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社説[トランプ氏指名]「排外主義」を憂慮する

沖縄タイムス 7月24日(日)5時0分配信

 米共和党の実業家ドナルド・トランプ氏(70)が党大会で演説し、大統領候補指名を受諾した。トランプ氏は、安全保障や経済政策で国益を最優先すると強調。「アメリカ・ファースト(米国第一主義)」を掲げ、「米国を再び偉大にする」と宣言した。
 米国第一主義を象徴するように、不法移民対策として持論のメキシコ国境に壁を建設する考えを改めて表明した。
 テロ対策の一環としてイスラム教徒の入国禁止策を掲げている。演説では「テロがはびこる国」の人々と、名指しを避けてイスラム教徒を敵視するトーンを弱めたが、「排外主義」に変わりはない。
 自由と平等、多様性を尊重する米国に、トランプ氏の主張を受け入れる土壌が形成されていることを憂慮する。
 指名受諾演説は本来、本選に向け党の結束を固め、大統領に選ばれた際の4年間のビジョンを国民にアピールするのが狙いである。
 トランプ氏の演説は、いずれにおいても成功したとはいえないものだった。
 大統領経験者ら党重鎮が欠席し、党が一枚岩でないことを露呈した。予備選で相手候補と過激な発言で中傷合戦を演じた党内の亀裂は修復されていない。指名獲得を競った上院議員が演説でトランプ氏の支持表明を拒み、ブーイングが飛び出す一幕があったことからも分かる。ビジョンについても米国中心の内向き志向が目立ち、国民融和を呼び掛けるメッセージに欠けた。
 だが、予備選の当初、泡沫(ほうまつ)候補とみられていたトランプ氏が共和党の候補者指名にまで上り詰めたのは、格差が広がる既存政治に対し、白人低所得層の不満をすくい上げた結果でもある。
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 仮にトランプ氏が大統領になれば、日米関係にも大きな影響を与える可能性がある。
 演説でトランプ氏は、日本などを念頭に同盟国に応分の防衛費負担を求めた。
 トランプ氏は米軍駐留費の全額負担を要求し、日本が応じない場合は米軍撤退もあり得ると発言している。
 これまで日本における基地政策は共和党、民主党による違いはほとんどない。
 日本は「思いやり予算」を毎年2千億円近く支出している。集団的自衛権の行使を可能にする安全保障関連法を成立させることを、安倍晋三首相が最初に米議会で表明したことからも分かるように米国の要求に応じたものだ。
 県はトランプ氏が大統領になる場合を想定して、ワシントン駐在員を通して情報収集をしておく必要がある。
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 対する民主党は今週の党大会でヒラリー・クリントン前国務長官(68)を党候補に正式指名する。
 米欧でテロが頻発し、米国内では白人警察官による黒人射殺事件に端を発した報復が続く。トランプ氏は銃規制に反対し、クリントン氏は銃規制の強化を訴えている。
 米国は陰りが出たとはいえなお、世界の超大国だ。その指導者を選ぶ大統領選は11月8日。その間、トランプ氏の極端な排外主義的な発言が対立と差別をあおり、国内を分断しないかを心配する。

最終更新:7月24日(日)5時0分

沖縄タイムス