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テロ多発、世界の政治指導者に求められる経済政策とは

ニュースイッチ 7月23日(土)10時34分配信

福祉に準ずるより良い需要管理を

 米国市場では、好調な企業決算を受けて20日もダウ平均株価が小幅上昇し、9営業日連続して最高値を更新した。株式相場はリスクオンの状態で、日本も円安・株高で日経平均株価も1万6500円台まで戻った。一方で、南仏ニースのテロ、トルコのクーデター未遂、南シナ海の緊張など、テロや戦争の火種が世界中に散りばめられている。

 問題は一般市民、特に若い世代が政治指導者への信頼を失い、国民経済や市民生活の実態が政治や国際金融市場の現場とかけ離れてしまっている点にある。これは先進諸国に共通した問題点である。

 リーマンショック後、先進国は中央銀行による超緩和策を実施し、増大した紙幣で民間投資銀行の失敗のツケを払い、信用逼迫(ひっぱく)の危機から経済・金融を立ち直らせようとした。

 一方で、通貨量が増えて投機的マネーが相場をにぎわしたものの、教育やインフラ整備、労働者の技術研修、福祉への予算が十分回らなかったことで、市民社会に格差が拡大していった。

 こうした一連の政策の不備のしわ寄せは社会的弱者や若い世代に及び、彼らの生活が苦しくなっている。以前から筆者は「ミレニアル世代」(1980年から2000年代初頭に生まれた「フェイスブック」世代)の動向に注目してきた。

 英国のEU離脱をめぐる国民投票において、この世代の75%が残留を支持した。また、米国民主党大統領候補サンダース氏を強く支持したのもこの世代だった。

 ネットリテラシーが高く、働き盛りの若い世代とその子どもたちがこれからの21世紀の担い手である。にもかかわらず、彼らの将来への希望は既存の体制に裏切られつつある。

 彼らは、既得権益を死守する既成権力が自分たちの将来を犠牲にし、不当な利益を享受していると感じている。彼らが反エスタブリッシュメントに傾き、社会変革を望むのはより良い未来を望むからである。

 さて、先進諸国では国民経済を持続的成長させるための政策が急がれる。日本でも成長戦略や構造改革、財政健全化が叫ばれて久しいが、根本的には何も解決されていないまま、産業構造は変化し、かつての大企業は衰退し、小が大をのみ込む時代になっている。

 それでも規制緩和は進まず、財政赤字は増加の一途をたどる。日本では労働人口が毎年1%ずつ減少していくなか、技術革新を進め、労働生産性を上げなければ、労働力をフルに使った自然成長率さえ維持することはできない。

 さらに借金を減らし、教育、インフラ整備など公共の福祉に準ずるより良い需要管理政策が望まれる。さもないと、社会変革と成長が手に手をとって前進することはできない。

大井幸子(国際金融アナリスト兼SAIL社長)

最終更新:7月23日(土)10時34分

ニュースイッチ