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3年前の「iPhone 5s」がいまだに“現役”の理由

ITmedia Mobile 7月21日(木)20時55分配信

 スマートフォンは半年~1年ほどで立て続けに新製品が登場し、新機種も1年を過ぎると「過去の機種」になり、生産が終了するケースがほとんどだ。そんな状況下でいまだに売れ続けているモデルがある。Appleの「iPhone 5s」だ。

【2016年発売のSEとデザインはほぼ一緒】

 NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの大手キャリアは既にiPhone 5sの販売を終了しているが、2016年3月にソフトバンクが運営するY!mobileがiPhone 5sを発売。新生活前に発売したことで、4月から高校に入学する若年層によく売れ、3月以降のスマホの販売数が、2015年よりも約3倍伸びた。7月15日にはUQコミュニケーションズが運営する「UQ mobile」でも販売を開始した。

 iPhone 5sは中古市場でも人気が続いており、例えばゲオ店舗の2016年6月における中古スマホ販売ランキングでは、ドコモ、au、ソフトバンクのいずれも上位はiPhone 5sかiPhone 5が独占している。

 iPhone 5sは、2013年9月に発売されたモデル。買い換えサイクルの短いスマートフォンにおいて、3年前のモデルを通信キャリアやMVNOが新規で取り扱うというのは異例だ。もちろん販売の数量はiPhone 6や6sには及ばないだろうが、5sに対する一定のニーズがあることは分かる。なぜ、5sがいまだに注目を集めているのだろうか。

●格安SIMやスマホのデビューに最適

 Y!mobileとUQ mobileが扱い始めたのは、iPhone 5sが「格安SIMを安価に運用できるiPhone」という点が大きい(Y!mobileはMVNOではないが、ここでは格安SIMに分類する)。MM総研の調査によると、MVNOが展開している格安SIMの契約数は2016年3月末時点で、前年比65.5%増の539.4万回線まで増えている。FREETELが5月佐々木希さんを起用したCMを大々的に打ち始めるなど、MVNO各社はITリテラシーの高くない一般層へのアプローチを試みている。

 その際にネックとなるのが「端末」だ。日本では世界的にもiPhoneのシェアが高く、スマートフォンでは50%を超えている。iPhoneはシンプルな操作性から初心者にお勧めしやすい。しかし端末代が高く、SIMロックフリー版だと10万円を超えることもある。

 2016年3月にはiPhone 5sの純粋な後継機である「iPhone SE」が発売されたが、SIMロックフリーの16GBは4万7800円(税込、以下同)、64GBは5万9800円。確かに7万8800円~10万1800円のiPhone 6sよりは安いが、格安とまではいかない。

 Y!mobile向けiPhone 5sの一括価格は16GBが5万4540円、32GBが6万4908円なのでiPhone SEのSIMロックフリー版よりも高いが、24回の「月額割引」を適用すると、16GBは実質1万6740~5184円、32GBは実質3万8880~2万5920円にまで割り引かれる。

 UQ mobile向けiPhone 5sは16GBモデルのみで一括価格は5万400円。端末購入アシストで支払い、「ぴったりプラン」に加入すると月1400円、「たっぷりオプション」に加入すると月1900円が「マンスリー割」として割り引かれ、24回分を引いた実質価格はそれぞれ1万6800円、4800円となる。

 ゲオの場合、ドコモ版iPhone 5sの良品は16GBが2万4800円、32GBが2万7800円、64GBが2万9800円(2016年6月のデータ)。ドコモ回線を使った格安SIMをSIMロック解除せずに利用できるので、auやソフトバンク版よりは高いが、iPhone SEのSIMロックフリー版よりは2万~3万円安い。ゲオは「OCN モバイル ONE」のSIMを「ゲオモバイル」として販売しているので、中古iPhone 5sをセットで販売すると、さらに売れそうな気がする。

 このように、Y!mobileやUQなら実質1万円前後、中古ならドコモ版でも2万円台で購入できるiPhone 5sは、格安SIMと組み合わせて安く運用するのに最適なiPhoneなのだ。

●ドコモ系列のMVNOがiPhone 5sを扱えば……

 iPhone 5sはソフトバンクやKDDIでなく、Y!mobileとUQが扱っていることに意味がある。Y!mobileはソフトバンクのサブブランドで、UQ mobileも事実上KDDIのサブブランドになっている。大手キャリアがiPhone 6sやSEを販売し、Y!mobile/UQ mobileがiPhone 5sを販売することで、同じiPhoneを扱うキャリア/MVNOですみ分けができるというわけだ。

 気になるのはドコモの動きだ。グループ会社のNTTコミュニケーションズが「OCN モバイル ONE」を展開しているが、ドコモとNTTコムの連携は今のところ見られず、ドコモもMVNOをサブブランド化する可能性は否定している。それでも、MVNO最大手のNTTコムがiPhone 5sを取り扱い、販路を広げられれば、さらに市場が動きそうだ。

●デザインとスペックはまだ通用する

 iPhone 5sのデザインも、まだ色あせてはいない。筆者の周囲には、iPhone 5sのデザインを好む人が一定数いるほか、街中ではいまだにiPhone 5sを使っている人をよく見かける(SEかもしれないが)。iPhoneは6以降、ラウンド形状のデザインに変更されたが、5sはiPhone 6/6sとは対照的にスクエアな形状で、キラリと光るエッジが美しい。

 さらに、iPhone 5sの後継機であるiPhone SEが、5sとほぼ同じデザインを採用していることも大きい。5sのデザインは現役だとAppleが言っているようなものだからだ。周囲からは5sを使っているのかSEを使っているのかが分かりにくいこともあり、街中でも5sを堂々と使えるのではないだろうか。

 iPhone 5sのスペックはどうか。さすがに6sやSEと比べると見劣りするが、640×1136ピクセルのRetinaディスプレイ、A7チップ+M7モーションコプロセッサ、Touch ID、下り最大100MbpsのLTE、800万画素カメラは、初心者には十分な性能だろう。最近よく見る、1~3万円台のSIMロックフリーAndroidスマホと比べても遜色のないスペックだ。現行スマートフォンでは数少ない4型ディスプレイの採用も、片手での操作性を重視する人には大歓迎だろう。

●5sのOSアップデートは2017年まで?

 「最新OSが使える」という点では、iPhone 5sが現役でいられる期限は残り少ないかもしれない。iOS 10ではiPhone 4sがアップデートの対象から外されたが、この流れで行くと、5sのOSアップデートは2017年のiOS 11(?)で最後……となる。iOS 12(?)の提供直前である2018年秋まで持てば十分ともいえるが、購入時期によっては、Y!mobileやUQ mobileの2年縛り期間に、OSアップデートが打ち切られる可能性がある。

 ともあれ、ここまで寿命の長いスマートフォンは近年では珍しい。数年後、「iPhone最大のヒット作は5sだった」と言える日が来るかもしれない。

最終更新:7月22日(金)11時28分

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