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仕事ができる人は、なぜ上司から「やり直し!」と言われないのか

ITmedia ビジネスオンライン 7月22日(金)8時34分配信

 上司から頼まれた仕事であれ、取引先からお願いされた仕事であれ、「どうして、やり直し、差し戻しになってしまうのか」と嘆く声がよく聞こえてくる。そのために重要な準備段階での「結果を出す"下ごしらえ"」について、たくさんの取材経験から考えてみる連載第2回。

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 第1回では、その仕事の「目的」をしっかり聞けているか、という最初のステップを書き記したが、次のステップのキーワードは「ターゲット」だ。それは、誰のために行われる仕事なのか、ということである。仕事の相手を意識することだ。

 そんなことは当たり前のことじゃないか、いったい何のことなのか、と思われるかもしれない。仕事はそもそも発注者から出てくる。だから、発注者こそが、仕事のターゲットではないか、と思える。ところが、必ずしもそうではないのである。

 発注者から仕事が出ているからといって、発注者が仕事の対象ではないケースがあるのだ。このターゲットの意識が、仕事の結果に大きく影響する。

 最も分かりやすいのは、こんなケースだろう。上司からグラフ作成と解説の仕事を頼まれた。書き上げてみると、やり直しを命じられてしまった。

 理由は、ターゲットのずれ。てっきり上司に向けた書類なのかと思ったら。取引先向けの資料だった。しかも、初めて取引を始めようとしている新規顧客。もっと丁寧に解説をしてくれないと、これではまるで相手に伝わらないじゃないか、というわけである。

 一口に資料を作る、といっても、「誰が」読むのかによって内容や作り方、書き方は変わってこないといけない。それこそ、自分の会社のことについてよく知っている人に向けて何かを発信するのと、まったくよく分かっていない人に向けて発信するのとでは、違ってくる。

 自分の会社のことをよく知らない人に、分かっているつもりで書いてしまったら、まったく伝わらない。誰が読むのか、というターゲットは、極めて重要になるのだ。

●本当の顧客は誰か

 ある情報会社のトップセールスマンが取材でこんな話をしていた。取引先に何かを提出するときには、それが提案書であれ、企画書であれ、何らかのレターであれ、最終的に誰が読むのかを必ず確認していた、というのである。

 それは、窓口になっている担当者なのか。それとも、担当者の上司なのか。その上の担当役員なのか。もっと上の社長なのか。

 それこそ、若い担当者に出す提出物と、経営トップの社長に出す提出物と、果たして同じでいいかどうか。同じ文面でいいかどうか。

 担当者は、取引先である自分の会社のことは分かってくれている。だが、経営トップが分かっているとは限らない。だとすれば、経営トップがしっかり理解できるようなものにしておかないといけない。場合によっては、自分たちのことが端的に分かる、何か別の資料を添付したほうがいいかもしれない。

 逆に、自分の会社のことがよく分かっている担当者に、くどくどと自分の会社のことを書いていたら、なんだこれは、ということにもなりかねない。

 ターゲットを意識するだけで、こういうことができるようになっていく。実際、そのトップセールスマンは、書類を細かく作り分けていた。そうすることで、本当に読む相手に確実に届くものを作ることができていたのである。

 もう1つ、よく覚えているのは、あるコンピュータ製品の営業担当者へのインタビューだった。彼は若くして、ずば抜けたトップセールスとしての実績を誇っていた。特別なモノを売っているのではない。どこでも買えるOA機器の販売だ。では、いったい他のセールスと何が違うのか。その理由を取材でぜひ聞いてみたかった。

 印象的だったのは、「本当の顧客は誰か」という言葉だった。取引先のコンピュータ製品の営業窓口になっているのは、総務部門。だが、総務部門は実は本当の顧客ではない。つまり、本当のターゲットではない、と彼は語っていたのである。

 どういうことか。例えば、PCを販売する。確かに窓口は総務部門だが、販売したPCを使うのは、総務部門ではないのだ。取引先の会社の別の部門に所属する社員ユーザーたちなのである。

 彼にとっての「お客さま」は、確かに総務部門の担当者だが、本当の意味ではそうではない。実際にPCを使う、その会社の別の部門の社員ユーザーたちなのだ。

●本当のターゲットであるユーザーに満足してもらう

 もちろん営業としては、顧客に満足してもらうことが大事になるわけだが、ここで間違えてはいけないのが、ターゲットである。満足してもらわないといけないのは、実際にPCを使う社員ユーザーだからである。

 それこそ、いくら窓口の総務担当に喜んでもらえたとしても、実際に使うユーザーたちがそうでなかったら、どうなるか。その声はやがて社内で総務担当に突きつけられることになるだろう。実際のユーザーから不満の声が上がっているとしたら、総務担当と円滑な取引が続けられるかどうか。

 逆に、このことが分かっていれば、仕事は一気にしやすくなる、とトップセールスマンは語っていた。窓口となる総務の担当者に、もう売り込む必要がなくなるのだ、と。

 どういうことか。総務の担当者は、なぜPCを購入するのか。それは、ユーザーに満足してもらうためなのだ。実はこれは、トップセールスマンと利害が一致するのである。総務の担当者も、セールスマンも、本当のターゲットであるユーザーに満足してもらうことこそが、仕事の目的なのである。

 ここに気付けると、どうなるか。総務の担当者にとって、セールスマンは仕事の「同士」になるのである。自分がいい仕事をすることを助けてくれる、大事な存在になっていくのだ。なのに、邪険になどするはずがない。これこそが、売り込まなくてもいい、という理由なのである。

 本当のターゲットが見えてくれば、そのターゲットを満足させることを一緒に考える関係になれるのである。取材では、こんな表現が使われていた。

 「向かいに座るのではなく、隣に座る関係」

 総務の担当者は、向かい合って取引をする関係なのではなく、隣に座って一緒にユーザーの課題を考える関係になるということだ。

 となれば、ユーザーにどう満足してもらうかについて、相談もやってくるだろう。より良い提案も求められてくるだろう。

●一緒に顧客の課題を解決していける存在

 売り込もうとする営業と売り込まれる相手企業の担当者、という関係とは、一変してしまうのである。いい関係が作れるのだ。

 実際には、多くの優れたセールスパーソンたちが、こういうスタンスで仕事をしているのではないかと思う。PCの販売は分かりやすい例だが、実際のターゲットは取引先の外部の顧客かもしれないし、もしかすると上司や経営トップだったりするかもしれない。

 その場合も同じように、相手の担当者と同士の関係になって、本当のターゲットのために課題をクリアしたり、作戦を一緒に考えていけばいいのだ。

 そうすることで、単にモノを売るのではなく、一緒に顧客の課題を解決していける存在になれる。窓口の担当者からは、仲間になるのである。

 一方、本当のターゲットを意識することができれば、「正しい」仕事もできるようになっていく。例えば、会計不祥事のような事件がなぜ起こるのか。それは、本当の仕事のターゲットが見えていないからではないか。

 仕事の発注者である上司だけを見て、とにかく上司が欲しいものを、とにかく上司が気に入るものを、とどんどんエスカレートしていってしまう。最後は、上司の都合のいいものに、ということになりかねない。結果的に、会社も本人も窮地に陥ってしまいかねない。

 本当のターゲットが誰であるか、が見えていたら、果たしてこんなことができたかどうか。自分たちに都合のいいように数字を調整するなどということが間違っていることに、すぐに気付けたのではないか。

●小さな気遣いが「違い」を生む

 そしてもう1つ、本当のターゲットがしっかり意識できていれば、仕事に差が生まれる。細やかに仕事相手のことを見られるようになるからだ。

 こんなことを語っていた秘書の女性がいた。彼女は会議資料ひとつとっても、必ずターゲットを意識していた。

 目的はもちろん、誰が出席者になるのかも理解しておく。そうすると、準備しておかなければいけないことがイメージできる。例えば、社長クラスの集まりと、会長クラスの集まりでは、資料づくりを変えるという。

 何が違うのか。例えば文字の大きさ。社長世代なら60代も多いが、会長世代となると70代。視力の衰えを考えると、文字はできるだけ大きいほうがいいわけだ。

 小さなことである。しかし、これだけでも受け取る側はストレスがなくなる。分かる人には、間違いなく評価される。こういうところで、評価の差は生まれているのだ。

 小さな気遣いひとつが、「違い」を生む。それは「ターゲット」への意識が大きなヒントになる。

(上阪徹)

最終更新:7月22日(金)8時34分

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