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最北端の地に10基の大型風車、1万9000世帯分の電力を供給

スマートジャパン 7月21日(木)9時25分配信

 日本の最北端に位置する稚内市はオホーツク海と日本海に面した風の強い町だ。年間の平均風速は7メートル/秒を超えて、風力発電に必要な5メートル/秒を大きく上回る。現在は74基の風車が稼働中で、市内の電力需要の85%を供給できるほど風力発電の導入が進んでいる。

 その稚内市で新たに大規模な風力発電所の建設が始まる。国内で最大の風力発電事業者であるユーラスエナジーグループが海に近い丘陵地帯に10基の大型風車を設置する計画だ。1基で3MW(メガワット)の発電能力があるゼネラルエレクトリック製の風力発電機を採用して、合計で最大30MWの電力を供給する。

 すでに環境影響評価の手続きを完了済みで、2016年9月に建設工事に入る。運転開始は2018年2月を予定している。年間の発電量は6800万kWh(キロワット時)に達する見込みだ。一般家庭の使用量(年間3600kWh)に換算して1万9000世帯分に相当する。稚内市の総世帯数(1万8000世帯)に匹敵する規模の電力供給量になる。

 稚内市では地域の自然を守りながら地球環境にやさしい街づくりを目指して、2011年に「環境都市わっかない」を宣言した。風力や太陽光をはじめとする再生可能エネルギーを活用した地域社会の姿を世界にアピールする狙いがある。市内には風力発電所やメガソーラーのほか、生ごみを発酵させるバイオガス発電も市の施設で実施中だ。

 風力発電ではユーラスエナジーグループが2005年に運転を開始した「宗谷岬ウインドファーム」の規模が圧倒的に大きい。日本の最北端にある宗谷岬の南側に広がる丘陵地帯に57基の風車を展開している。発電能力は57MWで、運転開始当時は日本最大の風力発電所だった。現在でも島根県の「ユーラス新出雲ウインドファーム」(78MW)、福島県の「郡山布引風力発電所」(66MW)に次いで3番目に大きい。

北海道の風力で水素を作って全国へ

 風力発電で大量の電力を供給できる北海道では、発電した電力を使ってCO2(二酸化炭素)フリーの水素を製造するプロジェクトも始まっている。NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)が中心になって推進する実証プロジェクトで、北海道内で水素を地産地消しながら、余剰分はエネルギー消費地の首都圏などに供給する構想だ。稚内市も対象地域の1つに選ばれている。

 プロジェクトの第1フェーズは稚内市から日本海沿岸を南に下った苫前町(とままえちょう)の風力発電所で実施する。天候によって変動する風力発電の電力を安定化させるために、発電した電力を使って水を電気分解して水素を製造する試みだ。水素は液化してから他の地域にも輸送して、燃料電池や燃料電池自動車で利用することができる。

 北海道では西側の日本海沿岸に風力発電の適地が広がっているほか、東部の広い範囲で太陽光発電やバイオマス発電の導入量を拡大できる余地が多く残っている。地熱発電と小水力発電の開発も進んでいて、今後さらに再生可能エネルギーによる電力の供給量が拡大することは確実だ。

 ただし北海道内の電力需要はさほど大きくないうえに、各地域で発電した電力を道内で送電するネットワークが十分に整備されていない。発電した電力を現地で水素に転換すれば、送電ネットワークを使わずに大量のエネルギーを道内・道外に供給することが可能になる。

 NEDOの実証プロジェクトにはトヨタグループの豊田通商が参加している。豊田通商は東京電力と共同でユーラスエナジーグループを運営する一方、トヨタグループの戦略で燃料電池を軸に水素エネルギーの拡大にも取り組む。北海道の風力発電で作った水素で燃料電池自動車が走る日は近づいている。

最終更新:7月21日(木)9時25分

スマートジャパン