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重粒子線放射線照射が全身に与える影響を明らかに

MONOist 7月22日(金)8時55分配信

 東京大学は2016年6月28日、がんの放射線治療にも利用される重粒子線をメダカの体表に照射した後、メダカを連続的に薄くスライスした切片を用いて全身組織の変化を細胞レベルで明らかにしたと発表した。同大学大学院新領域創成科学研究科の三谷啓志教授らの研究グループによるもので、成果は同月27日、英科学誌「Scientific Reports」オンライン版に掲載された。

 重粒子線は、炭素イオンを加速させた放射線の一種だ。エックス線やガンマ線に比べて細胞への影響が強く、より精密な照射が可能なため、がん治療に利用されている。これまで、放射線を照射していない部位への影響については、注目している組織を摘出して個別に解析する手法が主流で、全身の詳細な評価は行われていなかった。

 今回、研究グループは、ヒトと同じ脊椎動物で、体が小さく解析が容易なメダカの一部分に重粒子線を照射し、全身を連続切片にして解析する新しい方法を開発した。体表から約2mmまでしか到達しないようにエネルギーを厳密に調整した重粒子線を、量研機構高崎量子応用研究所のイオンビーム照射研究施設(TIARA)のサイクロトロンで作り出し、全身麻酔を施したメダカの背側と腹側から照射できるようにした。メダカを細胞レベルで全身くまなく観察するには、1匹を5μmの厚さで連続的にスライスした切片が約3600枚必要だった。

 同手法により、放射線を照射した場合の全身への影響を調べた。その結果、放射線が到達しない組織にも毛細血管の拡張や出血が生じるという現象を発見した。また、部分的に放射線照射した腎臓の組織像を3次元的に再構築して詳細に分析したところ、放射線が照射された部分の組織の萎縮に加えて、照射されていない部位の血管にも放射線の影響があることを明らかにした。

 この知見は、がん治療の基礎研究の大きな一歩であり、また、局所的な放射線照射時の健康リスク評価につながることが期待される。同大では今後、このメダカを用いて、毛細血管の拡張を引き起こす炎症反応のメカニズムを解明したいとしている。

 なお、今回の研究成果は、量研機構高崎量子応用研究所、北里大学および山口大学の研究グループと共同で得られたもので、連続切片データは、山口大学のバーチャルスライドとして公開されている。

最終更新:7月22日(金)8時55分

MONOist

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