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CMでも多数起用、専門番組も人気…国内で本格的な“ラップ”人気再燃のワケ

オリコン 7月23日(土)8時40分配信

 最近、『ファンタ』『ケンタッキー』『氷結』『東京サマーランド』『トヨタ自動車 実写版・ドラえもんCM』など、多数のテレビCMでラップミュージックが起用されているのが目立つ。また、深夜番組『フリースタイルダンジョン』(テレビ朝日系)のラップバトルが若者の間で大人気となり、高校生たちが昼休みにラップバトルする光景も見られるなど、今まさに“ラップミュージック”が復活の兆しを見せている。実際、7月10日に伝説のHIP HOPイベント『さんピンCAMP』が20年ぶりに復活したり、日本語ラップの先駆者・いとうせいこう主催のイベント『いとうせいこうフェス』が開催されるなど、ラップの人気再燃は本物。なぜ今、日本のラップが復活しているのか、日本のラップ史(HIP HOP史)を紐解きながら検証してみたい。

いとうせいこう、多岐にわたる活躍の秘訣は“HIP HOP脳”

◆90年代にはラップとJ-POPが融合した“J-RAP”も、2000年代中盤以降はその勢いにも陰り

 日本のラップは1980年代初頭、近田春夫やいとうせいこうが日本語によるラップに挑戦したことから始まるとされる。もとはアメリカ・ニューヨークの黒人の間で1960年代以降に広まった音楽で、長年アメリカでもRUN DMCが登場するまでは、“ラップ=売れない”のが常識だった。日本でも1980年代に佐野元春が楽曲に取り入れたり、吉幾三の「俺ら東京さ行ぐだ」のヒットなどはあったが、あくまでアングラな音楽だった。それが一変したのが1994年、スチャダラパーと小沢健二のコラボ曲「今夜はブギー・バック」と、EAST END×YURIの「DA.YO.NE」の大ヒットである。

 「当時の“渋谷系”と呼ばれるジャンルがHIP HOPと融合した『今夜はブギー・バック』は、ハイセンスでおしゃれ系の若者たちの間で大人気となり、HIP HOPを一般層にまで浸透させました。それにトドメを刺したのが『DA.YO.NE』です。この曲は日本のHIP HOP初のミリオンセラーとなって、全国各地で『DA.YO.NE』の“ご当地版”が出されるまでになり、地方の隅々にまでラップが行き届いたのです」(エンタメ誌編集者)

 以後、90年代はヒットチャートに数多くのラップ曲がランクインするようになり、本格派ラップミュージシャンと言えるRHYMESTERやBUDDHA BRAND、キングギドラなどのシーンを代表する面々が多数活躍する。その一方で、安室奈美恵やDA PUMPといったポップ系にもラップが普通に取り入れられ、m.c.A・Tなどが“J-RAP”などを提唱するまでとなったのだ。そして2000年代になるとDragon ASHがZEEBRAとコラボした曲が大ヒット、KICK THE CAN CREWやRIP SLIMEといったゆるくておしゃれなラップが大人気となると、もはやラップはJ-POPの枠に取り込まれたと言ってもいいだろう。

 だが、2000年代を頂点に、ジャンルとしてのラップは徐々に衰退の一途を辿ることに。それは音楽シーン全体の売上低下に伴うものであったが、それだけが理由でもない。「こうなるとダボダボの服にベースボールキャップ、たいがいがポッチャリ体型……というギャングスタ系というか、ストリート系というか、いかにも悪そうな、わかりやすいラッパーは“ダサい”存在となり、2000年代中盤以降、ラップの勢いは衰えてしまいます」(前出の編集者)

◆テレビ番組だけでなくCMでもラップを多様、18歳選挙権もラップバトルを起用

 そんなラップの人気が復活したのは、やはり2015年から放送されている『フリースタイルダンジョン』(テレビ朝日系)の影響が大きいだろう。この番組はフリースタイル(即興)のラップバトル、簡単に言えば“ラップでお互いをディスりあう(ののしりあう)=ラップによる口ゲンカ”みたいなものなのだが、これが若年層に人気となった。BSスカパー!の『BAZOOKA!!!』でも「高校生ラップ選手権」という企画もあり、8月30日に第10回目が開催されるほど、ラップが浸透している。

 最新の『トヨタ自動車 実写版・ドラえもんCM』でも、のび太(妻夫木聡)が「オレ、確かにいっつもドラ頼み でもお前は一生ドラ息子」とスネ夫(山下智久)をディスれば、スネ夫も「は? ドラ息子でナニが悪い のび太はいっつもカッコ悪い」と返し、最後はジャイ子(前田敦子)が登場して、「てか、のび太とスネ夫の分際でイキがってんじゃねえぞ」と一喝して終り……というラップバトルが繰り広げられるが、これと同じノリで高校生が休み時間中にラップバトルをしているという。さらに先述のように、『ファンタ』の菅田将暉、『ケンタッキー』の桐谷健太、『氷結』のNON STYLE・井上裕介とトレンディエンジェル・斎藤司、『東京サマーランド』のスチャダラパーなど、最近では俳優からお笑い芸人、本物のラッパーまでが出演し、CMでラップを披露しているのである。

 「何のジャンルでもそうですが、ブームが高校生にまで広がれば、それは本物と言えるし、経済効果も期待できます。実際、東京都選挙管理委員会が行なった18歳選挙権の周知キャンペーン『TOHYO都』では、『フリースタイルダンジョン』で人気となった般若さんらが登場するMCバトルが行なわれてましたから」(前出の編集者)

 いとうせいこうは以前ORICON STYLEのインタビューで、日本のHIP HOPの始まりは「アマチュアがセンスだけでプロより上に行っちゃうっていう時代の始まりだった」と語っていたが、今のラップがまさにその状態。最近では、男女7人組ダンスボーカルグループ・AAAの日高光啓のソロ名義・SKY‐HI(スカイ・ハイ)の“超高速ラップ”が話題になっているが、ラップが本格的に日本音楽シーンのメインストリームにのし上がってくる日も近いのかもしれない。

最終更新:7月23日(土)8時40分

オリコン