問を実施し、住民に免許証の提示を求め、行き先を聞き、住所や名前まで記録している。
 それだけでも露骨な威圧である。プライバシー権の保護や表現の自由という点から言っても、あきらかにやり過ぎだ。
 映画「標的の村」の公開にあたって東村高江の安次嶺現達さんは、こんなメッセージを寄せている。「ヤンバルの豊かな自然を守りたい。家族を守りたい。ただ、それだけです」。
 憲法第13条によって保障された個人の尊厳と幸福追求権を、なぜ自分たちだけが享受できないのか、と訴えているのである。この言葉は重い。
 米軍北部訓練場の一部約3987ヘクタールの返還は、ヘリパッドの移設が条件になっている。「ヘリパッドが完成しなければ予定地の返還ができない」と政府は主張する。だが、この主張にはさまざまな疑問がつきまとう。
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 1996年に返還合意した段階でも、高江区の集落を取り囲むように6カ所のヘリパッドを建設する計画が2007年に持ち上がったときも、オスプレイ導入の話は住民に知らされていなかった。
 政府がオスプレイの普天間飛行場配備を正式に発表したのは12年9月。13年1月には県内のすべての市町村議会が配備反対の意見書を決議し、安倍晋三首相に配備撤回の建白書を提出している。
 県が沖縄防衛局の資料を基に県議会で明らかにしたところによると、高江のヘリパッド周辺の6月の夜間騒音発生回数(午後7時~翌午前7時)は383回にのぼり、14年度の約24倍に達した。1日あたりの騒音発生回数も8倍に増えている。
 生活が変化し、騒音に脅かされるようになったのは明らかだ。「ロハスな暮らしの上空に戦争のためのヘリが舞う」(JCA-NETより)というのが、緑深い高江の現実なのである。
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 なぜ、高江を取り囲むように計画されたのか。住民説明会でも地元の不安や懸念を解消することはできなかった。計画自体が住民無視のずさんなものだったのだ。
 生物多様性に富む「ヤンバルの森」がヘリパッド建設工事やオスプレイ訓練の影響を受けるのは避けられない。その点についても政府は説明責任を果たしたとはいえない。
 強権的ヘリパッド建設は、かけがえのない自然と住民生活を脅威にさらす「愚行」である。計画を見直すべきだ。

最終更新:7/22(金) 12:30

沖縄タイムス