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土産物屋とレストランだけの「地方空港」経営苦境は当然? どうなる高松空港民営化

ZUU online 7/24(日) 11:10配信

国土交通省は香川県の高松空港の民営化に向け、運営権を売り出すことを明らかにした。国が管理する空港の運営権売却は、7月から民営化された宮城県の仙台空港に次いで2例目。9月に募集要項を示して早ければ来年夏ごろに売却先を決定、2018年度からの民営化を目指している。

国交省は今後、全国の空港に民営化を広げる方針。高松空港は仙台空港と比べると小規模で経営環境が厳しいものの、民営化に成功すれば政府の方針に弾みがつきそうだ。

■空港施設は国が保有、運営権を民間会社へ

国交省によると、売り出される高松空港の運営権は15年間で、最長40年間の延長が可能。国が空港の施設を保有したまま、民間会社に運営権を与えるコンセッション方式を取る。公募で運営権を得た企業が特別目的会社を作り、ターミナルビルと一体で運営、着陸料も自由に決める。

地元の声を反映させるため、地元自治体の香川県、高松市、綾川町が、運営会社に合計10%を超えない範囲で出資、非常勤取締役1人を派遣する。香川県は当初、25%未満の出資を希望していたが、経営介入を心配する民間に配慮して出資比率の上限を抑えたという。

高松空港は羽田、成田、那覇、台北、上海、香港、ソウルの計7路線が運航し、2015年度で過去最高となる178万人の利用があった。徳島県との県境に近い場所に位置し、香川県だけでなく徳島県や愛媛県からの利用者も多い。

空港ターミナルビルの収益を合わせても営業赤字が続き、経営環境が厳しいことを国交省も認めている。しかし、空港ビルの物販収入を使い、着陸料を下げるなどのさまざまな工夫が可能だ。国交省空港経営改革推進室は「新規路線の拡大などに期待が持てる」としている。

高松空港の民営化に対しては、民間企業から積極的な反応が寄せられている。国交省が2015年、民間企業の投資意欲を調査したところ、商社や不動産大手、ゼネコンなど93社が関心を寄せた。仙台空港で同様の調査をした際の71社を上回っている。

香川県の浜田恵造知事は「既存の交通ネットワークやノウハウを生かし、地域活性化に向けて積極的に取り組んでいきたい。参加事業者には地元と連携しながら、民間の知恵や能力を存分に発揮して県民が実感を持てる積極的な提案を期待する」とのコメントを発表した。

■福岡、広島、新千歳でも民営化を検討

民営化された空港には、国出資100%の特殊会社・新関西国際空港が運営していた大阪府、兵庫県の関西、伊丹両空港、国が管理していた仙台空港がある。

関西、伊丹の両空港はオリックス <8591> 、仏空港運営大手バンシ・エアポートのグループが設立した関西エアポートが4月から、仙台空港は東京急行電鉄 <9005> 、豊田通商 <8015> 、前田建設工業 <1824> などが出資する仙台国際空港が7月から運営している。

国交省はさらに空港民営化を各地に広げる方針で、福岡県の福岡空港、広島県の広島空港、北海道の新千歳空港なども検討対象に入れている。

福岡空港は誘導路の複線化工事と国内線の新ターミナルが完成する2018年度末をめどに検討を進めているもよう。運営権売却で得た資金を2本目の滑走路建設に充てる考えも持っている。広島空港は広島県が国に民営化を求めるかどうかの判断材料とするため、収支見通しの調査を進めている。

新千歳空港は北海道内にある国管理の稚内、釧路、函館の3空港と一体で民営化することが検討されている。新千歳を除く3空港は人口減少の影響で単独での経営改善が厳しい見通しで、複数の空港を一括運営することによりスムーズな民営化を想定しているわけだ。ただ、一部地域には慎重論が残っている。

■国管理の空港で黒字は全国で5つだけ

地方空港の経営状況は総じて厳しい状況にある。国交省がまとめた2014年度の空港別営業損益では、空港本体事業と空港ビルなど関連事業を合わせて黒字を出したのは、新千歳、羽田、小松、広島、松山の5空港にとどまった。

耐震、老朽化対策や滑走路増設に向けた調査などから、福岡、熊本、宮崎、鹿児島の九州4空港が前年度の黒字から赤字に転落している。埋め合わせには、首都圏をはじめとする国民の税金が投じられているわけだ。

国管理の空港で損益分岐点となる乗降客は、一般に250万人前後といわれている。しかし、航空需要の乏しい地域で短期間に乗降客を増やすのは難しいことから、国交省は民間の柔軟な発想に期待している。

民営化で大きく変わった実例は高速道路のサービスエリアだ。以前は公団の外郭団体が独占して所管し、簡単なレストランとトイレ、土産物店ぐらいしかなかったが、民間企業や地方自治体の参入を認めたことから、さまざまな施設が建設されるようになった。

今では趣向を凝らしたレストランや直売所のほか、ハイウェイホテルや温泉、アミューズメント施設まで設けられ、地域の人気観光スポットとなったところが少なくない。

羽田や関西など大規模空港は現在も多様な物販、飲食店を備え、商業拠点ともいえる存在になっているが、地方空港となると昔ながらのレストランと土産物店しかないところが多く残っている。

空港は年間に10万人、100万人単位の人が集まるターミナルだ。民間の知恵と工夫でどうやって経営を改善し、地域の発展につなげていくのか、真価が問われるのはこれからだ。


高田泰 政治ジャーナリスト
関西学院大卒。地方新聞社で文化部、社会部、政経部記者を歴任したあと、編集委員として年間企画記事、子供新聞などを担当。2015年に独立し、フリージャーナリストとしてウェブニュースサイトなどで執筆中。マンション管理士としても活動している。

最終更新:7/24(日) 11:10

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オリックス8591
1721円、前日比-40.5円 - 12/5(月) 15:00

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東京急行電鉄9005
826円、前日比-10円 - 12/5(月) 15:00

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豊田通商8015
2908円、前日比-9円 - 12/5(月) 15:00

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