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「先生、この薬とこの薬ちょうだい!」薬局ではありません…まず医師を信頼して

デイリースポーツ 8月2日(火)17時12分配信

 診察室には十人十色の“ドラマ”があります。何事も単純にはいかないようです。兵庫県伊丹市で地域のホームドクターとして奮闘を続けている、たにみつ内科・谷光利昭院長(47)は、患者と医者が信頼関係を保つことが、治療で最も大切だと強調しました。

 ◇   ◇

 隣のおばちゃんは何でも知っている。

 「先生、血圧の薬は飲んだら一生飲まなアカンやんな!」

 「えっ、誰に聞いたの?」「隣のおばちゃん」

 「先生、高脂血症の薬って一生飲まなあかんやろ?」

 「えっ、誰に聞いたの?」「隣のおばちゃん」

 「先生、インスリンって使ったら、もう終わりやんな?」

 「えっ、誰に聞いたの?」「隣のおばちゃん」

 「先生、がんになったらもう終わりやんな?」

 「えっ、誰に聞いたの?」「隣のおばちゃん」

 他にも数えきれないエピソードがあります。ある病棟で進行がんであることを告知せずに抗がん剤の治療をしていた患者さんに対して「あんた、これ抗がん剤やな。大変やな。頑張りや!負けたらあかんで!」って…その患者さんにすれば晴天の霹靂(へきれき)です。もちろん、悪気はないのですが…。

 知りたくなくても色々なところから情報が入ってきます。医学の基礎知識がない一般の人たちが与えられた情報を正しく理解することは難しいでしょう。われわれ医師も、薬屋さん(MRさん)から与えられた情報だけを鵜呑みにして患者さんに薬を投与することは危険だと言わざるを得ません。

 今の医療はEBMといって「理論的根拠に基づいた医療」を薦められていますが、EBMは操作することが可能なのです。そこには、医療の落とし穴があるような気がします。われわれは統計学的有意差を用いて、理論を推し進めていくことが多いのです。そんな中であってはならないことですが、データは意図的に作ることも可能なのです。ですから、EBMを鵜呑みすることは危険を伴うこともあるのです。もちろん、ほとんどのEBMが最大の善意、最新のデータ、最新の知識を用いて作製されていることは紛れもない事実です。ただ、例外もあるということです。

 時々、おばちゃんでも、われわれ医師が“驚くような情報”を伝えてくれることがあります。医師は基礎知識があるので、ある程度正しく取捨選択することができます。しかし、医学的知識を持ち合わせていない一般の人たちに正しい取捨選択は難しいのです。

 こんな患者さんがおられます。「先生、この薬とこの薬をちょうだい!」。ここは、薬局ではないし、劇薬をそんな簡単に渡せません。その理由を分かりやすくお話したつもりですが、時折、激昂される方がおられます。もっとひどくなると、勝手に間違った診断をつけて来院されて、私はこの病気だからこの薬が欲しいとおっしゃる人もおられます。また、私に相談しに来ているふりをするのですが、最終的には自分の考えと違うことを説明すると激昂される患者さんもおられます。

 医師は最大の善意をもって医療行為に臨まなければなりません。そして、患者さんにそのことを信じていただくしかありません。確かに医師によって違った考えがありますので、あそこの病院ではこう言われたけど、ここは違うこと言うなぁ…って事は少なくないでしょう。ただ、両方とも正しいことも多々あるのです。

 非常に難しいのですが、最終的には信頼関係のもとに医療行為を行うしかありませんし、私は信じて頂けるように精進していくつもりです。最近、診察室で感じたことをお話ししました。

最終更新:8月2日(火)17時29分

デイリースポーツ