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ドン・キホーテが訪日客に選ばれ続けるワケ

ITmedia ビジネスオンライン 7月22日(金)8時25分配信

 総合ディスカウントストア、ドン・キホーテに来店する訪日客が増え続けている――。2014年の訪日客数は月間で約5万人程だったが、その数は順調に伸び続け、今年に入ってからは月間で20万人以上の訪日客が来店している。免税客単価も約1万5000円と、国内客平均よりも約5.6倍高く、中国人客に絞ると8.5倍も高くなる。店舗によっては売り上げの半分を免税品が占めるところもあるなど、まさに同社の業績を訪日客が後押ししているのだ。

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 このように同社はインバウンドをうまく味方につけたわけだが、その成功要因はどんなところにあるのだろうか。

 年間訪日客数が4000万人を突破するかもしれない2020年に向け、多くの訪日客を自社に呼び込み、売り上げを伸ばしたいと考える企業は、同社の取り組みから成功のヒントを得ることができそうだ。

●エリア全体に呼ぶ込むという発想

 ドン・キホーテがインバウンド事業に力を入れ始めたのは2008年。当時はまだインバウントという言葉が普及していない時期であったが、今後、アジア圏を中心に訪日客が増えていくことを見据え、インバウンド専門の部署を立ち上げたという。

 他の流通業界に先駆けて、多くの中国人が決済時に使用する銀聯(ぎんれん)カードを導入した他、多言語対応のスタッフ配置と、店内放送、コーナーPOP、そして24時間対応のコールセンターを設置している。

 このほか、インバウンドを成功させた要因には、訪日客をドン・キホーテがあるエリアに呼び込むための案内地図「ようこそマップ(多言語表記)」と同店で使える割引券「ようこそカード」の存在がある。自社だけでなく、他店も含めて紹介し、エリア全体を盛り上げていく必要があったという。

 当時、中国ではドン・キホーテの存在を知る人はほとんどいなかった。「自社の努力だけではどうにもならない」として、「地域連携」による戦略を考えたのだ。他の飲食店などと連携し、その店の特典情報などを掲載した。その狙いについて、同社のインバウンド戦略責任者の高島健太郎ゼネラルマネージャーは次のように語る。

 「知名度もないのに『ドンキに来てください』と呼びかけても全く通用しない。訪日客の目線で考え、まずは、そのエリアに興味をもってもらう必要がありました。その先で『ようこそカード』(割引券)でうちの店に来てもらおうとしたわけです」(高島氏)

 マップとカードは旅行会社を通じて配布した。訪日客にとって有益な情報なら目を通してもらえる。すぐに結果に結びついたわけではなかったが、徐々に知名度が上がっていき、結果的に多くの訪日客を呼び込むことへとつながったという。

●現場の判断に全て任せる

 2014年は、新免税制度が導入され、一部の商品のみに適応されていた免税品が全品に拡大したことや、円安が進んだことで訪日客のショッピング熱が高まり「爆買い」という流行語が生まれた。

 最近、多くのメディアから「爆買いの勢いが衰え始めた」という声をよく聞くが、それは正確ではない。実際、百貨店などはブランド品の売り上げが落ちていて、免税品売上額が前年比でマイナスになっているのは確かだが、高価格帯商品から化粧品、食品などの比較的安価な商品に熱が移ったというのが実情である。訪日客数自体は伸びており、ショッピング熱はいまだに健在だ。

 ブランド品や家電から薬品・化粧品、そしていまは食品――このように訪日客のニーズは短期間で変わっていく。こうした状況の変化に対して迅速に対応していくために、同社では各店舗に商品構成、陳列方法など全ての裁量を与えているという。

 「とても短い期間でニーズは変化しますし、売れる商品も地域、店舗によって異なります。だから店舗ごとの対応・戦略が必要になるわけです」(高島氏)

 その地域のご当地商品がよく売れるなど、人気商品も違えば、訪日客の国籍も店舗ごとに異なるのだ。例えば、同じ大阪でも御堂筋店の場合は中国人が最も多く、道頓堀店では韓国人が最も多い。また、店舗によって訪日客がどの時間に多く来店するのかも異なる。

 つまり、多言語を話せるスタッフの人事配置も含め、その店舗にくる訪日客のニーズに正確に対応するためには、中央(本社)がコントロールするのではなく、全て現場に判断を任せることが重要になるのだ。

 「縦割りでやっていたらスピーディーな対応ができないだけでなく、意味(ニーズ)のない施策を展開してまう可能性も大きいですから」(高島氏)

 こうした現場の対応力が多くの訪日客を呼び込む大きな要因となっているといえる。

●成功例は店舗間で共有し、横展開

 店舗別対応によって正確なニーズに応える同社だが、他店舗でも応用できる情報は活用できるようにするため、店舗ごとの施策の成功例や顧客データは、全店で情報共有をして横展開につなげる取り組みも行う。

 例えば、「どの国籍の人がどんな商品を多く買っているか」という顧客データや、「抹茶のお菓子コーナーを設けたら中国人客にたくさん売れた」などの情報を店舗間で共有することで、うちの店舗は中国人が多いからこの商品を置こう、この商品はタイ人に人気があるからタイ語のPOPを付けよう――といったような効果的な施策の展開が可能になる。

 実際、大阪の道頓堀御堂筋店は開店してからわずか2年しか経っていないが、こうした情報を活用したインバウンド施策を展開したことにより、既に免税品売上が全体の5割を超えている状況だ。

 同社は今後も、店舗ごとの成功例を横展開しインバウンドを強化していくが、一方で高島氏は「あくまでメインは日本客」としてあまり訪日客に特化した店舗になってしまわないように気をつけたいとも話した。

 「訪日客に目を向けすぎるあまり、国内客が離れてしまっては本末転倒です。例えば、免税手続きでレジが込んでしまうと国内のお客様が不便になります。そこで主要店舗には免税専用カウンターを新設しました。当社は地域に根付いた店づくりが基本です。その点はブレてしまわないようにしたいですね」(高島氏)

最終更新:7月22日(金)8時25分

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