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IT業界に就職したら“ナウい”働き方できますか?

@IT 7月25日(月)6時10分配信

 IT業界就活のイロハを解説する本連載、前回、前々回と2回に分けて、「IT業界就活の超基本」をお伝えした。

【その他の画像】テレワークの導入状況

 学生諸君の中には、テクノロジーを駆使した自由な働き方に憧れている人も多いだろう。IT業界なら、働く場所や時間などに縛られない“ナウい”働き方を手に入れられるだろうか。

 「就活のトリセツ」第9回は、「IT業界のワークスタイル」を解説する。

●“ナウい”働き方――その1「テレワーク」

 「ワークライフバランス」重視の時代。さまざまな「新しい働き方」を導入する企業が、近年増えている。給料は簡単には上げられないが、新しい働き方で社員の生活向上を実現しようということだ。

 働く側も、「仕事内容」「待遇」に次ぐ第三の軸として「働き方を基準に」仕事を選ぶ人が増えている。さらに、国の機関も、こぞって新しい働き方を推進しようと支援している。

○テレワークとは何か

 新しい働き方の1つが、「テレワーク」だ。

 情報通信機器などを活用し、時間や場所の制約を受けずに柔軟に働く勤労形態で、こうした働き方をする人を「テレワーカー」と呼ぶ。

 総務省は、テレワークの意義・効果として下記を定義している。

*少子高齢化対策の推進
・人口構造の急激な変化の中で、個々人の働く意欲に応え、その能力を遺憾なく発揮し活躍できる環境の実現に寄与
・女性・高齢者・障がい者等の就業機会の拡大
・「出産・育児・介護」と「仕事」の二者選択を迫る状況を緩和
・労働力人口の減少のカバーに寄与

○ワーク・ライフ・バランスの実現

・家族と過ごす時間、自己啓発などの時間増加
・家族が安心して子どもを育てられる環境の実現

○地域活性化の推進

・UJIターン・二地域居住や地域での企業などを通じた地域活性化

○環境負荷軽減

・交通代替によるCO2の削減等、地球温暖化防止への寄与

○有能・多様な人材の確保生産性の向上

・柔軟な働き方の実現により、有能・多様な人材の確保と流出防止、能力の活用が可能に

○営業効率の向上・顧客満足度の向上

・顧客訪問回数や顧客滞在時間の増加
・迅速、機敏な顧客対応の実現

○コスト削減

・スペースや紙などオフィスコストの削減と通勤・移動時間や交通費の削減等

○非常災害時の事業継続

・オフィスの分散化による、災害時等の迅速な対応
・新型インフルエンザ等への対応


 仕事と生活の両立を図ること、育児や介護など多様な理由で働くことが厳しい弱者を支援することなど、いいことずくめで、厳しい労働環境から国民を救う「切り札」という位置付けなのだ。

●テレワークの普及度合い

 テレワークはジワジワと浸透している。

 総務省の調査によると、在宅勤務など会社以外で働くことを認めるテレワークを導入する企業は、調査企業全体に占める割合は2000年末時点で2.0%だったが、2014年末には11.5%になった。

 中でも興味深いのが、資本金50億円以上の大手企業では、テレワークの導入率が50.9%に達し、半数を超えているという点だ。

 これは、テレワークがトライアル導入の時期を過ぎ、既に本格導入期に入ってきたことを示している。実施企業は情報漏えいといったセキュリティ対策などにフォーカスを移してきており、今後も導入を図る企業は増えていきそうだ。

○テレワーク導入企業例「トヨタ自動車」

 つい最近、大きなニュースが新聞紙面を賑わせた。トヨタ自動車が全ての総合職社員2万5000人を対象に、在宅勤務を導入するというのだ。

ほぼすべての総合職社員を対象とした在宅勤務制度を8月にも導入する。週1日、2時間だけ出社すれば、それ以外は自宅など社外で働ける。多様な働き方を認め、男性の育児や女性の活躍を後押しする。親の介護による離職も防ぐ対象は一般に総合職と呼ばれる社員で、トヨタでは人事や経理、営業に携わる事務職と、開発などを担当する技術職。トヨタ本体の社員約7万2000人(3月時点)のうち、約3分の1にあたる2万5000人程度情報漏洩対策では、データを外部のサーバで集中管理して端末に残さないクラウドの仕組みを使ったPCを大量導入し、紛失時のリスクを減らすトヨタ、総合職に在宅勤務 8月めど2万5000人対象(出典:2016年6月9日日本経済新聞電子版)

 同社は対象を限定して導入実験を繰り返しており、その成果と課題を検証して本格導入に踏み切ったようだ。こうした実例は、在宅勤務の導入にプラスの効果をもたらすだろう。

○テレワーク導入企業例「日本ヒューレット・パッカード」

 IT企業の“ナウい”働き方の導入の先がけは、2007年に日本ヒューレット・パッカードが導入した「フレックスワークプレイス制度」だろう。

 1カ月のうち数日間、1日の就業の全部または一部を、自宅で就業することを認める制度で、対象を基本「全職種」としているのが大きな特徴だ。

●“ナウい”働き方――その2「時短勤務」

 時短勤務も、最近増えてきた“ナウい”働き方だ。

○時短勤務導入企業例「ファーストリテイリング」

 昨年、ファーストリテイリングが地域正社員で週休3日制を導入して話題になった。

 世の中に週休2日制をとる企業はたくさんある。これは、労働基準法で「1週間の法定労働時間は40時間以内」と定められているため、「1日8時間勤務×週5日=計40時間」と計算するのが“フツー”だからだ。

 ファーストリテイリングは労働基準法をフレキシブルに捉え、「1日10時間勤務×週4日=40時間」と計算したのだ。「週に3日休める」というメリハリある勤務形態は、若手に人気のようだ。同社は、平日は比較的少ない人数で営業できるし、休日は多くのスタッフが稼働しなければならないため、この人事制度は会社にとっても大変合理的なのだ。新しい企業は組織運営の方法も柔軟だ。

○時短勤務導入企業例「日本アイ・ビー・エム」

 日本アイ・ビー・エムの短時間勤務制度「e-ワーク制度」は大胆だ。

 なんと、「通常の80%(つまり週休3日)」「60%(週休4日!)」といった勤務日数で働けるのだ。優秀な社員がさまざまな事情でフルタイム勤務が難しくなった場合に対応できるし、状況が変わったら元のキャリアに復帰できるので、社員にとってうれしい制度である。

●複合型“ナウい”働き方

 正社員は固定した働き方で、仕事量が増えたら非正規社員で調整する――これが従来型の労務管理だとすれば、そんな時代はもう終わるのではないだろうか。

 これからは正社員の働き方にも変化を持たせ、「ワークキャリア」だけでなく「ライフキャリア」の充実を図る企業に、人気が集まると筆者は予想する。新しい働き方は、今や企業にとっては、採用の成果に直結する要因の1つになっている。

○“ナウい”働き方の総合デパート「サイボウズ」

 サイボウズは、新しい働き方のデパートだ。

 同社では「離職率が過去最高を記録した2005年以降、『より多くの人が、より成長して、より長く働ける環境を提供する』とポリシーを定め、ワークライフバランスに配慮した制度や、社内コミュニケーションを活性化する制度を採り入れてきました。その結果、離職率は28%から4%へと低下」したという(ワークスタイル出典:サイボウズ企業・IR情報)

 「育児・介護休暇制度」を2006年にいち早く導入したのをはじめ、2010年には「在宅勤務」を制度化。2012年には「ウルトラワーク」「育自分休暇」「副業許可」などを次々と導入し、「個々人の希望」と「会社の都合」のより良いマッチングを図る仕組みをたくさん作っている。

●IT企業は“ナウい”のだ

 “ナウい”働き方導入企業にはIT企業が多いが、なぜだろうか。

 IT業界はPCを駆使するワークスタイルが一般的だ。プログラマーなど、勤務時間の大半をPCと向き合っているという職種もある。仕事によっては、PCと通信環境さえあれば、会社のデスクに縛られる必要もないのだ。

 こうした動きは大手企業に限らず中小企業やスタートアップ企業にも広がりを見せている。「IT業界は、感覚的にも規模的にも新しいワークスタイルの導入に抵抗感がない若い企業が多い(Webコンテンツ制作会社社長談)」との声もある。

 この辺りも、IT業界が新卒者に人気の理由だろう

 IT業界の“ナウい”働き方は、「ワーク・ライフ・バランス」の成果を生む場合も多く、多方面から注目を集めている。ワークスタイルで就職先を選ぶというのも、IT業界らしくてよいかもしれない。

●中村昭典(なかむらあきのり) 人材採用情報誌の元編集長など採用支援を手掛け、その後大学でキャリア支援系の教員に。著書に「親子就活」(アスキー新書・単著)、「雇用崩壊」(アスキー新書・共著)など。もともと人間好きなはずだが、最近は海辺とか田んぼとかにいることが多い。

最終更新:7月25日(月)6時10分

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