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エンジニアで飯が食えるのか?:新潟編

@IT 7月22日(金)17時24分配信

●@IT式 U&Iターンスタイル
 ここ数年、政府主導で地方創生が促進され、実際に都市部から地方に移住した人の数は5年で4倍に増え、2014年度には1万1735人と1万人を超えた。しかし、まだまだ地方移住に不安を抱える読者も多いだろう。@ITはその理由の1つに「情報の少なさ」があると考えた。

【その他の画像】常用労働者1人当たりの平均月間現金給与総額と総実労働時間数

 「@IT式 U&Iターンスタイル」は、全国各地のU&Iターンエンジニアたちが、地方での生活の実情や所感などをセキララに伝えていく。ご当地ライターたちのリアルな情報は、U&Iターンに興味のある方々の役に立つだろう。

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 こんにちは。「しごとのみらい」の竹内義晴です。このたび「ITエンジニアU&Iターンの理想と現実」の新潟編を担当することになりました。

 新潟編では、統計情報を元にした新潟の紹介や、エンジニアの仕事事情とワークスタイル、移住における行政機関の支援、田舎のライフスタイルや地域との関わり、地方の子育て事情など、ITエンジニアとご家族の働き方の選択肢や可能性が広がるような情報をお届けします。また、実際に住んでいる者として、新潟の大好きなところ、実情なども含めてレポートします。

 最初に、簡単に自己紹介します。

 私は新潟の中山間地、妙高高原の生まれです。中学卒業後、15歳で家を出て神奈川にある自動車会社の企業内学校に入学。その後自動車会社に就職して、新潟にUターンしたのは13年後の1998年、28歳のときでした。それと同時にIT業界に転身し、プログラマーになりました。

 その後、紆余(うよ)曲折を経て、現在はビジネスパーソンや組織が抱える悩みや課題を解決するための研修や講演、執筆活動をしています。仕事の8割はインターネットをはじめとしたITインフラのおかげで成り立っています。プライベートでは田んぼで米を作ったり、畑で野菜を作ったりしています。

 田舎に住みながらITインフラを活用して働いていると、「地方の在り方」や「これからの働き方」についてよく考えます。

 例えば、私の住む妙高高原は観光地ですが、観光客や人口が減少し、多くの店が閉店しています。駅前も閑散として活気が失われています。

 そこで、よく想像するのです。「ITインフラがこれだけ整っているのだから、もし、プログラマーやWebデザイナーなど、PC1台あれば仕事ができる人たちが増えて働くようになったら、この街はもっとにぎわうのではないか」と。

 けれども、この働き方を選ぶ人はごくわずかです。結局、移住を決めるポイントはインフラだけではないんですよね。

 「U&Iターンの理想と現実:新潟編」では、地方で働いている元エンジニアが、「生の声」をセキララにお届けします。この連載が、皆さんの働き方の選択肢を増やすきっかけになれば幸いです。

 次ページから、統計データを元に「新潟」とはどのようなところか、仕事はあるのか、などを見ていきます。

●データで見る「新潟」

 皆さんは「新潟」にどんなイメージを持っていますか?「お米がおいしい」「日本酒がうまい」「海の幸が豊富」「スキー&スノボ」などでしょうか。最近は「Negicco」や「NGT48」などのご当地アイドルも人気ですね。

 実際はどうなのでしょうか? データから見える新潟の街を紹介しましょう。

○新潟ってどんなところ?

 新潟県の県庁所在地、新潟市は、本州日本海側唯一の政令指定都市です。中心市街地を農業地域が取り囲む、自然豊かな土地です。

 新潟の自慢といえば、「食べ物」です。「47都道府県別 生活意識調査2015(出典:ソニー生命保険株式会社)」によると、「食べ物の美味しさが自慢」で、新潟は全国1位です。また、「新潟県あれこれ全国ベスト5(出典:新潟県の日本一)」によると、「コシヒカリ」や、近年新しいブランド米として県が普及を進めている「新之助」をはじめとした米の生産量が、新潟は全国1位。日本酒の消費数量も全国1位です。魚介や山菜もおいしい。食も豊かです。

 しかし、新潟県庁発表の「新潟県推計人口(平成28年5月1日現在)」によれば、新潟県の人口は「229万人」です。平成16年の245万人から年々減少しています。人口だけ見れば、新潟も衰退の一途をたどっています。

○交通の便は?

 新潟には「上越新幹線」と「北陸新幹線」が走っており、東京まで2時間程度なので、日帰り出張が可能です。新潟市などの中心市街地なら電車や路線バスがありますので、交通の便で困ることはあまりありません。終電は23時台です。

 しかし、中心市街地から離れると電車やバスの本数がガクッと減ります。終電も早いです。

 例えば、私の家の最寄り駅――えちごトキめき鉄道の「妙高高原駅」は、電車は1時間に1本程度、バスも1時間に1本あるかないかです。遠方に行くときは、主要駅の接続で30分以上待つこともあります。

 このような環境ですから、電車で通勤している友人・知人はほとんどいません。基本は車で移動します。

●新潟の仕事、給与、残業時間

 続いて、ITエンジニアの仕事状況を見ていきましょう。

○エンジニアの仕事はあるの?

 「ハローワークインターネットサービス」で、勤務地を「新潟県」、希望する職種を「情報処理・通信技術者」として検索すると、7月17日現在で検索件数は173件、さらに、フリーワード「エンジニア」で絞ると104件ヒットしました。新潟市を中心に、人口が多いところならIT系エンジニアの仕事はかなりあるといっていいでしょう。

 一方、中山間地に行けば行くほどIT系エンジニアの仕事は少なくなります。技術の仕事は、測量や土木系が数件ある程度です。

○案件のクライアントは?

 大きな開発案件は首都圏のクライアントから受注するものが多いようです。新幹線1本で東京に行ける立地からか、中心市街地には大手SI企業の支店が多数あります。

 会社によって異なるので一概には言えませんが、地場の企業も、状況は同じようです。Webサイト作成などの規模が小さい仕事も「クライアントの多くは東京都内」とのことです。

 ちなみに筆者は、Uターン直後はソフトウェア開発会社に所属し、地元の製造業の情報システム部に常駐していました。

 新潟県内にはさまざまな業種・業態の会社があります。就職の選択肢として、地元企業の情報システム部などを検討するのもよいでしょう。

○残業時間は?

 「新潟県ワーク・ライフ・バランス推進研究会報告」が発表した「研究会概要」によると、新潟県民の働き方の特徴は、「始業時間が早く、残業が少なく、通勤時間が短いため帰宅時間が早い」とのことです。

 年間残業時間は全国が「129時間」、東京が「141時間」なのに対し、新潟は「127時間」。1日の通勤時間は、全国が「78分」、東京が「97分」なのに対し、新潟は「54分」です。

 また、「ハッピー残業日本地図(出典:はたグラ)」によると、「残業時間が短く、時給が高い県」で新潟は14位です。筆者の周囲を見ても、「帰りはいつも終電」のような働き方をしている人はいません。

 近年、ライフ・ワーク・バランスの重要性が叫ばれています。新潟は、残業が少なく通勤時間も短いので、首都圏に比べてプライベートと仕事のバランスを取りやすい地域といえるでしょう。

○給与は?

 新潟県庁発表の「統計データハンドブック(平成26年度) 第5章 事業所・労働・賃金」によると、新潟県の1人平均の給与総額は「26万2469円」、全国平均は「31万4054円」でした。

 産業を「情報通信業」に限ってみると、平成25年の新潟県の現金給与総額は「40万8200円」でした。全国平均の「48万4922円」よりは少ないけれども、かなり高収入といえるのではないでしょうか。

 前述の「新潟県ワーク・ライフ・バランス推進研究会概要」によると、新潟県民は「女性の就業率が高く、世帯としては全国平均以上の収入を確保している」そうです。

 家賃など生活に掛かるコストが首都圏よりも安いことを考えると、生活水準は充実しているといえるでしょう。

●新潟は、エンジニアで飯が食えるか?

 統計データから、新潟の仕事事情などを見てきました。

 新潟はエンジニアとして飯が食える場所なのでしょうか?……中心市街地とそれ以外で状況が大きく異なりますが、少なくとも中心地は「交通の便はよく」「IT関連の仕事はあり」「ワークライフバランスを保った働き方ができそう」です。

 「東京に比べると給与が少ない」などのマイナスポイントもありますが、「自然が豊か」「食べ物がおいしい」など新潟ならではの良さもありますので、新潟で働く人が増えたら筆者はうれしいです。

 とはいえ、いざ移住となると、「家はあるの?」「転職や起業の支援は?」など、生活や働く上でのいろいろな不安があるでしょう(異なる地域に移住するIターンならなおさらです)。また、「休日は暇じゃない?」「地域との交流は?」「恋愛や結婚は?」「子育て環境は?」のようなライフスタイルについても疑問があるでしょう。

 それらは、第2回以降で紹介していきましょう。

●筆者プロフィール しごとのみらい理事長 竹内義晴:「仕事」の中で起こる問題を、コミュニケーションとコミュニティの力で解決するコミュニケーショントレーナー。企業研修や、コミュニケーション心理学のトレーニングを行う他、ビジネスパーソンのコーチング、カウンセリングに従事している。著書「うまく伝わらない人のためのコミュニケーション改善マニュアル(秀和システム)」「職場がツライを変える会話のチカラ(こう書房)」「イラッとしたときのあたまとこころの整理術(ベストブック)」「『じぶん設計図』で人生を思いのままにデザインする。(秀和システム)」など。

最終更新:7月22日(金)17時24分

@IT

TEDカンファレンスのプレゼンテーション動画

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