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国の制度よりも医療・介護の負担軽減は現場ニーズから

日刊工業新聞電子版 7月24日(日)14時39分配信

メーカーの“目利き力”で新しい製品やサービス続々

 団塊世代が75歳以上になる超高齢化社会が2025年に到来する。それに伴い、医療機関の再編や地域で医療・介護を一体提供する仕組みが整備さ」れるなど、国の医療・介護制度も変貌している。こうした中、現場の業務負担の軽減や、患者の生活の質(QOL)向上による「選ばれる病院」づくりが求められ、現場改善につながる製品・サービスの投入が相次いでいる。

 病棟や介護施設で24時間稼働するスタッフステーションは、スタッフの働きやすい環境づくりが重要テーマに浮上している。

 コクヨの医療用カート「モビーナ」は、使わない時に重ねて収納できるスタッキング(積み重ね)カートだ。四方から作業できる作業台「メディレージ」とともに、スタッフステーションのスペース確保や業務効率向上を支援。「直接現場に足を運び、現場観察に基づいて商品化した」(ファニチャー事業本部)ことが強みだ。

 また、イトーキは立位と座位を切り替えられる電動上下昇降テーブル「メディワークトイロ」、トレーの収納量を従来比50%増にした「同カート」を17年に発売する。

 患者の介護・自立支援に向け、介助者の業務負荷軽減も急務だ。移乗機器・電動ベッドを輸入・販売するケアフォース(東京都千代田区)は、テコの原理で患者の抱き起こしを簡単にできる起き上がり補助機「シーバ」を提案する。北村健太社長は「簡単な仕組みで介助者の腰痛を防げる。病院などの反応も良い」と期待する。

 入浴時の「抱きかかえゼロ」を打ち出すのは酒井医療(東京都新宿区)だ。シートの回転を利用してスライドするボードをストレッチャーに差し込むと、浴槽への移乗をスムーズにできる。移乗回数を減らす着衣チェアや着衣ベッドとともに介助者の身体的負担を軽減する。

 アマノ(静岡県磐田市)は、広さ2メートル×2メートルの狭い空間に設置できる入浴バス「ヌクティ」の受注を始めた。専用のチェアを使い、座面をスライドするだけで浴槽に入れる。「コンパクトだが、しっかり入浴できる。省スペースのニーズは多い」(営業部)とみる。

 患者の快適な療養環境として、イトーキは多床室向けに「準個室ユニット」を提案する。従来はカーテンで仕切っていた病室スペースを、パーテーションで仕切ることで患者のプライバシー向上につなげる。投資を抑えながら患者の個室化ニーズに対応できる。「患者が病院を選ぶ時代が来る。患者の療養環境向上と病院経営に貢献する」(企画本部)。

 シーホネンス(大阪市東成区)は、頭部を0度―48度まで傾けることができる医療用ベッドを発売した。ベッドで食事する際の誤えんリスクを低減する。「食事や口腔(こうくう)ケアがしやすくなり、患者の意欲の回復、早期離床、早期退院に寄与したい」(事業戦略室)と期待する。

<解説>
 現場のきめ細かいニーズの吸い上げは製品開発には欠かせない要素だ。ただ、あまりにもニッチすぎる意見を反映しても、その機能が実際には使えない、使い勝手が悪くなるというケースもあるのではないか。現場のニーズは千差万別で、それが多くの現場で共通した課題なのか、メーカー側の“目利き力”が問われる。

最終更新:7月25日(月)9時54分

日刊工業新聞電子版