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ソフトバンク孫社長、「直感買収」が復活

ニュースソクラ 7月22日(金)12時0分配信

後継者アローラ氏「解任」でブレーキ役消える

 ソフトバンクの孫正義氏が再び大型買収に乗り出した。冒険的にみえる英半導体設計会社ARMの買収は、後継者と公言していたアローラ氏のくびきから逃れた孫氏流経営の復活と見られる。ソフトバンクはどこに行くのだろうか。

 まずは、まだ一ヶ月もたっていないアローラ氏の退任劇から振り返ってみよう。

 孫社長が後継者に指名し、社長を禅譲すると公言していたニケシュ・アローラ前副社長氏の退任は突然だった。退任発表が株主総会前夜という電撃的で異例な日時だったことも波紋を呼んだ。顧問という肩書は残るが、ヤフー会長、スプリント取締役など全ての役職を辞任した。

 アローラ氏は、インド生まれの48歳。89年渡米しMBA取得。米投資会社通信アナリストを経て99年渡欧し、ドイツテレコム傘下のTモバイル取締役として活躍。04年米グーグルに移り手腕を発揮、11年上級副社長へ昇りつめた。SBGには14年9月孫氏が三顧の礼で引き抜いて、2年足らずだった。

 孫氏は自社株を2割保有の筆頭株主だが、8割の株主に対して総会前日に豹変。総会議案にはアローラ氏再任の議題が織り込まれており、事前に株主権を行使した株主の権利を無にした。株式公開企業ではあるが、「個人オーナー」的統治スタイルをみると、上場は資金調達手段でしかない様な振る舞い方だ。

 不可解な動きもあった。今年1月、匿名の一部海外投資家が米法律事務所を代理人としアローラ氏の実績や適性に疑問を呈する書簡をSBG宛送った。SBGは特別調査委員会を設置し内部調査を実施したが、6月20日「アローラ氏に問題はない」との結論を出した矢先だった。

 孫氏の「5年から10年もっと社長をやりたくなった」という釈明を額面通りに受け取る人は少ない。SBGは6月20日~21日の2日間で激しく揺れ動いた。「決定的対立」の原因となり「アローラ解任」に繋がる3つの出来事があった。

アローラ副社長が、600億円の「自社株購入」

 アローラ氏は昨年6月副社長に就任後、「個人でSBG株600億円を買い付ける」と公表。購入資金は、SBG主幹事証券の野村證券が貸付けることとなった。巨額個人貸には人的・物的担保が必要。孫氏が保証人となり、孫氏所有のSBG株式を担保に差し入れた。購入後、アローラ氏は個人として孫氏に次ぐ大株主となり「SBG2.0」(トップ二人体制)が始動した。

 アローラ氏自社株買いの直前にも、SBGは1200億円の自社株買いを実施。一連の動きについて市場関係者は、スプリント不振による株価低迷のテコ入れ策だと見ている。

 SBGは、「ニケシュ副社長が長期にわたって当社の経営に携わる姿勢を示したもの」としているが、孫氏の担保提供や保証人などのお膳立てから見て、孫氏からの強い要請でもあった。結局、退任により600億円のSBG株式は、6月21日の終値で孫氏が買い取り、約2割の売却損で手仕舞った。

 孫氏の力の源泉はSBG発行株式の2割に当る保有株だ。しかし、SBG株はスプリントを買収した年の13年12月の高値9320円から4割下落し低迷中。源泉維持のため株価刺激策を絶えず模索していた。

 SBGとスプリントの株価チャートは、ほぼ相似形であり株価連動性は高い。スプリント業容不振から16年2月、SBGもスプリント株価も大きく下落。SBGは昨年の1200億円に続き2月15日、今後1年間をかけて過去最大規模となる5000億円を上限に自社株買いを行うと発表。しかしアローラ氏は、むしろ「抜本策はスプリント処理」との意識を高めた。

孫氏の投資手法は「趣味的」と酷評

 孫氏「続投」の説得力のなさに比べ、アローラ氏の「孫氏を手助けし、グループ変革の種まきができたことは大きな経験だった」という「お別れの辞」は意義深い。アローラ氏は、孫氏にものが言える唯一の存在だった。メディアの取材に対して、孫氏の投資手法を「趣味的」と公言して憚らない。
 
 3月新設のSBG海外事業統括・中間持株会社の最高責任者に就任したアローラ氏は堰を切ったように投資回収に乗り出した。売却が苦手な孫氏を賺し、初めてアリババ株1兆円を売却。ガンホーとスーパーセル(フィンランドのゲームメーカー)売却と合わせて、「怒涛の2兆円」売却を達成。突然の退任間際まで「チーム・ニケシュ」が交渉に没頭。アローラ氏がSBGに連れてきた部下が世界各地でフル回転。アローラ氏は「アリババ株売却で得た資金は財務の改善に充てる」と明言。

 しかし「趣味的」との表現に内心穏やかでなかった孫氏は、「財務の改善」だけでは縮小均衡になり株価にマイナス。2兆円を原資に「新規前向き投資」を主張。投資手法で超え難い溝ができた。

 子飼いの宮内謙氏をアローラ氏の後任に戻し、「直感の孫氏」が再び本領を発揮しだした。SBは7月18日、英国の大手半導体設計会社ARM・ホールディングスを3.3兆円で買収すると発表。僅か2週間のスピード交渉で決着したが、日本企業による海外企業M&Aでは過去最大規模。IoT事業の成長分野とは言え、年間売上は1350億円(15年12月期)で、投資額は売上の24倍と巨額であり、株式市場は厳しい反応を示している。

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最終更新:7月22日(金)12時0分

ニュースソクラ