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レッドブルアスリートのボンちゃんが大会で得たものとは?【EVO2016】

ファミ通.com 7月21日(木)23時46分配信

●ボンちゃんのインタビューとともに振り返る
 2016年7月15日~17日(現地時間)の期間、アメリカのラスベガスにて開催された世界最大規模の格闘ゲーム大会“Evolution Championship Series 2016”(略称:EVO2016)。ファミ通.comでは、EVO2016の『ストリートファイターV』部門に参戦するレッドブルアスリート、ボンちゃん選手の密着取材を行った。本稿では、EVO2016大会当日の様子をボンちゃんのインタビューとともに振り返る。

●Round 1 Pool
 ボンちゃんは、大会2日目の朝10時からスタートのPool(ブロック)ということで、開始1時間前の9時ころに会場入り。すぐに空き台を見つけて、トレーニングモードでウォーミングアップを開始。このへんの無駄のない準備は、ボンちゃんが大会慣れしている証拠だろう。1回戦は、アメリカの春麗使いRed Panda Gamewizard選手とWeb配信用の席で行うことに。やや動きが堅いようにも見えたが危なげなく勝利し、その後も順調に勝ち進んでRound 1 Poolを負けなしのウィナーズで通過した。

――プロゲーマーでも初戦の入りかたは難しい?

ボンちゃん EVOのトーナメントは、意図的に強豪をバラけさせているため、Round 1 Poolは本来苦戦するような場所ではないんです。だから落ち着いて挑んだはずなんですが、初戦だけは緊張していたんでしょうね。最初は相手とかみ合わない場面がありました。ですが、負けるような相手ではないので、「まあ、勝てるだろう」と淡々と試合を進められました。


●Round 2 Pool
 Round 2 Pool は、Round 1 Poolの通過者約640名から約80名にまで絞られるPool。このあたりから、強豪どうしの激突も見られるようになる。Round 1 Poolが終了して約4時間後にスタートするため、ボンちゃんはいったんホテルへ戻って身体を休めながらも、当たることが予想されるファンとの戦いかたを練り直していた。この準備が功を奏し、Round 2 Poolの2回戦でファン使いの強豪ESPR|Mono選手を撃破。その後は、Round 2 Pool の決勝でEG PR Balrog選手のバイソンに僅差で敗れる。

――ファン使いのESPR|Mono選手(以下、Mono)との試合はいかがでしたか?

ボンちゃん 前日の野試合で対戦する機会があったので、安心して挑めました。前日にちょいちょい負けていたんですけど、勝率は自分が優勢でしたし、対策を練り直す時間もあったので、「まあ、さすがにいけるだろう」と心の準備はできていました。実際に予想外の行動をしてくることもなかったし、焦ることはなかったですね。

――対戦経験があるとないとではぜんぜん違うんですね。

ボンちゃん どういった動きをしてくるのかわからないと怖いですからね。それに、最近になってファンを使う人が増えていますし、あなどれないキャラクターに進化したのかなと。最初は弱いと言われていましたけど、いまでは守りが弱いだけで立ち回りはけっこう強いと評価が上がっています。ですから、しっかり対策しました。


■EG PR Balrogとの一戦
――EG PR Balrog選手(以下、ログ)の一戦を振り返っていかがですか?

ボンちゃん いやあ、もうダメでした。「相手がこう来たらこう返そう」と、選択肢が決まっている箇所が少なかったですね。バイソンはVトリガーが強いので、その対処については考えてあったんですけど、それ以外のセットプレイに対する知識が不足していました。だからいろいろ試しながら戦う必要があって、「手を出してもいいかな?」という場面で技を出してみたら、「そこは動いちゃダメでした」みたいなことが多かったです。全体としては、対バイソンという面ではダメでしたが、ログ自体の対策としては合格点を出せる動きができていたかなと。だから、知識が足りていない部分のせいで負けてしまったと思います。ただ、自分の勝ちが確定しているところまでいって負けているので、運ではなく自分の力不足ですね。

――知識が不足していることで余裕がなく、それがコンボ選択のミスに響いたのでしょうか?

ボンちゃん そうですね。あとは会場の雰囲気に飲まれている部分もあったんでしょうね。ログの試合はギャラリーがエキサイトしますから。でもあの雰囲気の中でやれるのは楽しいですよ。自分が劣性になるとギャラリーが盛り上がって、自分がいいプレイをすると「Oh~」と会場が静かに(笑)。

――すごくいい試合だったとファンからの声も届いていたようですが。

ボンちゃん そういった反響をいただくのはうれしいんですけど、自分の中では「勝ちが確定している状況を逃していて、何がいい試合なんじゃ」という思いでいっぱいです。勝っていればよくしのいだと振り返れたんですけどね。

――アウェイな雰囲気の中行う試合は好きですか?

ボンちゃん 好きですね。静かに見られているよりは、自分たちのプレイに反応してくれるほうがうれしいですよ。自分がヒールだとしても、盛り上がってくれるのは楽しいです。それに自分は、EVOでそういうシーンに出くわすことが多いんです。2年前のルフィー(フランスのレッドブルアスリート)との決勝、昨年のアレックス(アメリカのレジェンドプレイヤー)との試合と、どちらも自分がヒールでやられ役に(笑)。

――それは悔しい(笑)。

ボンちゃん 今回、ログに負けたのは悔しいですね。ログには『ストIV』シリーズで1回も負けていなくて、ログ自身も『IV』では無理でも『V』ならいけるんじゃないかと思っていたらしくて、そんななか負けてしまったので……。やっぱり心に余裕を持って挑めるようにしないといけないですね。


■Round 2 PoolのルーザーズでMonoと再戦
 EVOは、一度負けるとルーザーズトーナメント(敗者復活トーナメント)にまわり、そこで負けると敗退となる。ログに負けたボンちゃんは、Round 2 Poolのルーザーズトーナメントの決勝で、ふたたびMonoと対決。直前のログ戦を引きずっているのか、動きが堅く相手に先行されてしまう。しかし、ギリギリのところで逆転勝利を収め、Round 2 Poolをルーザーズで通過した。

――ふたたびMonoと当たりましたが、同じ相手との試合はやりにくいですか?

ボンちゃん 一度負けている側は対策を練り直せるので、再戦で有利なんですよね。ただ、今回は内容がよかったので、「ある程度変化があっても問題はないだろう」という感覚で挑めました。

――いざ試合が始まってみると、あと一歩で負けてしまうところまで追いつめられてしまいました。

ボンちゃん 最初に当たったときは、事前に対策したことをしっかりできていたんですけど、再戦時はできていなかったんです。それで1試合取られたあとにメモを見て、対策を頭に入れ直しました。意識の切り換えはできたんですけど、試合展開が劣性になってしまったので「これはヤバい」と……。でも、相手が勝ちを急いだので助かりました。

――それはどういったところで勝ちを急いでいると気づいたのですか?

ボンちゃん ふだんであれば、下がりながら慎重に戦える場面で前に出てきたんですよ。それってふだんと違う行動をしているので、相手の精神状態がふつうじゃないということなんです。だから「ここは少しおとなしくしていれば、チャンスがまわってきそうだな」と、逆に冷静になれたんです。そうしたら相手が取り返しのつかないミスをしてくれたので、そこを逃さずに逆転できました。それで完全に落ち着きを取り戻して、「もう大丈夫」と。途中は負けも覚悟しましたけど、冷静なプレイができたというのはよかったところですね。

――相手の精神状態を読み取れるのはすごいですね。

ボンちゃん やっぱり、精神状態はプレイに表れるんですよ。ある程度強いプレイヤーになると、戦いのセオリーを理解しているんです。でもそんな人がセオリーにハマらない動きをしてくるときは、勝ちたい気持ちや緊張、焦りが出ている信号ですね。だからそういう行動が見えたときは、自分が精神的に優位に立てる場面なんです。

――なるほど。今回のMonoを例に挙げると、一度負けてる相手との再戦、さらにトッププレイヤーのボンちゃんに“勝てる”ということを意識し過ぎてしまい、逆に焦ってしまったんですね。

ボンちゃん そうだと思いますよ。やっぱり、一度負けたあとに対策を練り直して、それが思いのほかうまくハマって自分のペースでことが進んでいるから、多少強引にいこうと考えたんでしょうね。実際に俺もそういうのはありますからね。ふだんは少し下がるけど、ここで決められたらおいしいから「もういっちゃえ」みたいな。でも、その精神状態を劣勢ながらも気づけたのが、勝因だったと思います。

●Quarter Finals Pool
 Round 2 Poolを通過した約80名で争われるQuarter Finals Pool。ここからは、大会上位に食い込むトッププレイヤーとしか当たらないといっても過言ではなく、優勝を狙えるような選手でもいつ負けるかわからない過酷な戦いとなる。ボンちゃんは、このPoolのルーザーズセミファイナルにて、カプコンカップ2015王者のかずのこ選手と当たり、課題のキャミィ戦を克服できずに負けてしまい、EVO2016はここで敗退となった。

――Quarter Finals Poolでは、アメリカのトッププレイヤーでララ使いのWolfkrone選手とかずのこ選手の勝ったほうと対戦するという形になり、かずのこ選手がギリギリのところで勝利して勝ち上がってきました。

ボンちゃん かずのこは最後の最後までキャノンスパイクを撃って……あれは凄い試合でしたね(笑)。勝ったほうとつぎやらなきゃいけないんですけど、観戦者としてすごくおもしろい試合でした。かずのこは先日中国で対戦した際に分が悪かったんですが、対ララは対戦数をこなしていたので、できればWolfkroneとやりたかったですね。

――ララはやりやすいんですね。

ボンちゃん いや、そうでもないですよ。ナッシュにキャラを変えて最初にぶち当たった壁が、ララでしたから。ララのジャンプ弱キックが落とせなくて……。でも場数をこなして知識も詰めていたので、かずのことやるよりはいいかなと。でも結局勝負強いかずのこが上がっていましたよね。TOP64?くらいでかずのこと当たるのは早いですよね。さすがEVOという感じでした。

――かずのこ選手との一戦はいかがでしたか?

ボンちゃん 中国遠征で課題となったキャミィ戦というものを、消化できずに迎えた試合なので、この試合に負けたというのは自然な流れでした。対かずのこだけを見ればいい勝負ができたのかもしれないけど、キャミィ戦として見るとダメでした。ドンドン前に出てくるキャミィであれば自信があったんですけど、かずのこは我慢強く地上から攻めてきたんですよ。待ちながら戦うスタイルにうまくやられたという感じです。

――攻めてくる相手であれば、対応しやすいということでしょうか?

ボンちゃん 対応しやすいというか、向こうが前に出てくるのであれば、こっちも攻めるメリットが生まれるんですよ。だけど待たれながら戦われると、なかなかリターンを取りにくい。本来、相手が慎重に来るのであれば、ソニックブームを強気に撃って相手を動かす展開に持って行くべきなんですけど、そこの切り換えをうまくやれなかったなと。

●EVO2016で得たものとは?
――EVO2016直前のインタビューで、今回は勉強とおっしゃっていましたが、実際に試合を終えてみての感想や反省点などをお聞かせください。

ボンちゃん そうですね。負けたのが、ログとかずのこ。これは、大会に参加する前から不安だった部分がそのまま出た結果だと思うんですよね。だからまあ、納得のいく敗戦だし、不安が残っている状態での大会というのは、絶対にいいようには働かないなと。これを実感として得られたのはいい経験になりますし、勉強になった部分だと思います。全体の感想としては、TOP8のうち6人が日本人というのはやっぱりすごいなと。それと、“平和島”(トッププレイヤーのシェアハウス)はやっぱりレベルが高いんだと思いました。

――キャラクターとしては、ナッシュが3人といちばん多かったですね。

ボンちゃん そうですね。TOP8ではナッシュが多かったですけど、ネット上で見かけたキャラ使用率では、TOP50くらいでいちばん多いのが春麗の11人で、つぎがネカリの8人、その下がリュウの6人でその下がナッシュ、かりんとなっていたようですよ。

――ほほう。ちなみに、TOP8に残ったナッシュとボンちゃんの差はどこにあると思いますか?

ボンちゃん 対空(相手のジャンプ攻撃を迎撃すること)ですね。俺は最初から困っている部分なんですけど。彼らは自然と最善の選択ができてるな、と思います。その中でもゆかどん(今大会3位)は、状況判断がすごくうまかったですね。Infiltration(今大会優勝の韓国プレイヤー)は予選でもあのsakoさん(チームホリ所属のプロゲーマー)をまったく寄せつけていなかったし、やっぱり最初から使っている人たちはもう職人的に最善の行動を選択できているなと。あとはやっぱキャラ対策じゃないですね。一部のキャラクターに対してだけを見れば俺と大差ないですけど、全体を見るとキャリアの差が如実に出てますよ。

――やはりそんなに違いますか。

ボンちゃん そうですね。『ストV』は選択肢が多いゲームじゃないので、やる行動だけ見るとみんな変わりないんですけど、その行動をどこで選択するかというところで差が出るんです。やはりそこは使い込みが重要になるのかなと。

――では、TOP8に残ったナッシュ使いからは学べるところが多かった?

ボンちゃん もちろんです。ゆかどんにしろ、Infiltrationにしろ、試合はずっと見ていましたから、現状はあのふたりがナッシュ使いの中で抜けて強いですよ。ゆかどんがときど戦で、劣勢から強パンチをクラッシュカウンターさせた場面なんて、ただの“暴れ”というわけではなく、理にかなった行動なんですよね。かなり勉強になりました。

――最初からナッシュを使っているトッププレイヤーふたりに、ボンちゃんは追いつけますか?

ボンちゃん いやもう、「そりゃ追いつくでしょ」とは思ってます(笑)。それがいつになるかはわからないですけど、追いつけないとは思っていません。もちろん、ゆかどんもInfiltrationもすごくいいプレイヤーだと思いますけど必ず追いつけますし、追い越さないとダメですよね。

――ボンちゃんは彼らよりも上に行けると?

ボンちゃん いままで自分がメインで使ったキャラクターで、自分より本当に上に行かれたというプレイヤーはいませんし、必ずいちばんになれると思ってやっていますから。

――それは心強いですね。ところで、この後の海外遠征の予定はありますか?

ボンちゃん えっと、8月6日にトパンガチャリティーカップ(※公式サイト)があったりと、イベントはちょいちょい入っています。
カプコンプロツアーは、8月2週目の中国大会に出ようと思っているのですが、別のイベントとかぶる可能性があるので、まだ確定はしていません。

――8月は立て続けにカプコンプロツアーの大会があり、今回みたいに課題を残したまま挑むことになってしまうのでは?

ボンちゃん だから本当は行くのが嫌なんですよ。東京で開催されたボタンマッシャーズなんて、ナッシュを使い始めて10日くらいの状態で挑みましたし(笑)。だから6月~7月は日本にこもって練習して、ナッシュのレベルが格段に上がったんですよ。それもあって、日本に残って集中して練習したほうが、絶対にスキルアップできるから、いまは練習を優先したいんです。もし俺がプロじゃなかったら、絶対に勝てる自信がつくまでは大会に参加しないと思うんですよ。でも、レッドブルの看板を背負っている以上、露出もしていかないといけませんし、そんなこと言ってられないですよね。だから、そこは器用にこなすしかないと思っています。

――つぎの大会が8月2週目ということであれば、それまでじっくり国内で詰めていく感じですかね。

ボンちゃん イベントなどもありますが、可能な限りやり込みたいですね。

――やはりイベントなどで練習の時間が減ってしまうのでしょうか?

ボンちゃん ゲームだけやっていればいいわけじゃありませんからね。とはいえ、俺はプロになったら、ゲームがもっと認知されるような活動をしたいと思っていたので、それをないがしろにするのは本末転倒になっちゃいますから、そこはブレずに。だって、ただゲームで強くなるだけなら、誰だってできますけど、プロとしての活動は誰でもできることじゃないですし、それが俺に与えられた仕事なのかなと。

――そもそもプロになれる人間も限られていますからね。それでは最後に、ボンちゃんの活躍を期待するファンの皆さんへのメッセージをいただけますか?

ボンちゃん まずは少しでも早く活躍している姿を見せられるようにがんばりますので、応援よろしくお願いします。

最終更新:7月21日(木)23時46分

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