ここから本文です

ソニックブームをコントロール 超音速旅客機、再起なるか マッハ5以上も?

乗りものニュース 7月23日(土)16時35分配信

エンジンの騒音どころではない「ソニックブーム」

 超音速飛行する航空機から生じる「ソニックブーム(衝撃波)」――この強烈なエネルギーは、ときに地上のガラスさえも割ってしまうほどの破壊力を有し、およそ50km先まで轟音を響き渡らせることすらあります。

 ソニックブームは、これまで航空機の超音速飛行時における最大の障害であり続けてきました。しかし、その問題も過去のものになるかもしれません。

 2016年2月29日、アメリカのロッキード・マーチン社とNASA(連邦航空宇宙局)は、ソニックブームの発生を軽減する静粛超音速旅客機「QueSST」を実現するため、共同で「Xプレーン(研究機)」の開発を行うと発表しました。

「QueSST」は、一般的なジェット旅客機における飛行速度の2倍弱に匹敵するマッハ1.4(1770km/h)、すなわち音速の1.4倍で飛行する性能が与えられ、2020年代に飛行試験を実施することが予定されています。

 超音速飛行におけるソニックブームの発生はいわば“宿命”であり、残念ながらこれを全くゼロにすることはできません。しかしながら、地上からはほとんど知覚できないほど弱めることによって、「QueSST」は「静粛超音速」の名のとおり、静かに超音速飛行する技術の実証を目指します。

 しかし「QueSST」は、どのようにソニックブームを低減するというのでしょうか。

「なくす」のではなく、ソニックブームを「コントロール」する

 ソニックブームは、超音速飛行する航空機のどこか1か所から生じるのではなく、機体表面の様々な場所において、強さも指向性も異なったものが複数発生。この複数のソニックブームが重なりあい倍加していくことによって、強烈な爆発音が生じるのです。「静粛超音速」はこのソニックブームの発生をコントロールし、重なり合わないよう散乱させることによって達成されます。

 ソニックブームをコントロールするためには、従来の旅客機のような“チューブ型の胴体と翼”ではなく、非常に長い機首と胴体および“デルタ型”の翼を円滑に接続し、機体表面の圧力と揚力の分布を極めて慎重に調整することが重要になります。

 従来型の超音速旅客機は高度2万メートルを飛行中でも、ソニックブームの発生により地下鉄の車内に匹敵する90デシベルの騒音が地上に到達しました。「QueSST」では、これを通常の会話と同等の60デシベルにまで抑えることができると見込みます。

 かつて唯一無二の現役超音速旅客機であった「コンコルド」は、ソニックブームの問題からアメリカ本土上空における超音速飛行が禁止されていました。2003(平成15)年に同機がリタイアしてのち、営業運航される超音速旅客機は1機も存在しなくなってしまいましたが、「QueSST」は陸上における超音速商業飛行を解禁させ、将来の静粛超音速旅客機実用化へ道を開くものとして、その成果が期待されています。

1/2ページ

最終更新:7月23日(土)19時37分

乗りものニュース