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アジアも「IS vs.アルカイダ」宣伝競争の舞台に イスラム過激派のいま

THE PAGE 7月23日(土)15時0分配信

 バングラデシュの首都ダッカで7月1日にレストランが襲撃され、日本人7名を含む21名が殺害されました。「親日的」といわれるこの国で、しかも援助関係者が殺害されたこの事件は、日本で大きな注目を集めました。

【図解】アルカイダかISか 宗派は? 林立するイスラム過激派を分類

 この事件では、過激派組織「イスラム国」(IS)が犯行声明を出しています。中東やヨーロッパだけでなく、最近はアジアでもテロ事件が増える傾向にあります。アジアのイスラム過激派についてまとめます。(国際政治学者・六辻彰二)

IS誕生を契機に再びテロ犠牲者が急増

 米国のシンクタンク、ピュー・リサーチ・センターによると、今回テロ事件が発生したバングラデシュでは、ムスリムが人口の89.8%を占めます。この国が位置する南アジアは、パキスタンやアフガニスタンが近いこともあり、もともとイスラム過激派の活動が活発な地域です。

 その中にあってバングラデシュは、周辺国と比べて、総じて安定しているとみられてきました。しかし、それでも図1で示すように、2014年以降テロの犠牲者は増える傾向にあり、2015年には米国同時多発テロ事件やアフガン戦争が発生した2001年を上回るに至りました。テロ事件が急増し始めた2014年は、ISが「独立」を宣言した年です。

 ISは今回の事件に犯行声明を出していますが、これに対してバングラデシュ政府は「国内にIS系組織はない」と強調しています。米国の調査機関インテル・センターは、ISを支持、あるいはこれに忠誠を誓う43組織をリスト化していますが、この中にもバングラデシュの組織は含まれていません。

ローカル組織とISが事実上連携か

 しかし、公式な関係は確認されないものの、ISはバングラデシュのローカルな組織と事実上連携しているとみられます。バングラデシュにイスラム国家の樹立を目指すジャマートゥル・ムジャヒディン・バングラデシュ(JMB)は、その筆頭です。JMBはもともとアルカイダやタリバンと良好な関係にありました。しかし、2015年11月4日にダッカ近郊のアシュリアで警官が殺害され、ISが犯行声明を出した事件に関して、現地のデイリー・スター紙などはJMBの関与を指摘しています。

 その一方で、バングラデシュのローカルな組織のうち、やはり活動を活発化させているアンサールアッラー・バングラ・チーム(ABT)は、JMBがISと距離を縮め始めるのと入れ違いのように、アルカイダとの連携が目立つようになりました。2015年10月31日にダッカで、世俗的な主張で知られるブロガーや編集者が相次いで殺害された事件では、インド亜大陸のアルカイダ(AQIS)だけでなく、AMBも犯行声明を出しています。

 これらの事件は、1週間も経たない間に、ダッカ周辺で相次いで発生しました。イスラム過激派の世界では、ISとアルカイダの勢力争いが激しくなっています。「本家」同士が対立する中、同じ国で二つの系列の組織が活動すれば、それぞれが支持者や献金を集めるための「宣伝競争」になりやすい構図が生まれます。つまり、IS系とアルカイダ系のそれぞれの組織が、世界的にメディア露出の高いテロを、先を競うように起こしているのです。バングラデシュも、その一つの舞台になりつつあるとみてよいでしょう。

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最終更新:7月23日(土)15時0分

THE PAGE