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Infineonによる“CreeのSiC事業買収”の狙い

EE Times Japan 7月22日(金)17時39分配信

■年間売り上げ規模1億7300万米ドル

 Infineon Technologies(インフィニオン テクノロジーズ)は2016年7月21日、都内で会見を開き、7月14日(ドイツ時間)に契約を締結したCree(クリー)のSiCウエハー製造事業とSiCデバイス事業買収に関して説明を行った。

【世界パワーデバイス市場におけるシェア 】

 Infineonが買収を決めたのは、LED素子などを主力とするCreeの電力変換およびRF(高周波)用SiCウエハー基板製造事業と、Creeの子会社でSiCウエハーを使用したパワーデバイス/RFデバイス事業を展開するWolfspeed(ウルフスピード)。SiCウエハー製造事業とWolfspeedのSiCデバイス事業を合わせて、2016年3月期約1億7300万米ドルの売り上げ規模を誇り、粗利益率も「50%を超える」(Infineon)。買収額は、8億5000万米ドルで、2016年末には買収が完了する予定だ。

 Infineonは1992年から、現在主流のシリコンパワーデバイスを置き換える可能性のある次世代パワーデバイスとして、SiCパワーデバイスの開発に着手。2001年には、SiCによるダイオードを商品化し、2014年にはJFET(接合型電界効果トランジスタ)タイプのSiCトランジスタを製品化。さらに、2016年5月には、SiCトランジスタの本命とされるトレンチ型MOSFETタイプの製品(製品名:CoolSiC)のサンプル出荷を開始し、2017年半ばから6インチウエハーラインを用いて量産すると発表している。

 これまで、高いシェアを誇るシリコンパワーデバイス事業およびSiCパワーデバイス事業と、“デバイス事業”に集中してきたInfineonだが、今回の買収には、デバイスを作るための材料である“ウエハーの製造部門”が含まれた。

 SiCウエハー製造部門を買収する狙いについて同社インダストリアル パワーコントロール(IPC)事業本部でSiC担当シニアディレクターを務めるPeter Friedrichs氏は、「SiCウエハー製造は昨今、さまざまな技術が登場し多様化している。そうした中で、SiCウエハー技術に対して、われわれの方向性を反映できるよう影響力を持ちたいと考えていたため、買収した」と説明する。

■世界SiCウエハー市場シェア33%程度

 現状、パワー、RF向けSiCウエハー市場において、Creeの事業は大きな世界シェアを握る。Infineonによるとその市場シェアは、33%程度という。そして、SiCウエハーの供給先は、Wolfspeedのみならず、さまざまなパワーデバイスメーカーが含まれる。

 Infineonでは「買収後も、当社以外のパワーデバイスメーカーにウエハーを供給するビジネスを継続し、拡大させていく。CreeもわれわれInfineonであれば、さらにウエハー販売の顧客数を増やせると判断し、われわれへの売却を決めている」(同社Corporate Vice Presidentを務めるKlaus Walther氏)という。

 パワーデバイス分野での競合メーカーがウエハービジネスの顧客となるため、ウエハービジネスの顧客離れが懸念されるが「これまでも、パワーモジュール製品で当社と競合になるメーカーに対し、パワー半導体素子を供給してきた。(ウエハーの外販も)こうした枠組みと同じであり、成功すると確信している」(Walther氏)と言い切った。

 同時に「これまで供給を受けてきたCree以外のSiCウエハーメーカーからも調達は継続する」とし、供給、調達両面で複数の選択肢を持った事業運営を行う方針を示した。

 またSiCウエハー製造事業に対する投資についても「現状、割高なSiCウエハーコストを引き下げるべく、Cree以上に投資を行う」(日本法人社長森康明氏)とする。Creeは、現在、6インチサイズのSiCウエハーを主力に製造を行っているが、既に8インチサイズのSiCウエハーのサンプル出荷を手掛けており、Infineonは買収後、8インチウエハーの増産に向けた投資を実施していくことになる。

■RFパワー世界首位の足掛かりにも

 Infineonは、Wolfspeed買収によりパワーデバイス事業とともに、RFデバイス事業の強化も図れるとする。

 Infineonは現在、シリコンウエハーやシリコンウエハー上にGaNを形成した「GaN on Si ウエハー」を用いて、パワーアンプなどのRFパワーデバイスを展開。シリコン製RFパワーデバイスでは世界第3位のシェアを有するという。一方で買収するWolfspeedは、SiCウエハー上にGaNを形成した「GaN on SiC ウエハー」によるRFデバイスを展開している。

 Friedrichs氏は「5G(第5世代移動通信)など次世代無線通信が普及する2025年には、(現在主流の)シリコンデバイスよりも高速、高出力を実現しやすいGaN on SiやGaN on SiCによるRFパワーデバイスが主流になる見込みだ。シリコンから、GaN on SiやGaN on SiCへの置き換えに合わせてシェアを伸ばし、将来的にRFパワーデバイス市場で世界トップシェアを狙う。今回の買収で、それが可能になった」と語った。

最終更新:7月22日(金)17時39分

EE Times Japan