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2016年はピンク・イヤー!官能と狂気が暴走する問題作連続公開

dmenu映画 7/22(金) 13:00配信

「エロス」。実はこれこそが、今年の邦画界を表す重要なキーワードだ。かつて“ピンク四天王”と呼ばれた監督たちの新作映画が一挙公開されるほか、日活ロマンポルノ生誕45周年を記念した作品群も今冬公開される。2016年の邦画界は、ピンクとポルノが激突する、さながら「エロ・アベンジャーズ」の様相を呈している。

“ピンク四天王”とは、瀬々敬久監督、佐野和宏監督、サトウトシキ監督、佐藤寿保監督の4名を指す称号。1980年代後半から1990年代初頭にかけて、ピンク映画と呼ばれる成人向けエロス作品の中で、従来の成人映画にはなかった作家性と独自性を打ち出し、成人映画専門館のみならず一般の劇場で再公開されたり、国際映画祭で正式上映されたりと、ピンク映画という枠組みを超えた広がりをみせていた。

そして今年。瀬々監督はメジャー大作『64-ロクヨン- 前編/後編』を大ヒットさせ、佐野監督は約18年ぶりの新作として『バット・オンリー・ラブ』を放った。そんな活動を活発化させるピンク四天王の中で最注目なのが、佐藤寿保監督だ。4月末に映画『華魂』シリーズ第2弾となる大西信満主演の『華魂 幻影』が公開され、7月30日には日米合作の映画『眼球の夢』が公開。また来年も新作映画の封切りが予定されているというブレイクぶりだ。

佐藤監督が手掛けた作品の根底にあるのは、少女の浮遊感や視線の暴力、都市におけるコミュニケーションの断絶、アウトサイダーへの共感など。リリカルでありながらアナーキーで、血とバイオレンスとエロスが混然一体となって暴走気味に描かれる。個性的なピンク四天王勢の中でも特に強烈な作家性を持つがゆえに、沈黙を余儀なくされた時代もあったが、監督生活30年周年を迎えた今年は、新作の連続公開のみならず過去作品7本を上映するレトロスペクティブが7月23日から29日まで実施される。

最新作『眼球の夢』は、ピンク映画時代から組んでいたカルト脚本家・夢野史郎と約10年ぶりにタッグを組んで放つ、“眼球と幻肢”をテーマにした幻想ミステリー。人の眼球ばかりに固執してシャッターを切る女流カメラマン・麻耶が、脳神経外科医のドキュメンタリー監督や黒ずくめの眼球コレクターと出会う中で、体液と鮮血に塗れた悪夢的世界に身を落とす。ドイツ表現主義的映像感覚で映し出された特異世界にみうらじゅんは「エロは宇宙だ。その拡大な世界には様々なジャンルのエロが存在する。人生とはそれを捜す旅」、作家・岩井志麻子は「二度、三度と見返してみれば、とてもシンプルに優しくて美しい愛の映画だと感動できた」とのコメントを寄せている。

佐藤監督は、主演女優の潜在的なポテンシャルを最大限まで引き出すのにも長けており、映画『名前のない女たち』(2010)の主演・安井紀絵は、新人ながらもファンタジア国際映画祭で主演女優賞に輝いたほど。今回主演を務めるのは、ミュージカル出身の女優・万里紗。映画初主演ながら体当たりの初ヌードを披露するにとどまらず、眼球コレクター役の頭脳警察・PANTAから眼球を舐められたり、発狂したり、女性同士のラブシーンに興じたり、顔面に大量の鮮血を浴びたり、八面六臂の働き。万里紗の物おじせぬ狂演が、作品の大きな柱になっている。

また1981年にパリ人肉事件を起こして世界を震撼させた佐川一政氏が、あの世とこの世を繋ぐ樹海の番人・センチネルとして登場。ただでさえショッキングな背景を持っている人なのに、役どころは何かをブツブツとつぶやいているだけという薄気味悪さ倍増の配置で、不安感をあおる。ちなみに佐川氏が佐藤監督作に出演するのは、これで3度目。過去には、佐川氏が執筆した脚本で佐藤監督が映画を撮るという幻の企画も持ち上がったそうだが、未だ実現せず宙ぶらりん状態という。

『眼球の夢』は、シネコンでは絶対にお目にかかる事の出来ないミッドナイトムービーであり、下半身以上に脳天を直撃する悪夢的逸品。東京では7月30日に東京・渋谷のシアター・イメージフォーラムにて、連日“レイトショー”公開される。

石井隼人

最終更新:7/22(金) 13:00

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